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初めてのタイ① ~入国、そして街へ~
2016年9月15日
ついに迎えた出国の日。
どうやって空港まで行ったかは覚えていない。
数年前に演劇の稽古用に買ったリュックサックがやたら重かったことだけ覚えている。
カウンターでチェックインを済ませ手荷物の検査も無事に通過。
初めての出国エリアに少しテンションが上がっていた。
そこでタバコを1カートン購入しリュックに詰めこむ。
これでリュック内の余裕は完全になくなった。
このタバコがのちに自分の身を助けてくれるとはこの時1ミリも思っていなかった。
搭乗を済ませ飛行機は無事に離陸。
しばらくすると第一の試練がやってきた。
そう、機内食の選択である。
前から迫ってくるタイ人CAさんの「Pork or chicken?」になんと答えればいいのか。
そもそも英語が話せない自分は正しく発音出来るのか。
そうこうしている内に「ポークプリーズ」という華麗なる中学英語を口にしていた。
この日機内で発した言葉は「ポークプリーズ」「サンキュー」「コークプリーズ」の3つだけであった。
6時間後、飛行機はバンコクのスワンナプーム空港に到着。
少し前まで下を見下ろすと緑が生い茂る街並みが見えていたのに、滑走路に着陸し窓から見えた空港の建物はとにかく大きくセントレアと全然違うではないかと驚きを隠せなかった。
ここからの出来事は鮮明に覚えている。
飛行機から降りた乗客はゾロゾロと空港内を進んでいく。
自分もその人の流れに取り残されないようについていくが、ふと通路の脇に目をやると喫煙所があった。
機内の緊張から解放された僕はとにかくタバコが吸いたかったのだ。
吸い込まれるように喫煙所に入り安堵の一服を済ます。
頭の中ではこれからのことなどこれっぽっちも考えていなかった。
喫煙所から出た瞬間に自分の行動を悔やんだ。
通路に誰もいない…
さっきまで自分が流れに身をゆだねていた乗客たちは全員その場を通り過ぎて入国カウンターに行ってしまったのだ。
急に不安に襲われる。
どこに行けばいいのか、案内は出ていないのか?
だめだ、タイ語と英語でしか書いていない。
Arrivalって何だ、Transitって何だ。
今考えてみれば通路を進めばいいだけのことなのだが、不安に襲われた人間にそんな余裕はない。
なんとかカウンターに並ぶ人の列を見つけホッとした。
がそんなこともつかの間、自分はどこに並べばいいのか。
入国カウンターはタイ人用と外国人用に分かれている。
それすらも知らない自分はここでもオロオロするのであった。
とりあえず日本のパスポートを持っている人の列に並ぼう。
そうしてなんとか入国手続きも完了し、無事タイに入国したのであった。
ここにきて一つの問題にぶち当たった。
入国の列に並んでいる最中、携帯を開くと一通のショートメールが届いた。
内容は「あなたが今いるエリアは日本ではないためネットを使うと高額な請求が来ますよ」的なものであった。
そうか、海外は日本のスマホが使えないのか。
これは困った、Wi-Fiを借りなければ。
今考えれば到着ゲートを出てすぐのところにWi-FiやSIMカードのお店が何件も並んでいた。
が、当時そんなことは知る由もなくまたここでも空港内を彷徨うことになる。
しばらく彷徨うと空港とバンコク市内を繋ぐエアポート・レール・リンク(ARL)の駅にたどり着いた。
そうだ、そもそも今日の目的地はカオサンロードというところである。
そこに行くためには街中に出なければいけない。
だがしかしその行き方を調べるためにもWi-Fiが必要…
そう考えていると目の前にインフォメーションカウンターが現れた。
ここでWi-Fiの借り方を聞こう。
そう決心しタイ人のお姉さんに声をかける。
「エクスキューズミー、アイ ウォント トゥ レンタル ア ワイファイ」
カタコトすぎる英語であったがお姉さんはおそらく意味を理解してくれて、流暢な英語で僕にWi-Fiの借り方を教えてくれた。
そしてそれは僕の頭の中でこのように翻訳された。
「ここにはWi-Fiショップはありませんので、このARLで終点の駅まで行ってください。
そうすれば改札を出たところにWi-Fiショップがありますよ。」
なるほど、タイは市街地まで出ないとWi-Fiが借りれないのか。
仕方ない、ARLで終点のパヤータイという駅まで向かおう。
大丈夫、今の俺は英語でコミュニケーションが取れている。
今の俺なら何でも出来る。
そうして券売機に向かったときにもう一つの問題が発生した。
「俺、タイのお金持ってないじゃん」
幸いなことにARLのそばには両替所がいくつかある。
ひとまずここで両替を済ませる。
ちなみに当時のレートは10,000円で3,000バーツ(1バーツ=3.3円)くらいだった気がする。
券売機で切符の買い方すらわからずその場にいた案内スタッフに財布の中を見せて、小銭を選んでもらう。
出てきたトークンと呼ばれるコイン状の切符を持ち駅のホームに進んだ。
電車は地下から地上へと上がっていく。
この時初めて車窓からタイの街並みを目にした。
衝撃だった。
高層ビルが立ち並んでいるのである。
自分が思い描いていたタイのイメージはこの瞬間どこかに消え去った。
電車は30分ほど走ると終点のパヤータイに到着した。
ところが駅の構内にWi-Fiショップが見当たらない。
階段を降り初めてタイの地上に降り立った。
あらかた想像はしていたが暑い。
刺すような日差しと地面からせりあがってくる熱気が体にまとわりつく。
まずはWi-Fiショップを探さねば。
そう思い歩を進めた瞬間に小さな女の子が目に入った。
手に持ったカゴには花がたくさん並べられていた。
小さな女の子が花を売っている…
初めて目にしたその光景に驚きを隠せなかった。
しばらく大通り沿いを歩いたが案の定Wi-Fiショップは見つからなかった。
それどころか視界に入るにぎやかな街並みと線路沿いに立ち並ぶ昔ながら家屋の並びに戸惑うばかりで、一刻も早くこの場所を離れたいとさえ思ってしまっていた。
歩き疲れた僕は水分を摂っていないことに気が付く。
ふと視界にセブンイレブンが目に入る。
日本で見慣れた看板に少し安堵しお茶を買って外で一口飲んだその瞬間
甘い!
なんだこれは…
衝撃が口の中に走る。
たしかに店内で買ったのは日本でも売られているメーカーのお茶である。
が、しかしとにかく甘いのだ。
これはのちに知ったのだがタイでお茶を買う際はキャップの色で見分けることが出来る。
白いキャップは無糖だが、オレンジなどの色付きはシロップが入っているのである。
僕はついて早々にこの洗礼を受けたのであった。
ここで僕はもうWi-Fiを諦めることにした。
Wi-Fiがなくても何とかなるだろう、Wi-Fiがなくて死んだ人はいない。
そう自分に言い聞かせて、カオサンロードに向かうことにした。
だが行き方がわからないのでタクシーで行くしかない。
地球の歩き方で見た情報によるとタイのタクシーは日本と比べて圧倒的に安い(初乗り35バーツ=120円くらい)ということ。
しかし中にはメーターを使わず言い値で吹っかけてくるドライバーもいるのでそこは気をつけよ、と書いてあった。
また日本でタクシーに乗るときは車内に乗ってから行き先を告げるという形であるがタイはそうではない。
タイではタクシーを止めたら自分でドアを開けて行き先を告げるのである。
この際にきちんと「メーターを使ってくれるか」を確認しないといけない。
これらの情報を思い出しタクシーを止める。
開けてくれた窓からドライバーに
「アイ ウォント トゥ ゴー トゥ カオサンロード」と告げる。
帰ってきた答えは
「No」
そのままタクシーは行ってしまった。
日本ではあまり考えられないがバンコクでは乗車拒否は珍しいことではないのだ。
2台目を止める。
「アイ ウォント トゥ ゴー トゥ カオサンロード」
帰ってきた答えは
「200Bart」
「キャン ユー ユーズ ア メーター?」
「No」
またもやタクシーは走り去ってしまった。
3台目を止める。
「アイ ウォント トゥ ゴー トゥ カオサンロード」
「200Bart」
「ユーズ ア メーター?」
「No」
「…オーケー、プリーズ ゴー トゥ カオサンロード」
このままタクシーに乗れなかったら…
そんな不安がよぎり仕方なく言い値でタクシーに乗ってしまったのである。
だがその理由がのちに少しわかった気がした。
そのときの時刻は16時30分頃だった気がする。
タクシーが走り出してからものすごい渋滞にハマったのである。
道が全然進まない。
バンコクでは交通渋滞が深刻な問題となっている。
言い値で客を乗せるのは決していいことではないが、メーターを使っていたら時間に対しての売り上げが少ないのだろう。
そんなことを車内で考えたのを覚えている。
そうして僕はなんとかバックパッカーの聖地と呼ばれていたカオサンロードに到着したのであった。
②へ続く