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【徒然】飾りじゃないのよメガネは
かれこれメガネとは小学校3年生以来の付き合いになります。いつもありがとう。もう何代目かな。常時つけていないと目が「3」になるくらい目が悪いので、最早メガネは顔の一部。
メガネをかけている人は、よく聞かれると思います。「コンタクトにしないの?」と。
うんうん、確かにコンタクトの方が色々便利でしょう。カップ麺を食べても視界は曇らないやろうし、体育の授業で上からボールが落ちてくる不慮の事故に見舞われることもない。今のご時世、マスクとメガネは宿敵関係でもある。何より顔、ひいては自分全体の印象も変えられるでしょう。
でもね、飾りじゃないのよメガネは。
遡ること1年半前。2020年秋。
マスクをつけることが常態化して、日々視界の曇りと戦っていた僕は、ついにコンタクトに挑むことにしました。
高校進学、大学進学、社会人と、各ステップでデビューしようと思えばできるタイミングはあったのに、頑としてwithメガネを貫いてきた僕が、たかがマスクのためにコンタクトに挑むなんて。
しかし、現在進行形でマスクと戦っているメガネの民には共感してもらえると思いますが、呼吸のたびに曇る視界が絶妙に地味にストレス。
まあ貧乏だった学生時代に比べて懐も温まってきたし、オトナの男として外見を磨くのもありやね☆と思い立った僕は、意を決して眼科へ行きました。目の健康状態は特に問題なしということで診察を終え、いざ実装。それが地獄の入り口とも知らずに。
看護師さんにつけ方を教えてもらい、鏡に向き合うこと10分。あれれ~?全く入る気配がしないよ~?
さらに10分。アドバイスをいただきながら何度もチャレンジするも、一向にこの小さなレンズは僕を拒み続ける。なおまだ片目である。
さらに10分。さすがに看護師さんも長旅フライトにお疲れのご様子、「もうとりあえず大きく目を開けてもらうしかないですね~」。
誰の目が小さくて細いねん!!!!!!
おっと失礼。こちとら20数年生きてきた中で最大限に目を開いているのですよ。
初めてポルノのライヴに行った日。なけなしのお小遣いを貯めてファンクラブへ入り、何とか手に入れた夢の景色を目に焼き付けようと、必死に1シーン1シーンを映したあの時よりも。
BLEACHが最終話を迎えると聞いてビックリしたあの時よりも、部活内で意外な二人が交際していると聞いた衝撃のあの時よりも。
言うこと聞いてくれないのはこの天邪鬼なレンズの方でしょうがあ!
と叫びたくなる気持ちを抑え更に20分(ここまでで約50分)。クーラーの利いた涼しい部屋なのに汗が止まらない。その時見た看護師さんの顔は鉄仮面。ごめんやん。まあ逆の立場でもさすがに無表情にもならあ。ゴミ箱へ行ったレンズはすでに2枚。安直にコンタクトデビューなんて考えなければよかった、帰ってアイス食べたいと思っていた時。急に視界がクリアに。
ようやく右目に入った。
喜び(というよりも安堵感)も束の間、看護師さんが一言。
「あ、入りましたね。じゃあ左目も同じようにいれてみましょう」。
それはコンビニでの「いらっしゃいませ」と同じくらいに淡々と。女子高生の会話の「今日天気悪いらしいで」「へえ…まじで。うざっ」くらいのトーンで。そこに感情はなく、言っただけ。もはやBOT。
ドライな対応はさておき、そう、これで終わりじゃない。まだ左目が残っている。両目揃って初めて真価を発揮するのがコンタクトレンズ。万華鏡写輪眼と同じである。
時は経ち15分。うん、わかってた。入らない。
右目でコツをつかんだとか思うやん。ところがどっこい、コツなんて掴んでもなければ、むしろ最初からやり直し。リセットされた気分。
しかも利き手(右)で右目はまだやりやすいが、右手で左目へ入れるのは自分の腕が視界を遮って、やりにくいったらありゃしない。
更に15分。入った!と思ったら指に張り付いていたコンタクトレンズ。まあ、おたくのおうちはここどすかあ…えらいくつろいではってぇ…(お前なんでここにおんねん。さっさと入れ)。
鏡を見れば、悲壮感と疲労感に満ちた顔。僕はこんな顔だっただろうか。そりゃあ25歳時点で35歳に間違われるだけはある(実話)。
横を見れば、もう看護師さんはただ一点を見つめている。時にヒマというのは人間らしさを失わせてしまうらしい。ただ時給が増えていくその時間を秒針と共に刻んでいる。
もう帰りたい。お布団ダイブしたい。頭の中は逃亡本能で満ち満ちた、その時。
入った。実に両目併せて1時間20分。ショートムービーくらいの長さ(無論、非常に退屈な中身)。こうして僕は無事、コンタクトデビューを果たしたのであります。
ほほう、メガネがなくてもぼやけない世界とは、中々に美しいではありませんか。ちょっとゴロゴロする感覚はあるけど、気持ち、顔が軽い。まあいずれにせよ、水泳するときは外さないといけないし、装着も時間がかかるので毎日コンタクトは無理かなあ。ちょっとずつ慣れていきますか。
地獄から解放され、あれこれ考えている僕に看護師さんから一言。
「じゃあ外してみましょうか」。
僕「・・・」。
地獄は終わらない。悪夢の始まり。僕VSコンタクトレンズVSダークライ。
結局この後、外すのにも30分くらいかかった。
さてこれが1年前の話。最近と言いますと、両目つけるのに40分程度まで短縮されました。
・・・。
そう、結局なんだかんだメガネの方が楽となってしまい、全然コンタクトつけてません。何も用事のない休日に、練習としてつけてますが、コツが一切つかめていない。慣れしかないのでしょうか。
コンタクトつけて外へ出るにしても「途中でトラブったらどうしよう」とか思うと、結局メガネを持ち歩くことになるし、ミュージカルを見に行く日はほぼ確実に泣くので、「コンタクトが流れてしまったらどうしよう」と思うと、メガネの方が楽とまで思ってしまう。
加えて僕は顔が薄いので、メガネがないとただでさえボヤッとした顔が、さらにもっさい顔になる気がする。
さて世の中の皆さん。メガネをかけている人を見て、メガネを取れといじったり、メガネを奪ってみたり、そんなことはしないでください。僕らメガネの民にとって、メガネは生命維持機関です。
飾りじゃないのよメガネは。HA-HAN。