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【観劇レポ】帝劇ありがとう 帝劇コンサート「THE BEST」

帝国劇場

通称・帝劇。数々の名作と名演を生み出してきた、日本が誇る劇場。その幕が一時的とはいえ、下りることになります。

厳密には「劇」ではありませんが、観劇レポということで、帝国劇場の建て替え前に開催された、現帝劇ラストを飾るコンサート「THE BEST」の感想です。

僕は配信1回、映画館でのライブビューイング1回の計2回観ました。配信はBプログラム、ライビュはGプログラム(大千穐楽)です。
全プログラムで配信も用意いただいていたのですが、アーカイブなしということもあって全てを観ることは叶わず。かつ、配信はおうちの電波の加減でところどころ見逃しています。普段は何ともないのに、この日に限って脆弱なWi-Fiめ…。

ということで、2回分まとめての感想ですし、そもそも豪華すぎてキャパオーバーですので、いつも以上に記憶と記録が混濁した乱文となる可能性もありますが、大目に見てやってください。


とにかく豪華

感想はもうこの一言じゃないでしょうか。

これまでに帝劇で上演された全53作品のミュージカルをすべて網羅。キャストは言わずもがな、名だたるメンバーが勢ぞろい。ミュージカル以外で上演された演目についても、映像でダイジェスト。
よくミュージシャンが「ベストアルバム」をリリースされますが、まさに帝劇の歴史そのものである「帝劇のベストアルバム」と言っても過言ではないです。

僕はミュージカル好きを自称しながら、言っても歴にして数年なので、知らない・観たことのない作品もたくさんあります。まさに帝劇の、ミュージカルの歴史を観ることができました。

セトリは後に記載の通りですが、こうしてバラバラの曲を、歌い手のバランスも考えつつひとつのセットリストとして完成させているのは、実はすごいと思う。
「民衆の歌」をラストにするのはわかるけど、シスアクで本編スタートとか、1幕締めの「フィナーレ(DoV)」とか、泣かせ曲と楽しい曲の配置とか、諸々絶妙だと思います。

ゲストコーナーを除くセットリストは、配信時の僕の手書きのメモ、そして頼りにならない記憶によるとこんな感じ。間違ってたらすみません。
*はタイトルあやふやです。一応、配信で見ていると画面端に表示はされていたのですが…。

<1幕>
「帝劇の歌(オリジナル曲)」*
「天国へ行かせて(シスアク)」
「サ・イラ・モナムール(1789)」
「ロクサーヌ(MR!)」
「世界が終わる夜のように(サイゴン)」
「初めて知る想い(G&D)」
「それ以上の(ルドルフ)」
「ラブリー(マイフェアレディ)」
「Shall We Dance?(王様と私)」
「ランベスの歌(ミー&マイガール)」*
メドレー1
「Magic to do(ピピン)」
「ジョアンナ(スウィニートッド)」
「パイレートクイーンの歌」*
「種を蒔こう(キャンディード)」
「この星空(二都物語)」
「ひとりは皆のために(三銃士)」
「イーストウィックの魔女たちの歌」*
「笑う男の歌」*
「私の好きなもの(SoM)」
「夢に見るマンダレイ(レベッカ)」

「地獄からのメッセージ(NYに行きたい)」
「君の友だち(ビューティフル)」
「君の瞳に恋してる(JB)」
「僕こそ音楽(M!)」
「オン・マイ・オウン(レミゼ)」
「フィナーレ(DoV)」

<2幕>
メドレー2
「心を繋ぐ6ペンス(同題)」
「シー・ラブズ・ミー(同題)」
「チャーリー・ガール(同題)」
「回転木馬の歌」*
「マスカラ(ラカージュ)」
「パナマの歌」
「気兼ねなくおいで(オリバー)」
「私が私のベストフレンド(CHICAGO)」
「ソウ・イン・ラブ(キスミーケイト)」
「エニシング・ゴーズ(同題)」

「陽は昇り又沈む(屋根の上のV弾き)」
「見果てぬ夢(ラマンチャ)」
メドレー3
「似た者同士(スカーレット)」
「ローマの休日(同題)」
「CONTINUE(SHOCK)」
「マグノリア(風と共に去りぬ)」
「ダンス!ダンス!ダンス!(十二夜)」
「両國(歌麿)」
「ふたりSHIROH」
「宿敵がまたとない友(ナイツテイル)」
「アーニャの歌(スパイファミリー)」*
「ルパンの歌(LUPIN)」*
「もう許さない(MA)」

「秘めた思い(レディ・べス)」
「DIOの世界(ジョジョ)」
「揺れる心(王家の紋章)」
「ピュア・イマジネーション(チャリチョコ)」
「闇が広がる(エリザ)」
「ブイ・ドイ(サイゴン)」
「ダンスはやめられない(M!)」
「※」
「私が躍る時(エリザ)」
「命をあげよう(サイゴン)」
「民衆の歌(レミゼ)」

2幕終盤の「※」は、Bプログラムは「星から降る金(M!)」だったのですが、Gプログラムは「夜のボート(エリザ)」でした。
前者はなんとモリクミさんの星金。なんてレアな…!後者はシュガーフランツと花シシィ。二度とみることは叶わない花シシィを再び観れて感無量です。

終盤の怒涛の名曲これでもか砲の威力があまりに強い。昔ながらのクラシックな作品も良さがありますが、やっぱり僕は「エリザベート」「モーツァルト!」「ミス・サイゴン」のような、いわゆるグランドミュージカルが好き。

欲を言えば、メドレーでなんとかした感もありますし、「あの曲をあの人で聴きたかった!」と思うこともありますが、59年間を凝縮したセトリとしては最高峰じゃないでしょうか。

ハイライト(レギュラー)

さすがに豪華すぎて記憶のキャパシティを超えているので、覚えている限りになりますが、個人的に良かった場面をピックアップ。まずはレギュラーメンバー&演目から。

コンサートホスト・我らが井上芳雄。軽快なトークと圧巻の歌。特に芳雄ヴォルフガング復活は痺れました。二都物語も楽しみ。闇広の表情管理も最高。そして大千穐楽での涙はずるい。そんなもんこっちも泣く。

浦井健治さん。まだ日本エンタメ界は隠し持っていたのか、こんなアイドルを。全体的に指先の動きとか足捌きがアイドルなんだな。「君の瞳に恋してる」をはじめ、ホンマにどこのアイドルかと思った。「ルパン」のマント捌きも様になる。

小野田龍之介さん。クリス(ミス・サイゴン)をはじめ、いつ聴いても爽やかで安定したテノール。意外とまだお若いのに、安定と安心と、それでいてちょっとしたアグレッシブさもある。2幕のお衣装の雰囲気が、どこかで油田でも持ってそうな佇まいに見えたのは僕だけ?

甲斐翔真くん。ホンマにあぶら乗ってると言いますか、逸材。「ロクサーヌ」や「闇が広がる」などの、演じてきた役はもちろん、全体を通してミュージカルになくてはならない存在になっているということを感じました。一体僕は誰目線で語っているのでしょうか。

シュガー(佐藤隆紀)さん。自称ミュージカル界のシュガーくん。「見果てぬ夢」「ブイ・ドイ」をはじめ、圧倒的な声量と声の伸びは唯一無二。エリザ初出演時のエピソードは、笑い話風ではあるけど心に刺さるものがありました。オチも完璧。

島田歌穂さん。歌穂さんのエポニーヌ!これは言うまでもなく伝説、まさに帝劇の歴史です。かと思えばまさかのアーニャ(スパイファミリー)も、メドレーの一瞬ながら完璧に演じられていました。なにこれイリュージョン?

三浦宏規さん。実は彼の舞台は観たことがないままなのですが、カイショーマと並ぶ次世代スター。いや、現にミュージカル界を牽引されているので、もはや次世代って失礼か。歌も良いですが、大ベテランの涼風さんや一路さんを相手にしなやかに、1789では力強く舞う、ダンスも魅力的な俳優さん。

宮野真守さん。どこのアイドルかと思った(2回目)。個人的にはミュージカルより、雅(みやび)のイメージが強いのでつい笑ってしまうんですが、コール&レスポンスでの盛り上げ方も完璧で、身体能力(体幹)もすごい。ジョジョは観ていないけど、「DIOの世界」はカッコよかった。

生田絵梨花さん。彼女の舞台も未観劇なんですが、透明感がすごいなと。数々のヒロインに抜擢される理由が分かります。どちらかというと現代・アメリカンな作品が似合うイメージがあります。「ダンスはやめられない」で、演じる人によってコンスから伝わる色がこんなに変わるのか!と思いました。

木下晴香ちゃん。んもうさすがっ!僕の中のコンスタンツェは晴香ちゃんなので、また観れてうれしい。メドレーでしたが、「ピピン」も魅力的でよかったし、「ダンス!ダンス!ダンス!」でのダンスは晴香ちゃんのルーツも感じられる気がする。「それ以上の」での芳雄さんとのデュエットもすばらしかった。

昆夏美さん。ちょっと普段よりテンション高め?一瞬だけでも、また昆ちゃんのマルグリットを観れたのはうれしい。本人はしんどいでしょうけど、重重の役を演じる昆ちゃんは何回観ても素晴らしい。「命をあげよう」はもはや昆ちゃんの持ち歌ですね。

かなめさん。涼風真世さん。かなめさんのシスアクなんて、そんな贅沢な…!今や皇太后のかなめシシィを観れたのも貴重。「王様と私」は若き三浦王子をやさしく見つめていらしてなんかキュン。「昔妖精、いま~?」「(客)ようかーい!」のコール&レスポンスさせるの笑いました。そんなんある?

平野綾さん。笹本玲奈ちゃんや昆ちゃんと同じく、鬼気迫る歌が似合うと思う俳優さん(演じている本人は本当にハードだと思いますが)。中々再演されない「レディ・ベス」がまた平野ベスで演るなら観たいな。

モリクミ(森公美子)さん。初っ端のシスアクは選曲自体が最高ですが、モリクミさんのを観ると観劇時の幸せを思い出せる。Bプログラムでの「星から降る金」「君は友だち」もパワフルながら別世界観もあってステキでした。

一路真輝さん。伝説のエリザベート、ここに。「私が踊る時」は表情に至るまで最高だった。強いシシィ。MCの「大学生の芳雄くんがこんな立派になって…!」は、似たような世代のマダムたちには共感の嵐だったでしょう。

瀬奈じゅんさん。出演されてきた作品は結構観ているのですが、実は初めましてでした。メドレーでは、「エニシング・ゴーズ」が軽やかかつ麗しくて印象的でした。ところで自己紹介で思ったのですが、瀬奈じゅんって「松潤」のイントネーションなんですね?

花總まりさん。お花様。数々のタイトルロールを演じられましたが、やっぱりエリザベートは特別。「夜のボート」を観れてよかった。ノリの良い曲もかわいくノッていらっしゃるの、あまりに高貴なお戯れですこと。大千穐楽はお花様の誕生日公演!…と「自分で言っちゃいますね」と照れながら話すお花様は永遠のプリンセスですわ。

屋比久知奈ちゃん。MCなどでは明るく溌剌としたイメージがあるのに、ミュージカルになると悲運な運命のヒロインのイメージになる。今回歌っていた「もう許さない」はメドレーでしたが、いつか屋比久ちゃんのマルグリットも観てみたいな。

シンガー&アンサンブルにスポットを当てた「地獄からのメッセージ」は、映画館でなぜか号泣してしまった演目。泣くような曲でなく、むしろパンチの効いたアグレッシブな曲ですが、アンサンブルとしてこの舞台に立たれている皆さんの想いが流れてきたのかな。

今回のシンガー&アンサンブル、様々な舞台でお馴染みの、歴戦の猛者たちですよ。どうしてもプリンシパルキャストの豪華さに注目されがちですが、このアンサンブル体制で観たい作品いくらでもあります、というくらいこちらも豪華です。

<シンガー>
家塚敦子・河合篤子・やまぐちあきこ・川口大地・中西勝之・中山昇
<アンサンブル>
彩花まり・岩﨑亜希子・大月さゆ・可知寛子・樺島麻美・神谷玲花・輝生かなで・豊田由佳乃・原広実・玲実くれあ・岡崎大樹・感音・後藤晋彦・佐々木崇・砂塚健斗・田中秀哉・福永悠二・堀江慎也・丸山泰右・横沢健司・渡辺崇人

敬称略・公式サイトより

ハイライト(ゲスト)

続いて各プログラムのゲスト編。ゲストは以下の通り(五十音順・敬称略)。

<Bプログラム>
石丸幹二・加藤和樹・平原綾香・吉原光夫

あーやの「Firework(ムーラン・ルージュ!)」。もはやあーやの持ち歌。あーやの少しハスキーな歌声と「紙切れみたい」という歌詞のマッチングが良いです。ムーラン・ルージュの思い出がよみがえります。MCでの芳雄さんへの信頼感も、なんか微笑ましい。いっぱい帝劇の空気を吸って帰ろうとするあーやかわいい。

石丸さんは「最後のダンス(エリザベート)」。伝説のトートですよ。ノリノリの幹二さん。ちょっとロックなテイストだったような気がする。過去の伝説キャストを垣間見れるのも、コンサートのいいところ。叶うならこの時代のエリザ観てみたいなあ。

光夫さんは「星よ(レ・ミゼラブル)」。光夫さん演じるバルジャンの宿敵であるジャベールの歌ですが、光夫ジャベは、マジでバルジャンを捕らえてものすごいことをしそうな感じでした。MCでお話しされていた、3.11の時の話も貴重だった。

和樹くんは「二度と消せない(1789)」。そういえば僕、1789未履修やなあ…と思いながら、和樹くんの甘いお声を聴いて優雅にお茶を飲んでおりました。MCでも仰っていたけど、元々ミュージカル畑ではない中で、帝劇の舞台に立つプレッシャーなどを感じていた頃の想いも、曲に乗っていたのかな。今でこそミュージカル俳優としても大活躍ですが、こうした人の歴史も、帝劇の板には乗っているんですね。

<Gプログラム>
市村正親・今井清隆・鳳蘭・笹本玲奈・田代万里生

まずこれは語らねばなりません。

マイフェアプリンスまりまりの猛烈強火芳雄担を映画館の大画面で観ることができて大変ごちそうさまでした(?)。

最後の帝劇での田代万里生の思い出が、「まりまりが食い気味に芳雄さんにあすなろ抱きよろしく接近して、至近距離の満面の笑みで芳雄さんを見つめた挙げ句、たぶん本来は袖に捌けるはずの芳雄さんを引き止めて女性役として踊らせて満足そうにしているまりまり」になろうとは。

相手役のはずの玲奈ちゃんを置いてけぼりにして、身の危険を感じている芳雄さんとニッコニコでデュエットするまりまり。普段は万里生くんが「井上組トップ娘役(永久欠番)」として女性パートを歌うことが多いですが、今回は芳雄さんがお相手役。
もちろん歌は素晴らしかったし、2番以降の玲奈ちゃんとのデュエットも良かったんですが、もう記憶が大画面で(一方的に)イチャイチャする二人に洗脳されています。最後の帝劇なのにこれでいいのか。僕らは一体何を見せられていたんだ?(満足です)

少し冷静に戻しますと、玲奈ちゃんは続けて「100万のキャンドル(マリー・アントワネット)」を披露。これ、旧演出版の歌詞なので、新版しか知らない僕にとっては超貴重でした。新旧でここまで演出が異なる作品も中々ない気がしますが、旧演出版も、もう別作品としてでいいので観たいです。MCでも仰っていましたが、現帝劇では「死ぬ役」ばかりだったらしいので、新帝劇では玲奈ちゃんにぜひ、幸せなお役をお願いします。

そしてレジェンドのお三方は、まさに今お稽古中の「屋根の上のバイオリン弾き」から「陽は昇りまた沈む」。Gプログラム以外では、アンサンブル&シンガーによる披露でした。
加えて今井さんは「見果てぬ夢(ラ・マンチャの男)」をなんと英詞バージョンで。市村さんは「アメリカン・ドリーム(ミス・サイゴン)」を、トレードマークの赤いコートとともに披露されました。
お三方とも、年齢を重ねてなお今も現役で舞台に立ち続ける方たち。そして59年間の帝劇の歴史の、そのものでもある方です。3代目帝劇でも、その舞台に立っていただきたい。

大千穐楽

大千穐楽はカーテンコール後、出演者以外の俳優さんたちもステージに呼んで、「民衆の歌」をアンコール合唱。

このお呼ばれされる俳優さんたちが、なんと豪華なこと。ミュージカル畑の方はもちろん、主にストプレで活躍されている方もたくさん。お名前が呼ばれる時に、客席からどよめきが聞こえるほどでした。ちなみに一番どよめいていたのは(たぶん)北大路欣也さん、一番黄色い歓声が上がっていたのは堂本さんとこの光一くんでした。

また映画館では、終演後スタッフロールと幕裏からの芳雄さんたちによるお手振り、幕間の休憩中に舞台転換の様子と演出家の裏話が放映されました。
現地の客席降り演出などは体感できませんが、ライビュならではのお楽しみも付けてくださって、すごく満足度が高いライビュでした。

帝劇への感謝を

いち観客、いちミュージカルファンとして、どの劇場にも思い出はありますが、やっぱり帝劇は特別感がありました。

僕が帝国劇場に初めて訪れたのは、2022年の「エリザベート」。ミュージカル好きとして、いつか必ず行きたい!と思っていた劇場に行くことができたのは、今でもいい思い出です。

エリザベートで2回、「ムーラン・ルージュ!」で2回、「レ・ミゼラブル」で1回と、3年間で計5回訪れました。2階席や1階後方ばかりでしたが、関西に住んでいて、遠征もそう何度もできるほどの裕福さもない僕にとっては、本当に貴重な5回です。

しばらく会えなくなるのは寂しいですし、現実問題として、これから5年間どこで公演するんや!という不安もありますが、また5年後、3代目帝国劇場がオープンされるときには、また必ず行きたいなと思います。

ありがとう、帝劇。またな、帝劇。

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