【総決算】2024年のエンタメ業界5大ニュース【エンタメ横断ニュース】
こんにちは!マンガIPのライツを担当している村田です。
2024年8月から始めたエンタメ横断ニュースですが、21週分更新してきました。22週目、2024年最後の更新となる今回は総決算として2024年の振り返りをします。
エンタメ業界のニュースを日次・週次で収集、発信してきた中で感じた、2024年のエンタメの大きなニュースを5つを紹介します。
①ショートドラマ、戦国時代に突入
スタートアップ、大企業問わずショートドラマ領域への参入が多かった1年でした。
ショートドラマ業界は、ショートドラマプラットフォーム「BUMP」を運営するemole(2018年設立)、ショートドラマクリエイター集団「ごっこ倶楽部」を擁するGOKKO(2022年設立)の2社が業界を牽引してきたと言えるでしょう。
2024年5月23日、24日に札幌市内で開催されたスタートアップ業界のカンファレンス「B Dash Camp」に上記の2社が決勝プレゼンに進出。これまでSaaSビジネスが隆盛していたスタートアップシーンに、C向けビジネスの盛り上がりを示しました。
2社がプレゼンした5月以降、ショートドラマ業界に様々なプレイヤーが参入、業界は盛り上がりっていったのが今年でした。スタートアップ、大手企業という区分で、時系列ごとに紹介していきます。
【スタートアップの参入】
自社IPをショートドラマでメディアミクス化する形で参入したのが、Webtoonスタートアップの雄・ソラジマ。
B Dash Campよりも前ですが、ソラジマ制作のWebtoon「シンデレラ・コンプレックス」原作のショートドラマを配信先の漫画アプリ「comico」を運営するNHN comico、株式会社GOKKOと共同制作で5月に配信。
7月にはBUMPに特設ページを開設。配信中および配信予定パートナーとなり、IPホルダーとして、ショートドラマ業界のトップランナー達と連携しています。
Webtoonは異世界ジャンルはアニメ化、恋愛・不倫ジャンルは(ショート)ドラマ化でのメディアミクス化が増えていくことが予想されます。
プラットフォームとしての参入もあり、株式会社ハイボールは「SWIPEDRAMA」を8月にリリース。クリエイター集団のこねこフィルム制作、マンガ・ノベルアプリ「peep」運営のtaskey株式会社原作の「ぬらりひょんの棲む家」をショートドラマ化。
広告と芸能のハイブリッドエージェンシーFOR YOUは、グローバルショートドラマプラットフォーム「Vigloo」にてオリジナルドラマを複数制作したことを9月にリリース。
FOR YOUは2023年9月に縦型ショートムービーの制作に特化した専門組織・FYSS(FOR YOU SHORTMOVIE STUDIO)を発足させています。
エンタメビジネスをアップデートするスタートアップ・株式会社Mintoは、吉本興業グループの株式会社FANY、株式会社NTTドコモ・スタジオ&ライブと共同で12月に縦型ショートドラマプラットフォーム「FANY :D」をリリース。
吉本、NTTドコモという大企業とタッグを組んでのプラットフォーム参入となります。
【大手企業の参入】
テレビ局はショートドラマへと続々と参入しています。
まず、日本テレビは、7月に株式会社GOKKOにジャフコ等と一緒に出資。GOKKOは総額約11億円の資金調達を実施しました。日本テレビは2023年にGOKKOと一緒に縦型ショートドラマアカウント「毎日はにかむ僕たちは。」を開始しています。
テレビ東京は、BUMPでショートドラマを3作品配信予定であることを8月に発表。ショートドラマに本格参入と銘打ってリリースを出しています。
さらに、10月にはこねこフィルムとタッグを組み縦型ショートドラマアカウント「aimaiMe(アイマイミー)」を開設。
フジテレビはBUMPと共同でオリジナルドラマ制作を開始することを7月に発表。BUMPではオリジナルショートドラマを配信、FODは長尺版となる1話30分のオリジナルドラマを配信する珍しい座組でした。
しかし、FODは専用アプリ「FOD SHORT」をリリースすることを11月に発表。BUMPと競合のポジションになったのです。
このようにプラットフォームはスタートアップ、テレビ局の参入もあったのですが、黒船も来航します。
中国ショートドラマのトップランナーであり、北米でヒットしたアプリ「ReelShort」の日本版「UniReel」が11月にアプリリリース。そこにも日本の大企業がガッツリ絡んでおり、LINEヤフー、博報堂、HUUM(博報堂とUUUMの合弁会社)の共同制作です。
そんなUniReelの第1弾のショートドラマは日本テレビとして初のショートドラマ『最期の授業-生き残った者だけが卒業-』。
テレビ局の動きを振り返ると、ショートドラマのスタートアップに投資、共同制作をしながらも、自分たちでも制作、プラットフォームを作るという競合する動きもしているのです。
ミクチャやジョブカンなどで知られる株式会社DONUTSは、縦型ショートドラマアプリ「タテドラ」を2024年1月リリース予定。
サイバーエージェントは、ショートドラマのタイアップ広告プロデュースに特化した専門組織 「縦ドラ」新設したことを12月に発表しました。
同じく12月にはDMMが縦型ショートドラマ参入を発表。DMM TVとして、年間20億円規模の投資を行なうと明らかにしました。
以上、スタートアップ、大手企業のショートドラマの参入を見てきました。5月のB Dash Campを皮切りに、様々なニュースが1年以内にショートドラマ業界であったことがお分かりいただけるのではないでしょうか。スタートアップ、大手企業、そして黒船来航とショートドラマ業界は戦国時代に本格突入したのです。
②五大商社、エンタメ業界で存在感を放つ
1年前、五大商社のかつてのアニメビジネスについて個人的に調べていました。2023年は五大商社をエンタメ業界で見聞きすることが余りなく、だからこそ取り上げたのです。
しかし、2024年に商社はエンタメ業界に続々と参入してくるのです。
【三井物産】
三井物産は、Animoca Brands株式会とでLucky Fesとweb3分野において協業しています。「LuckyFes 2024」は超ときめき♡宣伝部をはじめとする63組のアーティストが参加したフェスですが、ファンの推し活の行動データを可視化し、NFT「SBT」でファン度を証明する実験を行いました。
【三菱商事】
三菱商事は、吉本と業務提携を結びました。具体的には「笑い」による生活者の健康課題解決、「お笑いコンテンツ」の海外展開、DXを活用したコンテンツ制作等を含む、事業共創の検討について合意しました。
【伊藤忠商事】
5大商社の中で、最もエンタメ業界を賑わせたのが伊藤忠商事でしょう。
まず、「おぱんちゅうさぎ」の日本と韓国を除くアジア地域における独占的な商品化に関する権利を取得。2021年からアジア市場のキャラクターライセンス事業に力を入れており、香港の現地会社と「ムーミン」の会社と合弁会社を作って中国や東南アジアでグッズ販売しています。それが持分法適用会社の「Rights & Brands Asia Ltd.(RBA社)」です。
スカパーがアニメの製作幹事を務めるスカパー・ピクチャーズを設立しており、アニメ「チ。-地球の運動について-」の幹事をやっていますが、パートナーに伊藤忠商事がいます。海外商品化のアジアの権利を持つのが先ほどのRBA社で、窓口なのかライセンシーの立場かは分かりませんが、国内商品も伊藤忠商事が絡んでいます。
11月にはeスポーツチームを運営する株式会社REJECTと資本・業務提携を結んでいます。
【丸紅】
丸紅は、グループ企業の丸紅フォレストリンクス、小学館の3社で日本のマンガ・アニメコンテンツを世界展開するための合弁会社「株式会社MAG.NET(マグネット)」を設立しました。
マンガ・アニメコンテンツを用いたグッズの開発・小売店舗での販売や海外での販売流通網の構築がメイン事業です。
【住友商事】
住友商事は、先ほども紹介したMintoと協業、『Roblox』上でのコンテンツの企画、開発を開始することを10月に発表しています。実は、住友商事は『Roblox』上で「Omochi Studio」という制作名を用いて複数の人気コンテンツを公開してるのです。
三井物産は推し活×web3、三菱商事はお笑い、伊藤忠商事はキャラクターグッズ・アニメ・eスポーツ、丸紅はマンガ、住友商事はメタバース・・・と五大商社はエンタメ業界にその巨大な存在の一端を見せ始めたのです。
③日本のアイドル、TikTok、配信番組でも大バズ
2023年のNHK紅白歌合戦のYOASOBIの「アイドル」のコラボステージは、本当に夢のような光景でした。
SEVENTEEN、MISAMO、Stray Kids、LE SSERAFIM、NewJeans、乃木坂46、NiziU、BE:FIRST、JO1、 櫻坂46等K-POP、J-POPのアイドルが続々と登場し、元アイドルの橋本環奈、あのちゃんも参加した最高のコラボ企画でした。
そんなアイドルの盛り上がりは、2024年にもそのまま反映され、日本のアイドルがSNS上で話題を席巻した年でした。
【超ときめき♡宣伝部とFRUITS ZIPPER】
両グループとも惜しくも紅白出場にはなりませんでしたが、スターダストの「超ときめき♡宣伝部」、アソビシステムの「FRUITS ZIPPER」の楽曲はTikTok上で大バズりしました。
「超ときめき♡宣伝部」の「最上級にかわいいの!」はTikTok総再生回数10億回突破。
「FRUITS ZIPPER」の「わたしの一番かわいいところ」はTikTok総再生回数が15億回、ストリーミング総再生回数が1億回を突破しています。
どちらのグループもTHE FIRST TAKEにも出演、音楽番組も多数出演しており、間違いなく2024年のアイドルの中で話題だった2グループです。
パッと見てこの2グループは似ているので、競合していそうな気もするのですが、一緒に音楽番組に出たりと関係は良好な様子。
【timelesz project -AUDITION-】
通称、菊池風磨構文として話題になったのが、Netflix配信のオーディション番組「timelesz project -AUDITION-」で菊池風磨が歌詞を忘れた候補生に放った言葉。
菊池風磨構文がSNSで話題、テレビ番組でも菊池風磨を目の前に出演者がイジリ、ミーム化、話題になりました。この菊池風磨構文をきっかけに視聴を始めた人も多いと思うのですが、「タイプロ」という略称で親しまれ、毎回の配信の感想戦もSNS上で行われています。
Netflixでは、このような「番組を離れてコンテンツが一人歩きし、バズを生み出す状況」を「Netflixエフェクト」と呼んでいるそうです。実際、「地面師たち」の「もうええでしょ」やハリソン山中のセリフSNS上でミーム化、こちらも芸人がイジる等フォーマット化しました。
2023年はジャニーズの性加害が問題化しましたが、ジャニーズ解体後に新設されたSTARTO ENTERTAINMENT所属のtimeleszが、2024年に同事務所の良い話題・注目の浴び方をされているように思います。
このように、2024年は日本のアイドルがXやTikTokを中心に、その盛り上がりが地上波の番組にも広がり、話題になった1年だったと思います。
④大躍進!東宝から世界のTOHOへ。
2024年に大躍進を見せたのが映画会社の東宝。時価総額も1兆円を超えました。
「企画&IP」「アニメーション」「デジタル」「海外」を成長戦略のキーワードとして掲げている東宝の躍進の1年を振り返りましょう。
創業以来初の年間興収900億円超え
12月、2025年ラインナップ発表会の場で東宝は1932年の創業以来、初めて900億円を超える見込みであることを発表しました。それまでの年間最高興収は「君の名は。」「シン・ゴジラ」を公開した2016年の854億円。
映画業界全体の年間興収が2000億円程度とのことで、半分に近い金額を東宝が稼いだことになります。
ちなみに東宝の興収TOP5は以下の通りで、アニメも実写映画もヒットした年でした。
『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞で邦画初の視覚効果賞を受賞
「海外」の文脈では、2024年3月10日に開かれた第96回アカデミー賞で『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞。北米配給をグループ会社のToho Internationalによって、自社で手がけたことが海外でもヒットする要因の1つになりました。
アジアも強化。シンガポールに現地法人を立ち上げ
引き続き「海外」の文脈では、Toho Entertainment Asiaをシンガポールに立ち上げました。アジアでのライセンス事業、グッズ展開、マーケティングを直接手掛けることになります。
サイエンスSARU、コミックス・ウェーブ・フィルム、オレンジなどアニメスタジオと関係性強化
「アニメーション」の文脈では、アニメスタジオの子会社化や一部の株を取得などを実施。
5月に『四畳半神話大系』などで知られる湯浅政明監督が共同創業したサイエンスSARUを完全子会社化。
10月は「君の名は。」「すずめの戸締まり」を制作したコミックス・ウェーブ・フィルムの株の一部を取得。取得株式数は45株で、取得比率は6.09%です。
12月には「BEASTARS」などのアニメで知られるスタジオの有限会社オレンジの普通株式の取得並びに第三者割当増資の引受けを通じ、19.70%の出資を行いました。
これは2024年の大きな流れの1つですが、アニメスタジオの子会社化、資本業務提携が目立つ1年でした。
ジブリの作品など日本アニメを配給する米企業GKIDSを買収
「アニメーション」と「海外」の掛け合わせもあります。10月にはスタジオジブリ、「天気の子」や「犬王」などを北米で配給した実績のあるGKIDSを買収しました。
バンダイナムコと資本業務提携、共同でIP開発
「企画&IP」の文脈ではエンタメ業界の雄であるバンダイナムコとの資本業務提携と共同でのIP開発を8月に発表。どちらも巨大エンタメコングロマリット企業なので、この2社が資本業務提携をすることは驚きでした。
両社が互いに株式を25億円分ずつ持ち合い、東宝がバンダイナムコHDの発行済み株式総数の0.13%、バンダイナムコHDが東宝の同0.25%を取得することになりました。
「アニメーション」と「海外」において、特に目立つ動きの多かった東宝でした。
⑤エンタメ業界の話題の中心だったソニー
先ほど紹介した東宝は2024年のエンタメ業界の話題になった企業ですが、最も中心にいたのはソニーでしょう。
ソニーは買収に関する話が多く、ニュースが出る度に業界を震撼させました。大きな変革を起こせる圧倒的な力を示した1年でした。その他にも大小様々なニュースがあり、可能な限りここで振り返ります。
3年間で1.8兆円予算をIP買収に投じる
5月の2027年3月期までの3カ年の中期経営計画で、予算1.8兆円で優良なIPの買収に興味があり、積極的に検討していく考えを示します。
「めちゃコミ」運営のインフォコムの買収を検討
結局、ソニーは買収しなかったのですが、一時業界では「買収していたらどうなっていたんだ・・・」となったのが、こちらも5月に出た「めちゃコミック」を運営するインフォコムの買収を検討していたニュース。
結果、米投資会社ブラックストーンが手に入れることになりました。
パラマウントの買収も検討
こちらも買収ならずでしたが、アメリカのメディア大手「パラマウント・グローバル」の買収もソニー・ピクチャーズ エンタテインメントを通して検討していました。8月に交渉撤退が明らかに。
パラマウント自体はスカイダンスと合併することになります。
クランチロール、会員数1500万人突破
ソニーが買収した会社の中でも最も良い買い物と言えるだろう、クランチロールの有料会員数が1,500万人を突破。
ソニーが買収した21年は会員数が500万人、23年3月末時点で1,070万人、そこから1年で約500万人増やして有料会員数が1,500万人と急激に会員数を伸ばしています。
Zeppを完全子会社化
9月のニュースは、ソニー・ミュージックエンタテインメントが、グループ会社であるライブ会場を運営するZeppホールネットワークを完全子会社化。
合弁を一緒に作ったパルワールド運営が任天堂に訴えられる
パルワールド運営のポケットペアとソニーミュージック、アニプレックスの3社でジョイントベンチャーを7月に設立。
そのパルワールドが9月に任天堂とポケモンに訴訟され、当時ソニーと任天堂の関係性を心配する声もありました。
ソニー・ホンダの新型EVにクランチロール配信決定
意外と見落としされがちなソニー・ホンダモビリティが開発中の電気自動車「アフィーラ」ですが、着実にエンタメ空間と化しています。
「アフィーラ」の車内サービス向けにクランチロールが導入されることが9月に明らかになり、北米車両では利用可能なサービスになる予定です。
ソニーミュージック、インフルエンサーマーケのブランド立ち上げ
10月は、ソニーミュージックがインフルエンサーマーケティングで知られる株式会社BitStarとインフルエンサーマーケティングの新ブランド「Viralot(読み:バイラロット)」を設立。
エンタメ特化型のインフルエンサーマーケティングに力を入れることが明らかになりました。
KADOKAWAの筆頭株主になる
エンタメ業界で2024年最もホットだったニュースなのではないでしょうか?
11月にロイターによるソニーがKADOKAWA買収協議のニュースを発表した日、業界は騒然としました。ビジネス系メディア、エンタメ関係者も速報として取り上げました。
意外と年内には話が落ち着き、ソニーはKADOKAWAの筆頭株主になる形で資本業務提携契約を締結することになりました。
このように買収関係のニュースで世間を騒がせたソニー。2024年は買収した会社は結果1社もなかったわけですが、3年間で1.8兆円の予算があります。2025年以降もソニーが世間をあっと言わせるニュースが出てきそうです。
最後に
2024年のエンタメ業界の5大ニュースいかがでしょうか。
個人的には、エンタメ業界のジャンルとしてはショートドラマの1年だったと思います。スタートアップから大手企業、そして黒船来航もあった激動の1年でした。
押さえたいトレンドとしては五大商社のエンタメ関連のニュースがあったこと。巨大なプレイヤーの登場、今後地殻変動を起こしうる存在として注目です。
日本のアイドルがとにかく話題になった1年だったとも思います。K-POP人気も勿論すごいのですが、日本のアイドルの良さ・らしさを教えてくれた超ときめき♡宣伝部とFRUITS ZIPPERの2グループ。2023年の暗いニュースとは異なる話題をもたらしたtimelesz。
最後に、個別のエンタメ企業としては、東宝とソニーのエンタメコングロマリットが活発に動き、業界の話題によくなっていました。そんな2社の2024年のニュースを可能な限り紹介してきました。
今回、5大ニュースには取り上げませんでしたが、次の時代のうねりになりえるニュースも沢山ありました。そちらは2025年のエンタメ業界の予想として残しておきたいと思います。
エンタメ横断ニュースを読んで頂いた皆さま、ありがとうございました。2025年も引き続き更新していきますので、何卒宜しくお願いします。
それでは、2025年にお会いしましょう!