【超要約】みずほ産業調査「コンテンツ産業の展望2022~日本企業の勝ち筋~」【世界への勝ち筋を紹介】
先日、あるツイートが、RT6000回、いいね2万超えとバズりました。
みずほ産業調査の「コンテンツ産業の展望2022~日本企業の勝ち筋~」を紹介したツイートです。
「他者様が頑張って作って資料でバズってもうた・・・」という負い目と「これだけバズったのなら一番に読み込む!」という決意のもとGWを利用して読みこみました。
読後、「こんな神資料が本当に無料でいいの???」という結論。本来ならば数千万円くらいの価値があるレポートではないでしょうか。
出版産業、映画産業、アニメーション産業、音楽産業、ゲーム産業の全5つのエンタメ産業の市場調査と業界構造が把握でき、海外企業の動き、そして主題の日本企業が何をすべきかを分かりやすくまとめたレポートです。
しかし、皆さんお忙しいでしょう。「いいね👍」したものの、じっくり読めてない方も多いでしょう!
しかし、ご安心ください。各産業の世界への「勝ち筋」に絞ってまとめた記事が、今読んでいる記事になります。
本記事では「コンテンツ産業の展望2022~日本企業の勝ち筋~」の勝ち筋に絞って紹介していきます。
もし、お時間がない方は、「日本エンタメ企業の世界への勝ち筋とは」の項目をお読みください。本レポートの結論をギュッとまとめました。
コンテンツ企業の強みの源泉とは
出版社、映画製作会社、アニメ制作会社、ゲーム会社、音楽レコード会社・・・。いずれもコンテンツを様々な媒体に適合する形で作り替えて展開する「コンテンツ企業」です。
下図が各産業カテゴリの媒体する場所をまとめたものです。
「これらのコンテンツ企業の勝ち筋はどこにあるのか?」「どのレバー・要素を動かせばいいのか?」ということで資料では強みの源泉の定義づけを紹介しています。
それが下図です。
コンテンツ企業の強みの源泉は「ヒットコンテンツの数」×継続年数と考えられ、さらに分解すると「ヒットコンテンツの数」は「①作品のヒット率」×「②作品の展開数」となります。
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①作品のヒット率
「作品のヒット=制作コストが売上で回収できたか」です。つまり、大ヒットとは制作コストを大きく上回って売上に結びついたことを指します。
このヒット率を高めるには3つの要素が大切です。
それぞれ事例を紹介します。
・高いクオリティでコンテンツを制作すること
Disneyはアメリカで最大規模のアメコミ出版会社Marvelを買収することで、原作の確保と内製化で高いクオリティを実現しています。ゲーム会社もM&Aで有力なスタジオを買収しているのもこれです。M&Aでクオリティの高い作品を確保し、内製化することが重要です。
・人気が出る原作をどれだけ確保するか
原作確保を上手くやっている日本の出版会社があります。集英社は「ジャンプルーキー!」という誰でもマンガ投稿可能なサイトを作り、優秀な作品は自社アプリ「ジャンプ+」で掲載という仕組みを作っています。そうやって生まれたのが『SPY×FAMILY』 『タコピーの原罪』等の人気作品です。原作を確保する仕組み作りが重要です。
・スタジオ・作品のブランド力
Disneyは世界有数のブランド力を持っています。例えば「眠れる美女」は1954年に公開された約70年前の古い作品ですが「マレフィセント」として2014年にリメイク。2019年には続編の「マレフィセント2」も公開されています。既に認知度が高い作品=ブランドを駆使して、ヒット率を高めることが重要です。
②作品の展開数
作品の展開数とは、世に生み出されたコンテンツ作品の数です。
作品の展開数を拡大する取り組みは主に2つです。
・マルチスタジオ化
マルチスタジオ化とは、効率的な制作体制を実現すべくスタジオを複数保有することです。例えば「攻殻機動隊」の代表作を持つアニメ制作会社のIGポートは、出版機能としてマッグガーデンという子会社を保有しています。
他にも「王様ランキング」を手掛けたWIT STUDIOもあります。
・制作費調達手段の多様化
多くのコンテンツを生み出すには制作費の確保が大前提であり、調達する為のシステム作りが重要です。
例えばソニーは「PlayStation Plus」というサブスク型サービスを展開し、その収入をゲームや映画の制作費用に充てています。
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上記の方程式に照らし合わせると日本企業の厳選整理は下図となります。Disneyはエンタメのコングロマリット企業であり、勝利の方程式に必要なピースを揃えています。
Disneyの強みの源泉とは
Disneyはミッキー、Marvel、Pixar、STAR WARSなど強力なコンテンツを持つエンタメ企業の覇者です。
下図を見るとDisneyは勝利の方程式をより強固にするため、下記の打ち手を徹底しています。
①Disneyのヒット率の高め方
Disneyは先ほど紹介したように原作確保と内製化する為に買収を続けています。アニメ、ゲーム、マンガ、映画、YouTubeと多岐に渡って買収しています。
また、特筆すべきはテーマパーク事業でしょう。市場の大きい先進国にディズニーランドを作り、リアル店舗のディズニーショップを展開。Disneyというブランドを海外に強く根付かせるブランド戦略です。
②Disneyの作品の展開数の増やし方
繰り返しにはなりますが、Disneyは買収を通じてMarvel、Pixar、STAR WARS(ルーカスフィルム)という有力スタジオを手に入れました。これこそマルチスタジオ化のお手本です。
このマルチスタジオ方式により、Disneyは毎年並行して高クオリティの作品を制作しています。1年間を通してみるとDisneyブランドの作品がずっと映画館で上映されているのではないでしょうか。
また、Disneyは配信サービス「Disney+」によって、制作費調達を図っています。過去の有力コンテンツの積み上げ、いわば豪華な在庫セールで新たに資金を稼いでいます。
日本エンタメ企業の世界への勝ち筋とは
①出版産業
出版産業はアニメ、映画と親和性が高いです。ヒット作をもとに、アニメ・映画のスタジオを駆使して様々な媒体で収益を上げるモデルを作り上げるのが重要です。
集英社は「集英社ゲームズ」というゲーム制作の子会社を立ち上げました。ここでも「集英社ゲームクリエイターズCAMP」という新人クリエイターを発掘するサイトを作成し、中でも素晴らしい作品は集英社ゲームズで本格的に売っていくのです。
BLEACHかるたなど自社マンガ作品が、今度はゲームとして楽しまれるように挑戦しています。
「この作品は売れるかも!」というクリエイターと共創型、テストマーケもできるプラットフォーム作りが勝ち筋の第一歩かもしれません。
②映画産業
映画業界はNetflixという新興企業の勢いが止まりません。しかし、全ての人が動画配信サービスに移っていき完全にディスラプトされることはありません。
映画館への設備投資を行い、IMAX・4Dなど映画館でしか味わえない体験価値にお金を払ってもらうのです。また、映画館で映画しか流してはいけないというルールはありません。ライブビューイング・スポーツ観戦など映画以外のコンテンツも流し、映画館に映画以外を観に来る人を増やすべきです。
また、日本の映画会社は自社製作部門を縮小し、配給と興行に力を入れた歴史があります。動画配信サービスへの対応も必要となると、自社で制作部隊をもう一度作るのも勝ち筋の1つです。
東宝は自分たちで企画を作り、作れるプロデューサーを募集し始めました。東宝の今後の動きは注目です。
③アニメ産業
アニメ産業は「制作委員会方式」により、複数の出資者で権利を分割するのでアニメ制作会社に大きな旨味はありませんでした。
しかし、NetflixやAmazon Primeなど配信プラットフォーマーの登場で供給先の選択肢が増えたのです。これにより制作委員会に対する交渉力が増えました。
ただし、配信プラットフォーマーが権利保有したいと方向転換すると、アニメ制作会社は制作委員会方式と同じ形式になってしまいます。
自ら企画・プロデュースからコンテンツの権利保有をトータルで手がける強い立場になることが勝ち筋です。
ちなみに、この辺りを理解して主導権を取ろうしてそうなのが「君の名は。」「天気の子」のプロデューサー・川村元気さん率いるSTORY inc.です。
映画「バブル」はNetflixで配信、2022年11月公開の「すずめの戸締り」は映画館で公開。上手い具合に公開先を分けつつ、偏ることもしないとはっきりインタビューに答えています。
④ゲーム産業
ゲーム産業は任天堂、SONYなど世界トップ企業が日本にはあります。SONYは既にM&Aを駆使していくつかのゲームスタジオを買収、マルチスタジオ化しています。
マルチスタジオ化で海外のゲーム会社を買収し、日系企業では作れなかったゲームジャンルを取り入れることは勝ち筋の1つです。並行して複数のゲームを作ることができ、経営の安定化にも繋がります。
また、ゲームは出版・映画・アニメいずれの産業とも高いシナジーが期待されます。事実、任天堂はアニメ映画「ミニオン」を手掛けたイルミネーションと組んでマリオのアニメ映画を制作中です。
(⑤音楽産業)
記事を最初から読んでた方は「あれ?音楽産業の話は?」と疑問に感じた方もいるでしょう。
実は、音楽レコード会社は日本語の楽曲を活用した展開が戦略の主軸なので、世界への勝ち筋は論じないとレポートではバッサリ切られているのです。
ただ、レポートは細かく市場の分析、Spotifyなどサブスクサービスについて詳しくまとめられています。
まとめ
コンテンツ企業の強みの源泉、その源泉を上手く駆使しているDisney、日本エンタメ企業の世界への勝ち筋を紹介してきました。
日本はコンテンツの創出力は強いですが、プラットフォームビジネスや権利ビジネスは得意ではないようです。
危惧すべきは日本のコンテンツが安く買い叩かれてしまうことではないでしょうか。「Content is King」の発想のもと、エンタメの上流に行くように打ち手が今必要なのです。