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【議事録公開!!】他社事例に学ぶCSM討論会~乗り気でない現場ユーザーへの利用促進策など~

1. 開催の背景と概要

 急拡大を続けるSaaS市場で、各社の事業成長の鍵となるのが「カスタマーサクセス活動」だ。だが、成果に結びつく成功法則や方法論が現時点ではまだ十分には確立されておらず、各社で試行錯誤を重ねているのが実情ではないだろうか。特に、ハイタッチ活動に関しては、そのカバー範囲の広さ、属人性の高さ、スタイルの多様性などから、業界全体としてブラックボックスになっている部分が少なくないように感じる。

 そこで、少しでも業界としてのナレッジ形成とその発展が進むよう、カスタマーサクセスコミュニティ「CS KOMMONS」を通じて、様々な取り組みを行っていく。まずは、2022年4月7日に実施した本イベントを皮切りに、現場でカスタマーサクセス活動を牽引する皆様と継続的に議論を重ねていく取り組みを始める。この記事では、その討論会の議事録を初回限定で特別に公開させて頂く。

 当日は、CS KOMMONSの400名以上のコミュニティ参加者の中から、各社でハイタッチ活動を牽引してきたご経験をお持ちの方々に、ディスカッション参加者としてご登壇頂き、テーマごとのディスカッションを行った。
 そして、当日はディスカッション参加者以外にも、聴講者として多くの方に参加いただいた。イベント後のアンケート結果として、5点満点の質問で平均4.7点のご評価を頂き、自由記述コメントで「とてもリアリティがあってとても参考になりました」「現場レベルでの取り組みが聞け参考になりました」といったお言葉を頂いた。

 なお、司会進行は、KOMMON代表の白塚さんと私(中嶋)の2人で担当させて頂いた。

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 討論会の進行は、予め私から前提情報と論点を整理して説明させて頂いた上で、参加者のみなさんから事例やご見解を共有いただく形で進行した。また、参加者の皆さんからお話しいただく内容は予めキーワードを記載しておいて頂き、その内容を投影しながら議論を進めていった。

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2. 討論会参加者のご紹介

 ディスカッション参加者として以下4人にご登壇頂き、イベントの中でもそれぞれ順番に自己紹介を行っていただいた。以降は、その自己紹介の内容から、当日の議論の内容をそのまま議事録として共有させて頂く。

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<中嶋> それでは、こちらの資料の左から順番に、まずは網島さんから自己紹介をお願いできますでしょうか。

<網島> Sansan株式会社の網島と申します。

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 現在はSansanという人脈のデータベース構築・名刺管理のサービスを提供しており、エンタープライズとよばれる大手領域のお客様のカスタマーサクセスを担当しています。金融やインフラ系の業界を中心に「Sansanを活用してどうDXを推進していくか」という面での支援を行っています。今回のテーマにもある「どのように現場ユーザーにプロダクトを活用頂くか」といった部分は、なかなか定着が進まず苦労する場面もあり、胃がキリキリするような日々を送っております(笑)。本日は私のこれまでの経験をお話しさせて頂きつつ、参加者の皆様の知見をお借りして、今後の顧客提供価値を高めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

<鈴木> 株式会社Hacobuの鈴木と申します。皆さん、よろしくお願いいたします。

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 当社ではMOVOというサービスを提供させて頂いております。物流関係のSaaSです。その中で私はカスタマーサクセス部門に所属しておりまして、主にハイタッチでお客様とコミュニケーションを取らせていただいております。お客様へどこまで支援をしていくべきか、他社様はどのように取り組まれているのかなど、皆様とお話をしながら色々と知見が得られたら良いなと思っております。今日はよろしくお願いいたします。

<原島> はじめまして、原島と申します。

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 今日、唯一ぼくだけがふざけているキャラで、今日参加されている方はみなさん堅いなと思って、ちょっとやりづらいなと感じています(笑)。いま現段階ではフリーランスとして働いていますが、前職はイタンジという会社でCS企画のマネージャーを、その前はMOVOさんとゴリゴリの競合のハコベルというサービスを提供する会社でCSの責任者を務めていました。ハイタッチでゴリゴリ120社持って担当していた時代もありますので、これまでの経験を包み隠さず提供できればと思っております。あと、なるべくこの堅い空気を壊せればと思っていますので、どうぞ生暖かく、よろしくお願いいたします。

<山腰> モビルス株式会社の山腰と申します。

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 所属はカスタマーサクセスユニットで、主にオンボーディングやアダプションのフェーズを担当しています。弊社のソリューションは、コールセンターを持っている企業様向けに、テキストチャットやチャットボットなどを提供しております。私自身、まだまだ勉強中の身だと思っていますが、皆さんとのディスカッションを通じて色々なことを勉強したいと思っています。今日はどうぞよろしくお願いします。

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3. 論点の解説 -SaaS利活用の現在地-

<中嶋> みなさん、ご紹介ありがとうございました。では、続きまして、論点の解説に移ります。一つ目の論点はこちらです。

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<中嶋> 本日ご参加のみなさんは、聴講者の方を含め、カスタマーサクセス経験をお持ちの方がほとんどですが、みなさん、いかがでしょうか?ご支援している各社様に自社のプロダクトを十分に活用頂くことは出来ておりますでしょうか?

 議論に移る前に、全体の状況を確認しておきましょう。

 まず、昨年末に約1万人の会社員を対象に行われた調査によると、そもそもSaaSを導入している割合は約1割しかないようです。つまり、SaaSを導入すらしていないという企業(部署)がむしろ大半のようです。私たちSaaSベンダーが努力していくべき余白はまだまだ大きいですね。

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<中嶋> そして、その約1割のSaaSを導入している方々に対して現在の活用度を聞いた質問の回答結果を見ると、その導入している方々の中でも4割以上がSaaSをきちんと活用できていないと感じているようです。

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<中嶋> また、このほかにもSaaSの利活用状況に関する調査は様々行われていますが、上手く活用が進んでいないという指摘をよく耳にします。さらに、2020年12月に行われた別の調査では、国内の企業1社あたりのSaaSの利用数は平均8.7個で、これはアメリカの5年前と同レベルに留まっているとの指摘もあります。やはり国内の全体観としては、まだまだSaaSの利活用を伸ばしていく余地が大きいというのが現状ではないでしょうか。

<中嶋> さて、先ほどご紹介の調査では、SaaSの活用が進んでいない理由についても、確認されていました。様々な要因があるようですが、「操作が複雑で、使い勝手が悪い」「やりたいことを実現できる機能が備わっていない」「SaaSを活用した業務フローを構築できていない」といった回答が特に多く集まっているようです。

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<中嶋> 「使い勝手」や「機能不足」については、あくまでもご利用された方が感じたご印象です。もちろん、事実として足りていない側面はあるでしょうが、既存機能を前提に利用者様に「良い体験だ」とお感じ頂けるかという点は、CSMのみなさんが日々努力を重ねていらっしゃるポイントの一つかと思います。その点については「業務フロー構築」も大きく関連する論点になりそうですね。このあたりについても、後ほどの議論の中で各社様の実態をお伺いさせてください。

<中嶋> 今回の論点について、別の観点で問題をもう少し掘り下げておきます。各企業にとって、SaaSを利活用するという活動は、広義のDXに繋がる取り組みであるという見方もあると思います。実際に、DXというキーワードを使って、自社プロダクトの普及促進を進めていらっしゃるベンダー様も多いのではないでしょうか。

 やはり、DXという観点で見ても現状は芳しくありません。2020年末に大手企業の管理職を対象に行われた調査によると、DXの取り組みが成功に至ったと認識している割合はわずか7%に留まるようです。

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<中嶋> こちらの調査以外にも、DXに関する調査も多く行われておりますが、そのほとんどが「大半の企業が成功に至っていない」という評価であるかと思います。

<中嶋> また、先ほどの調査の中では、取り組みテーマ別の集計もなされておりますが、内訳を見てみても各テーマで悉く成功に至っていないのが現状であるようです。

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<中嶋> では、何が要因となってDXが進まないのでしょうか。以下の記事では「戦略なき経営トップ」「DX部門のスキル不足」「事業部門の抵抗」といった課題があることが指摘されており、私も自身の経験を振り返るとこれらの要因がネックになることがあると思います。

<中嶋> 特に、SaaSの利活用という文脈に限定した場合でも、事業部門、すなわち現場ユーザーから十分に理解を得られずに、利活用が浸透しないということは往々にしてあるのではないでしょうか。

 そして、大半のSaaSプロダクトは、CSMが普段やりとりをする「推進担当者様(管理者様)」と、現場でご利用いただく「現場ユーザー様」がいらっしゃる構造があるかと思います。みなさんも「推進担当者様には利用浸透を図りたいとお考え頂いているものの、なかなか現場ユーザー様でのご活用が進まない」という問題に直面することがあるのではないでしょうか。

 本日の一つ目のテーマとして、この問題を扱います。すなわち、各社様でどのように現場ユーザー様への活用浸透を進めていらっしゃるのか、お取組みや事例をお伺いして参ります。全体観としてはなかなか上手くいっていないという状況ですので、各社様の中でも成功事例だけでなく失敗事例も多くあるかと思います。その差分にも意識して頂きながら、リアルな生々しいお話をぜひお聞かせください。

4. トップダウンで業務変革を推進する

<中嶋> それでは討論会を進めていきましょう。ディスカッション参加者の方には、各論点に対して、予めキーワードを記載して頂いております。そちらを投影してみなさんにもご覧頂きながらディスカッションを行います。

 そして、1つ目の論点に対して、みなさんに記載頂いた内容はこちらです。

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<中嶋> 記載頂いた内容について、順番にお話をお伺いさせて頂きます。まず、網島さんに記載して頂いた内容として、「習慣変容」や「チェンジマネジメント」といったキーワードがありますが、用語の解説も含めて網島さんから簡単に内容のご説明をお願いできますでしょうか。

<網島> はい、現場担当者様がプロダクトを使って頂けないケースはよくあると思いますが、その時に一番ネックになるのが「現場ユーザー様の日常業務へプロダクトを上手く組み込むことができていない」という点です。これは業務レベルだけではなく、考え方を変えて頂くということも必要です。
 例えば、弊社のSansanを活用頂く際には、社内で人脈の共有が上手くできるようになった後に、営業の方に「これを日常のアカウントマネジメントに活かしていこう」という考えを持って習慣を変えて頂く必要があります。しかし、営業担当の方がこのように普段の考え方を変えて頂くというレベルには達しないことの方が多く、そのような状態がむしろ当たり前だと思います。

<中嶋> なるほど。

<網島> そこで、キーワードになるのがチェンジマネジメントです。チェンジマネジメントとは、組織改革を成功させるために、変革のプロセスを効果的に進めていくための考え方です。例えば、変革を指示する経営層から「何のためにこの変革が必要なのか」という目的や背景と、変革が起きた先にある未来像を適切に伝えていって頂くことで、なかなか腰の上がらないユーザーを動かしたり、反発しているユーザーを説得したりすることができます。その結果、ユーザーのマインドが変わることで行動が変わり、行動が変わることで業務が変わり組織が変わるということに繋がっていきます。そのために、まずはガバナンスの効きやすい経営層の方から、「なぜ使うのか」「使わないとどうなってしまうのか」を伝えて頂くことが大事だと感じています。

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<中嶋> なるほど。実際にお客様にそのような働きかけを行って頂くために、網島さんはどのように提案を進めていらっしゃるのでしょうか。

<網島> 利活用定着ができていないことが数値で分かったタイミングで、まずは対面の担当者様に対して「ぶっちゃけ、どうなんですか。ユーザー様は上手く使えているのでしょうか。」ということを感覚としてお伺いするところから始めます。そうすると、大抵は「上手く使えてないんだよね」というご回答を頂くので、「上手く活用するためにはマインド自体を変えて頂く必要がある」ということをご説明した上で、マインドを変えて頂くためには、「どのラインから落としていく必要があるのか」「どのラインが一番ガバナンスが効くのか」ということを丁寧にヒアリングをさせて頂きます。その上で、実際にどのように浸透を進めていくのかを仕切り直して、導入の体制から議論を進めていくことが多いです。

<中嶋>  ヒアリングをしっかりと行った上で、変革を効果的に進めるために、推進の体制やメッセージなど含めてご提案されているといらっしゃるのですね。

<網島> はい。

<中嶋> なるほど。先ほど網島さんにお話し頂いた「もう一度利用定着を進めていこう」というタイミングでミーティングをされるという点については、原島さんに記載頂いた「決裁者を含めたキックオフ」というキーワードにも通じるところがありそうですね。

 原島さん、こちらのキックオフを実施される際には、実際にどのような内容をお話しされることが多いのでしょうか。

<原島> 網島さんと結構似ています。決裁者と話す場合は、先方の会社の方針やビジョンと、弊社のプロダクトのビジョンを説明して、トップから現場へ落として頂くという進め方が多いです。明確に再キックオフという形を取って、ゴリっと進めていくイメージです。

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<中嶋> お客様の決裁者の方に出てきて頂きたいということは、ベンダーの我々としては強く願うポイントですが、実際に出てきて頂くためにはどのようにアプローチをされているのでしょうか。

<原島> オペレーションを完全に可視化してアプローチをします。今の現場のオペレーションと、導入した後のオペレーションを可視化して、事前に資料を送りつけます。何もない状態で決裁者を出してほしいと頼んでも動いていただけないケースが多いと思います。なので、明確に何かを議論したいのか、関係値ができている場合であれば「こういう課題があって現場が上手くいっていないのでこの点を話をさせて頂きたい」ということを事前に資料を送って引っ張り出すというイメージです。

<中嶋> なるほど。その資料を作るときには、現場のことを理解しておく必要があると思いますが、そこは推進者の方と協力されるのでしょうか。

<原島> どちらかというと、初めから現場の導入が上手くいっていないということを明確に書いてしまいます。「この店舗の導入が上手くいっていなくて困っています」ということを資料に書いてしまいます。同時に、例えばイタンジであれば、イタンジを導入した方が工数や売上にインパクトが出ますということを具体的な数字も盛り込んだ上で説明します。なので、この店舗の導入を一緒に進めてくださいと協力を仰ぎます。

<中嶋> なるほど。

<原島> 明確にこちらが考える課題も初めから思いっきり出してしまいます。

<中嶋> かなり攻めたアプローチですね。

<原島> そうですね。

<中嶋> そうすると、推進者の方から「ちょっとちょっと、勝手にそんなものを出さないでくれよ」と言われてしまうことはないのですか。

<原島> あまりそういったケースは、イタンジでもハコベルでもなかったですね。もちろん、それまでに関係構築ができている必要はありますが、どちらかというと、今の課題を素直に提示してあげた方が、より前に進みやすいかと思います。

<中嶋> 結果的に、推進者の方にとっても、状況が改善した方が喜んでいただけそうですもんね。

<原島> はい。

5. 現場ユーザーへのメリット訴求とフォローアップ

<中嶋> 原島さんにお話し頂いた「効果をしっかりと明示する」という点は、指標もしっかりと決めた上で算出されるイメージになると思います。白塚さんや鈴木さんに記載頂いた、KPIや目標設定というお話も、おそらく近しい部分があるのかなと思いました。

 鈴木さん、ここまでのお話をお聞きいただいて、鈴木さんのお考えと近しい部分もありましたでしょうか。

<鈴木> そうですね、かなり色々と近いと思いました。

 現場が動かない場合に取るべきアプローチは大きく2つあると考えています。一つはトップダウンでのアプローチ、もう一つがボトムアップでのアプローチがあると思います。

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<中嶋> はい。

<鈴木> トップダウンの方は、お二人が仰ってくださったように、チェンジマネジメントや決裁者をいかに巻き込むかという点が重要になると思います。ぼくも「現状は上手くいっていないですね」ということを正直に伝えた上で、「しかしながら、この方法では上手くいかないということを学べましたよね、だから次やるときはこうしましょう」という方向性でお話をすることが多いです。

<中嶋> なるほど。

<鈴木> 一方で、ボトムアップのアプローチをする際には、推進者にとってはサービスを導入した理由というものがあるはずですが、現場の利用者は目標すら知らないケースもあります。なので、「どこを目指していくのか」「このサービスが自分にとってどんな価値があるのか」という点を、もう1回CSが利用者に対して営業をするということが必要になると思います。

 ですが、ここまでのお話をお伺いする限りは、意外とみなさんは利用者に対するアプローチはされていないのかなと思いましたが、そのあたりはいかがでしょうか。

<中嶋> どうでしょうか。私が勝手にマイクを奪ってしまったところでありましたが、網島さん、原島さん、利用者へのボトムアップのアプローチについては、いかがでしょうか。

<網島> 利用者への営業というような活動に関してはあまりできていないですね。特に企業様の規模が大きいケースですと、一人一人のエンドユーザーに、なおかつ使っていない方にフォーカスしてアプローチしていくというのは、なかなか自分自身はできていないです。

 逆に、一番使ってくださっているヘビーユーザーの方をピックアップして、その方にヒアリングをして好事例を把握して、それを展開して他の方もモチベートしていくという働きかけをすることはありますね。

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<中嶋> なるほど。たしかに、そのような取り組みもありますね。原島さんは、いかがでしょうか。

<原島> お二人のお話は完全にアグリーですね。実際に実例として、現場の方は、目標どころか導入目的すら知らないことが往々にしてあります。ただ、中には現場で上手く使っている方もいるので、その方を味方にして、その人にさらにめちゃくちゃ使っていただけるように、直接ハイタッチして支援します。そして、成果を出して、そこから波及させていくという働きかけも行うことがあります。

<中嶋> 現場の方にもハイタッチされているのですね。

<原島> やはり、利用者の中にもリテラシーの差があります。例えば高齢の方だとネガティブな反応を示されるというケースもあるので、そういう時は比較的若い方にターゲットを絞って、ポジティブな方やウェブに対するリテラシーの高い方から活用を進めて頂き、そこから波及させていくという進め方をしますね。

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<中嶋> なるほど。

 みなさんのお話をお伺いしていると、上手く使えている方、もしくは全然使えていない方にターゲットを絞って直接アプローチするという進め方があると思いますが、そこの判断は基本的にプロダクトの利用データを見ていらっしゃるのでしょうか。

<網島> そうですね。基本的にはプロダクトの利用データを基にデータ抽出をしています。一方で、ヘビーユーザーが導入目的に沿った使い方をしているかというと、必ずしも合致しないケースもあると思います。

<中嶋> はい。

<網島> すごく触ってくれてるけど、この人、業務として成果は全然出ていないよね、ということもあると思います。なので、そこは指標として参考にしつつ、実際にどこにフォーカスするかは、その会社の導入目的に寄り添うケースが多いですね。

<中嶋> なるほど。

 ただいま、チャットでもコメントを頂いておりますが、「実際に現場の方がその課題を解決したいと思っているかどうか」というポイントに分岐がありそうだとご意見を頂いております。

 先ほど鈴木さんからご紹介頂いたフレームワークとして、トップダウンとボトムアップというアプローチがありました。ボトムアップ、すなわち、現場からのアプローチという点については、元々山腰さんに記載いただいていたキーワードにもございました。山腰さん、実際に事例としてお取り組みされていたことなどございますでしょうか。

<山腰> 弊社の場合ですと、例えばチャットボットというツールを提供していますが、これは結局のところ「自動化」を目指すものです。

<中嶋> はい。

<山腰> そして、現場利用者はコールセンター部門で、ここでチャットボットを作っていきます。一方で、見方を変えると、自動化されると電話が減るので、自分たちの仕事も減ることになります。そうすると、現場利用者にとって自分たちの仕事がなくなるということにも繋がってしまうため、ネガティブな印象を持って抵抗が生まれるということがあります。

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 そこに対して、チャットボットを利用することのメリットをしっかりと訴求していくことが、現場利用者の抵抗を減らすためにも重要だと考え、そこに取り組んでいます。

<中嶋> それは、現場の方からすると、なかなか理解していただくことが難しそうなテーマですね。

<山腰> そうですね。

<原島> 私からも質問させてください。導入すると「自分たちの仕事が奪われる」とか「やり方が大きく変わる」というように、プロダクトに対してネガティブな方がいらっしゃる。その人たちが要因となって利用定着が上手くいかないということが、私も過去に実例としてありました。そういった人たちをどのように攻略しているのでしょうか。

<山腰> やはり導入の目的とメリットをしっかりと伝えることが大切だと思います。例えば、チャットボットを求めているのは、これを利用する一般のエンドユーザーの方々になります。そして、コールセンターの方々はお客様のことをすごく大切に思っているので、まずは「ユーザーの方が求めているので、そのようなチャネルを用意しましょう」というメッセージでアプローチしますね。

 あとは、現在はコールセンターの人員も採用がすごく難しいので、長い目で見たときに仕事量を減らしていかないと、結局は自分たちの首を絞めてしまうことになります。なので、入電を減らして、効率よくコールセンターを回していくことができるというメリットをお伝えしています。

<原島> 改めて、課題と導入目的を整理して伝えていくというイメージですかね。

<山腰> そうですね。その点を現場を管理している方々を含めて伝えていくというイメージですね。

<中嶋> ここは、実際にお伝えした時にすんなりと理解いただけるのでしょうか。きちんとメリットをお伝えしていても、現場の方から反発があったりすることはないのでしょうか。

<山腰> やはり、「はい、そうですね」とすんなり受け入れて頂くことはなかなか難しいですね。その際は他社様の事例を出して提案したりします。

 ただ、実はもう一つ壁がありまして、チャットボットは作るのが難しいという点があります。チャットボットをいざ作り出すと、そのタイミングで再度不満が出るようなこともあるので、そこからさらにハイタッチでサポートしていかないといけないと思います。

6. 現場業務の解像度を高め、適切なメリットを設計する

<中嶋> なるほど。そう考えますと、やはり、きちんと使った時のメリットが出るように、適切な運用設計をする前提の支援がないと、いくら話を持って行ったところで受け入れて頂けないということになりそうですね。

 ここまで、現場のアプローチについてみなさんにお話を頂いてきましたが、鈴木さん、ここまでの議論をご覧になっていかがでしょうか。

<鈴木> あ、ここで急に振られてくるのですね(笑) ちょっと油断していました(笑)

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<原島> こんなパスもあるのですね、自分も気を付けないと(笑)

<中嶋> はい、気を付けていてください(笑)

<鈴木> そうですね、白塚さんもキーワードとして記載されていましたが、メリットというのは、立場によってそれぞれ違うと思います。決裁者にとってのメリット、導入者にとってのメリット、現場ユーザーにとってのメリットが、それぞれ別のメリットがあると思います。

 全員がそれぞれのメリットを実感しつつ、大目的も達成できるような設計ができると結構うまくいくと思います。

<中嶋> たしかに。

<鈴木> だから、そのメリットが思いつかない時が大変ですよね。「現場担当者のメリット・・・ないなぁ・・」みたいな。

<原島> 無理くり作ったりすることもあります。

<鈴木> そうですよね。「きっとこんな取り組みをすれば、こんな成果に繋がるのではないでしょうか」などと話すことがありますね。

 やっぱり、無理くり作るしかないのでしょうか。

<中嶋> 私も「現場の方やこの人にとってはメリットがないな・・」と思うことがあるのですが、その時にはまず自分の理解が足りていないかもしれないと考えることが多いです。

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 現場の方が普段はどんな実務をされているのか。どんな目標を追いながら、どんなオペレーションを回されているのか。こういった想像が足りていないと、提案もふわふわとしたものになってしまうので、メッセージがなかなか刺さらずに取組も前に進まないという結果になってしまいます。

 なので、現場を知るために、現場の方と直接会話をしにいくことがあります。そうすると、当初は見えていなかった新しい答えが頭に浮かんでくるので、それを提案すると理解いただけるということはありました。

<原島> 現場のオペレーションをどこまで深く知る必要があるのかは、プロダクトによって結構分けられると思います。

<中嶋> はい。

<原島> それこそMOVOさんやハコベルみたいな基幹システムよりのSaaSだと、オペレーションをゴリっと変えていく形になり現場への影響もめちゃくちゃ大きいため、現場の解像度がすごく必要になると思います。

 一方で、HubspotとかMAみたいなオプショナル的なSaaSだと、簡単にリプレースができるようなもののイメージですが、その場合だと、実はそんなに現場の解像度が高くなくてもいけたりするんじゃないかと思います。

<中嶋> なるほど。

<原島> それによって難易度も変わってくると思います。また、成果を求められるのか、工数削減が求められるのかなどによっても変わるところがあると思います。

<鈴木> めちゃくちゃ個人的な興味ですが、質問してもいいですか。

<中嶋> はい、お願いします。

<鈴木> 我々も自社でSansanを使わせて頂いていて、Sansanがない業務ってもう想像がつかないと思っていて、なくなってしまうことはありえないと思っています。

<網島> ありがとうございます(笑)

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<鈴木> なので、Sansanをご利用の企業様の中で、現場利用者があまり乗り気でないという状況があまり想像できないのですが、どういう方が乗り気じゃなくて、どういう反対が起こるのですか?

<網島> ケースとしては大きく2種類あると思います。

 その前に前提として、Sansanの活用シーンについて少し説明させてください。Sansan自体のプロダクトが誕生した当初は、お客様とお会いして名刺交換する人をターゲット層として使って頂いていました。ですが、今だとSansanは、基本的なビジネスデータが自動セットされていて、色々なニュースや財務諸表情報が見られるといったデータベース寄りのプロダクトに変わってきています。

<鈴木> なるほど。

<網島> そして、現場の方が乗り気でない一つ目のケースとしては、そもそも自分自身が営業活動をしない人たちです。バックオフィス部門の方や、名刺の交換とかお客様接点はあるものの、自分が営業というよりはどちらかと言うと営業を受ける側の方々です。そういった方々も人脈を持っているので、会社としてその人脈を活用したいというケースは多くあります。
 開発のエンジニアの方々も同様です。特にSIerの企業様だと、エンジニアの方がお客様先に常駐したりして上の層の方に会っているケースもあります。かなり大事な人脈を持っているのだけれども、自分自身がその人脈を活用するメリットをあまり感じてもらえないです。そのようなケースは結構大変ですね。

 もう一つのケースは、例えば金融機関の営業様によく起こりますが、あくまでも自分の人脈は自分がこれまでに積み重ねてきた資産であり、会社で共有して会社で成果を上げるというよりかは、自分の大事なお客様は自分で守りたいという発想になってしまうことがあります。マネジメント層には理解して頂いても、現場の営業の方が進めてくれないということがありますね。

 まとめると、自分自身が営業活動を行わないユーザーと、自分の人脈は自分のものだと考えるユーザーは、かなり難易度が高い印象があります。

<鈴木> なるほど。めちゃくちゃ解像度が上がりました。

<網島> それこそ、先ほどの原島さんの話にも重なるかもしれませんが、Sansanはおそらく利用当初はあくまでも”Nice to have”のプロダクトだと思います。Sansanがなくても営業活動はできますし。ただ、一度定着してしまえばかなりお使いいただけます。やはり、プロダクト特性に応じて、僕らがやるべきことはすごく変わるのかなと思いました。

<原島> そうですね、特にチャットボットは結構大変でしょうから、どうするのかなと思いました。

<中嶋> たしかに。ただ、プロダクトとして可変性が大きいチャットボットなどであれば、しっかりと作りこむことで何とかメリットを出すこともできるのかなと思いましたが、その点はいかがでしょうか。

<山腰> と、申しますと?

<中嶋> 例えばSansanのようなプロダクトですと、使い方として変えられる部分や範囲が限られると思います。一方で、チャットボットは、ほぼ設計が肝になると思うので、逆に設計が上手くできれば、多くのケースでメリットが出せるのではないかと思いました。

<山腰> なかなか難しいですね。我々も日々研究を重ねていますが、そもそも上手く設計をすること自体に難しさを感じています。チャットボットの場合は、元々企業様が持っているFAQがベースになるのですが、そのFAQの出来次第で結構変わってくるところがあります。

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<中嶋> たしかに、FAQの準備状況や内容によって大きく変わりそうですね。

<山腰> はい。

7. 用意周到な草の根運動で、活用機運を高めていく

<網島> ところで、中嶋さんが記載されている「用意周到な草の根運動」という話を、めちゃくちゃ聞きたいのですが。

<原島> 僕もめっちゃ気になっていました。

<網島> これまでの議論で出てきた話は、発生リスクがある程度事前に分かることもあったかと思っていますが、この「用意周到な草の根運動」というのは、具体的にどういう取り組みをされているのでしょうか。

<中嶋> 例えば、予め対策を打つべき問題として、実際に現場の方へ案内をしてみたら想定外の反発があって活用推進に失敗してしまうということが結構あります。なので、現場の方に対して「こういう風に使おうと思っているんですけど、この方向性で良いですか」というように、相談の段階から現場の方に参加して頂くという手法が、有効なアプローチの一つだと思います。

<網島> はい。

<中嶋> クラウドサインを例にお話しいたしますと、利用開始前までに現場の皆さんにお伝えすべき事項として、「この目的のために今後クラウドサインを使っていきます」という方針の案内、「業務フローはこのように変えていきます」という変更点の説明、「具体的な操作手順はこのような流れになります」という具体的な操作説明、といった項目があります。

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 多くの企業様では、これら全てが決定して準備が整った後になって初めてようやく重い腰を上げて、周知を進めていくという方法を取られることがあります。しかし、そのような進め方をしてしまうと、その段階になって初めて現場の方から「いやいや、それだとこういう問題があるんだけど」とクリティカルな問題が出てきてひっくり返されてしまったり、それに気付くことすらできずに現場の方からは不満に思われて推進者は「なんで使わないんだ」と頭をひねってしまう構図が生まれたりして、結果的に活用が進まないという事態に陥りがちです。

 なので、検討の浅い段階から段階的に重ね重ね周知していくこと、プロジェクト自体に現場の方も入って頂くというような取り組みを、策略的に実施していくことが大切だと思います。

<網島> なるほど。そのような施策を含めてプロジェクトを進めていくにあたって、マイルストーンのようなものをどれぐらい用意されているか気になります。例えば、コンサルティングファームやSIerの企業様と一緒にプロジェクトを進めていると、いわゆるWBSのように、何月何日までに誰がどんなタスクをExcelで結構細かく引くようなケースがあります。一方で、「だいたいOO月ごろにはこういう取り組みをやりましょう」と、ざっくりとパワポでトントンと提案するだけで十分なケースもあると思います。

 このようなプロジェクトを進めていくための準備に、どれぐらい戦略性を持たせて進めているのかをお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

<中嶋> そうですね、有償サービスをお申込み頂いているお客様にはWBSのようなものもご提供しております。こちらはタスクを整理するためのものでして、運用を決めたり設定をしたりといった実務的なタスクを整理しているシートです。また、このWBSとは別にコミュニケーションプランというシートもフォーマットとしてご提供しております。

<網島> コミュニケーションプラン、ですか。

<中嶋> はい。段階的に周知を実行していくために、いついつに誰から誰にどういう方法でコミュニケーションするのかといった施策の計画を整理していただくためのシートです。

<網島> コミュニケーションプラン、いいですね。実際のアウトプットも見たいところですが・・(笑) 

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<中嶋> そうですよね・・(笑) 一応、オープン情報として、ご参考頂けそうな事例があります。

<白塚> おお、言ってみるもんですね(笑)

<中嶋> 当社がご支援した事例ではないのですが、たまたま私がテレワーク推進の取り組みを色々と調べているときに見つけたものです。

<網島> はい。

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<中嶋> こちらでは、コロナ前に住友商事様が全社的にテレワークを推進された際のお取組みが紹介されています。プロジェクトチームで週次のミーティングを開催したり、「テレワーク推進担当者」というプロモーターを各部署に設置したりといったお取組みをされています。

 そのほか、この時期に丁度社長が交代されたタイミングだったようで、新旧社長でテレワークを実施した感想を語って頂いてその内容を広報誌に掲載されたようです。トップが自ら率先垂範してテレワークを実施している姿を見せることで、みなさんに「あ、テレワークしても良いんだ」という風土の醸成に繋がっていると思います。

 また、説明会は計35回実施されたというお取組みも象徴的です。説明会を1~2回開催することは一般的かと思いますが、何十回も開催されるほど徹底されている企業様は多くはないのではないでしょうか。

<網島> 良いですね。リアルですし、話を聞いていてワクワクしました。

8. 部門別の利用率を可視化し、成功事例を横展開する

<白塚> ところで、チャットでもご質問を頂いています。
「現場利用者でよく使ってくれる、理解してくれているが社内影響力がそこまで無い方(入社歴が浅いなど)は積極的だが、歴の長い方などは乗り気じゃない場合、その方々を巻き込むに効果的なことはありますか?」というご質問です。

 こちらに対して、既に原島さんからチャットでお答え頂いております。
「決裁権者の方が別にいる場合、決裁者の方に「社内影響力がそこまで無い方」がめちゃくちゃ使ってくれてることをアピールしてます。個人別の利用実績をレポートにしてアピールするケースはあります。関係値次第ですが。」

 このあたり、原島さんから少しご説明して頂けますでしょうか。

<原島> すみません、話が盛り上がっていたので、先にチャットを返しておこうと思って投稿しました。

<中嶋> ありがとうございます。

<原島> チャットで頂いていた通り、活用してくださっている方が社内的な影響力が強くないケースも一定発生すると思います。そのような場合は、その方がプロダクトを活用してくださったことで、どのような効果に繋がったのかということを、きちんと明示して差し上げる。そして、何か成果が出ているのであれば、その方がきちんと評価をして頂けるように、こちらとしてもその人のアシストをするということを意識しています。

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 例えば、レポートの内容に、Aさん、Bさん、Cさんの個人別の利用率のデータを出して、その結果これだけ工数削減ができています、これだけ売上に繋がっていますよということを完全に見える化をして、決裁権者の方にアピールをするということですね。時には、「長い目で見てこの人がリーダーになったほうが良いんではないですか」というようなことも、関係値が良ければ提案したりするケースもあります。

<白塚> データがあると、かなり強気に行けるというのはありますよね。実際にここまで結果が出ていますということが示せると話を進めやすいと、皆さんのお話を聞きながら思いました。

 続けて、チャットでもう一つ質問を頂いています。

「エンタープライスのお客様だとオンボーディングの過程の中で、支店単位で活用率が大きく乖離するケース(定着化が進んでるケースと進んでないケース)が往々にしてあると思うのですが、そう言った拠点間の差など埋めるための取り組みとしてやられてることがあれば教えていただきたいです!」

 鈴木さんとか、こういったケースがあるのかなと思いましたが、いかがでしょうか。

<鈴木> まさにありますが、なかなかこの差を埋め切れていないなと思います。まさに課題だと感じています。

 一方で、今できていることがあるとすると、もっと大きな話をするということです。支店単位でちょっとずつ良くしていこうというメッセージではなく、全社で共通のKPIを掲げて取り組んでいることが多いです。上から落としていったのに、支店別でみて活用度が芳しくないというケースはあまりない印象です。

<白塚> なるほど。現場から始まったパターンだと、導入者が異なるので、支店ごとのやる気に差があり、当然利用状況に差が出てくるということですかね。

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<鈴木> そうですね。そこで、共通の志を持った人を見つけて、その人と話を進めて対策を考えるということに今取り組んでいますね。

<白塚> ありがとうございます。

 もし原島さんからハコベル様のお取組みなど聞けるようでしたら、鈴木さんがすごく聞きたそうにしているのでぜひ(笑)

<原島> (笑) 
 ハコベルでは明確にKPIを置いていました。エンタープライズ向けのCS組織を構築した時に、一人当たりの担当社数は例えば8社とか少なめにするので、店舗数を把握してそれをベースに全体設計をして例えば「今月はこの2店舗を開拓します」みたいなことをCSMのKPIとして持っていました。なおかつそのロードマップをお客様と共有をしていました。

 全国展開を進めようと思っても、やはり難しいところは難しいです。いっぺんに展開するというよりも「どの段階でどこまで実現するのか」「どういうロードマップで進めていくのか」をお客様とも合意形成をしていました。そして、結果的に上手くいく店舗と上手くいかない店舗が出てくるので、その時は上手くいっている店舗さんに、導入事例に出て頂くことを打診して、結構大々的に取り上げて「すごいんだよ」ということをアピールして頂きます。そしてそれを他の店舗さんにも見て頂いて導入検討して頂くという流れで推進していきました。ただ、中にはこの店舗だけは「競合を使います」というのもあったりしたので、その時はどうやって解決しようかなと困ったことは往々にしてありましたね。

<中嶋> たしかに、象徴的に上手くいった事例が出てくると、それが弾み車となって他の部門や支店でもご利用頂くというパターンは結構あると思いました。

 原島さんが仰って頂いたように現場で目標を持たせて推進していくアプローチもありますし、先ほど申し上げた草の根運動にも通ずる話でありますが、予め上手い展開をプランニングをして導入するというアプローチもあります。つまり、上手くいきそうな店舗や協力して頂けそうな店舗に先に協力をしておいて頂いて、そして「こんなにすごい成果を出せた」ということを早い段階で実証して、その成果をもとにトップの方にも協力頂きつつ、さらに強力に全社で推進していくという取り組みは、各社様で使えるアプローチだと思います。

9. フェーズごとの活用促進施策

<白塚> たしかに、そうですね。みなさん、引き続きチャットでも追加質問があれば受け付けておりますので、よろしくお願いします。

 ここまでみなさんのお話をお伺いしていて、活用促進自体も立ち上げ期でとにかくゴリゴリ進めるしかないというフェーズと、Sansanさんのようにある程度シビアに切るところは切っていくみたいなフェーズとでは、活用促進のやり方も異なってくるのかなと思ったりしています。フェーズごとに、どのように活用促進のやり方が変わっていったのかということもお伺いしてみたいです。

 いかがでしょうか。いま頷いていらっしゃる網島さんに聞いてみても良いですか。

<網島> あ、はい(笑) そうだなあと思いながら頷いておりました。

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 弊社の場合ですと、二つの段階でフェーズ分けをしておりまして、一つがオンボーディング期です。最初の環境構築とユーザーへのインプットを済ませるタイミングです。一通り、オンボーディングが数値的にもユーザーからの定性的な声的にも完了したら、サクセス期という段階に移ります。実際に「蓄積されたデータをどう活用していこうか」というように、より一歩踏み込んだ形で支援の方向性ややり方はガラッと変えています。

 お客様の大きさにもよりますが、大体オンボーディングには半年から1年くらいをかけています。それ以降の支援については、お客様と細かく定例の打ち合わせを回しながら決めていきます。最初の立ち上げ期と利活用促進の時期では支援の方法がかなり異なっていると思います。

<白塚> そうですよね、どこかのタイミングで切り替えて、シビアに評価して難しそうなお客様と活用促進を推進していくお客様を見極めて、やり方を変えていらっしゃるのだろうなと思いました。

<網島> そうですね。ただ、この切り替えがなぜ必要なのかと言うと、当初のプロダクトの導入目的を達成するために必要なことを、ロードマップを引いて切っていくと各社で支援すべきポイントが分かるのではないかと思います。Sansanでは、最初の半年くらいはデータ構築にガッツリと力を入れなければいけなくて、ここがしっかりできないと次に進めないということでもあります。その上で、当初の導入目的を達成させるために後半の支援があると考えています。恐らくプロダクトや導入目的によってここの切り方は様々あるのではないかと思いました。

<白塚> たしかに、このあたりは企業さんによって分け方が異なってきそうですね。

 現場の利活用促進というテーマからは少し外れますが、今お話し頂いたオンボーディングとアダプションを分けているという点について、他社様でもこのような分け方をされていらっしゃるのでしょうか。それぞれどのような定義で運用されているのかという点も含めお伺いしたいです。原島さん、いかがでしょうか。

<原島> そうですね、そこは明確に分けるようにしています。オンボーディングの定義も会社によって分けていますし、プロダクトによって分けます。導入が完了するまでがオンボーディングと定義することもありますし、導入した後の利用状況として、WAUやMAUと、ログインや機能別の利用率などをみることもあります。全員が納得できる数値を定義するようにしています。

 既に会社として過去データが蓄積されているのであれば、上手くいっている会社と解約されてしまった会社で毎月の利用数やログイン数などを比較して見ると、どこに指標を置けばよいかがわかります。なので、それを元にオンボーディングやアダプションの定義を決めるようにしています。

<白塚> ありがとうございます。色々と僕の方が気になって質問してしまいました。

<中嶋> このあたりも、さらに掘り下げていきたいテーマでありますが、残り時間もかなり少なくなってきました。

 ここまでみなさんにお話頂いてきた利活用促進策について、白塚さんも仰って頂いたように事業フェーズで変わるところもあるでしょうし、原島さんが仰って頂いたように製品の種類によって変わるところもあると思います。パターン別に踏み込んで整理していくと、より深い議論もできそうだと思いました。

<白塚> そうですね。一つ目の論点だけでも多角的な議論ができたかと思いますが、二つ目以降の論点についても気になるところですよね。

10. 解約申し出から挽回し、解約阻止に成功した事例

<中嶋> そうですね、二つ目の論点についても、皆さんに記載して頂いたキーワードをご紹介させて頂きつつ、少しだけお話ししましょうか。

 二つ目の論点は、こちらです。

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 そして、時間の都合上、こちらについて論点の解説はスキップさせていただきますが、皆さんに記載して頂いているキーワードがこちらです。

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<中嶋> みなさんに共通している部分が多く、大きく二つのポイントに分けられると思います。一つは、経営レイヤー・トップ層・決裁者へのアプローチです。もう一つは、一度解約の連絡が来てしまうと「時すでに遅し」というケースが大半なので、その前にいかに防ぐかというポイントですね。

 時間が少ない中でありますが、少しだけ掘り下げさせてください。原島さんに記載して頂いている「経営レイヤーに再営業」というキーワードについて、具体的なエピソードをお聞かせいただけますでしょうか。

<原島> やっぱり、大きい会社さんから解約の連絡が来た時には「うっ」と思いますけれども、そのようなケースはやはり時すでに遅しということが多く、他社サービスを使ってしまっているケースもあります。

 そのようなケースにおいては、CSMだけで解決することはほぼ不可能だと思っています。その場合は、担当営業や社長や役員に確認をして、先方の経営層とつながりを持っていないかを確認して、経営層同士で話し合っていただくようにします。そして、アプローチする際には、プロダクトのビジョンというよりは会社のビジョンを伝えて、会社に惚れ込んでもらうということを目指します。

<中嶋> なるほど。

<原島> そして、あとは、祈る。

<一同> (笑)

<中嶋> そのプロダクトのビジョンと、会社のビジョンはどう使い分けていますか?

<原島> 会社のビジョンとして、イタンジやハコベルの時には業界を変えるために色々なプロダクトを出していくという考えがありました。例えば、経営層から「今後不動産業界を変えていくために、こういったプロダクトを考えていて、御社にも協力いただかないと業界を変えるのは難しいのです」と伝えるシーンも目の当たりにしてきました。当然、事前に先方のIR情報も読み込んで準備をして、当日はきちんと経営層同士の会話をしていて、実はプロダクトの話はほとんどしていなかったです。

<中嶋> はい。

<原島> そして、最後に「今のプロダクトに足りない部分を教えてください」ということをお伺いします。そこでお伺いした課題をもとに、次回エンジニアのトップも同席の上で、このタイミングに解消しますというロードマップを持っていって、ゴリっと戻すということを何回かやりました。

<中嶋> なるほど。

<原島> そこまでやった上で、担当者として最後は、祈る、という感じでした。

<一同> (笑)

<白塚> その祈りも効いているかもしれませんね(笑)

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<中嶋> (笑)
 たしかに、先方のトップの方にそこまで共感いただけたら覆りそうだなと思いました。

 網島さんにもトップアプローチを記載頂いていましたが、エピソードをご紹介いただけますでしょうか。

<網島> 具体的な話はあまりできないのですが、先方の経営層に対しては、解約懸念が発生する前にアプローチしておきたいという考えがあります。導入が決まったタイミングや、導入後半年くらい経過したタイミングで、決裁権者やエグゼクティブ層の方とお話をしておいて、解約の話が上がった時に相談できるような関係を作っておくことが、解約阻止に繋がると思います。

<中嶋> たしかに、そうですね。
 早い段階で阻止をするという点は、鈴木さんや山腰さんにも記載して頂いておりましたが、阻止するための手段としてはどのような取り組みをされていますか。

<山腰> トップ層とはなかなかつながりを持てていないのですが、現場利用者と接点を持っておくことが重要だと考えています。解約の申し出があった時にヒアリングを進めていくと、現場で不満を持っていたということが発覚するケースがあります。解約のパターンとしてはリプレースがほとんどなのですが、リプレースが決まる前に不満をきちんと聞いておいて、その解決策を提示しておくことが大事だと考えています。

<中嶋> なるほど。

<山腰> ただし、それを全顧客に対してやれるかというとリソース的に難しい部分があるので、ヘルススコアを確認しながらどこに注力するかを決めた上でアプローチする必要があると考えています。

<中嶋> たしかに、そうですね。

<鈴木> 私も皆さんと同様の考えです。懸念を可能な限り早めに拾っておいて、経営レイヤーの方に対して当社の経営レイヤーから連絡をして頂いて、「どうやって進めていくんですか、このままでは目指していた目標を得られませんよ」ということを話して頂いて、場合によっては先方の担当を変えて頂いた上で一緒に進めていく形を取ります。

<中嶋> お客様の担当を変えて頂くこともあるのですね。それはお願いするのですか?

<鈴木> いえ、我々から「変えてくれ」とは言わないですね。ただ、「今後、どうするのですか」とお伺いしている中で、本気で進めていくためには変わるという手段を選択されることもあります。

<中嶋> 強烈ですね。

<鈴木> やはり本気で成果を目指していくために、ふさわしい推進責任者ではなかったという会社の判断があって、結果的に推進責任者の方を変えて頂くこともありますね。

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<中嶋> なるほど、それはやはりトップアプローチをされる中で出てくる結論ですかね。

<鈴木> そうですね、完全にトップアプローチです。

<山腰> どういった情報を持っていくのでしょうか。担当変えてくれという話をするためには。

<鈴木> 担当が変わるのはあくまでも結果的に変わるという感じではありますが、やはり「御社はどこを目指しているのでしたっけ」というところから話を進めていきます。そして「元々はこういうことを目指していたと思いますが、今はこういう理由で進んでいないと認識しています。御社ではどのように認識されていますか」というようなことを対話していきます。その上で、改めて「ここを目指していく必要がありますね」という合意が得られれば、現在ネックになっている原因を解消していくために、結果として推進責任者が変わることがありますね。

<山腰> ということはやはり、導入前のタイミングで理想像をお互いにFIXさせておいて、上手くいかなかったときに「ギャップが生まれていますよ」という話ができるようにしておくことが大事ですね。

<鈴木> そうですね。

 ただ、振り返りのタイミングで新しいビジョンを持っていくのも全然ありだと思います。例えば1年前に導入をしていたという場合に、その時と今とでは世の中で求められていることも違うと思うので、今の時流に合ったビジョンを新しくぶつけていくというのも全然ありだと思います。

<山腰> なるほど、ありがとうございます。

<中嶋> もっともっとお話を続けたいところでありますが、予定していた終了時刻になってしまいましたので、本日の議論はここまでとさせて頂きます。また次回に他のテーマを含めて議論して行きましょう。本日はありがとうございました。

今回の記事は以上です。最後までお読み頂きありがとうございました。

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改めまして、最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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