ひと夏のかき氷屋をやります 2 アヌーシュカシャンカール: チャイについて
こおり茶屋 朔 saku
伊豆市修善寺温泉場、レンタルスペースmost 8092にてひと夏のかき氷屋をやることになりました。
伊豆近辺だけでなく、京都や横浜まで(用事のついでだけど)かき氷屋に行って研究し、日々かき氷の練習をしたり打ち合わせをしたりしています。
ここではかき氷屋をやるまでの話やそれにまつわることを思いつくままに文章にしてみます。よかったら見て、直接お店に来てくれたら嬉しいこと限りないです。
アヌーシュカシャンカール。
いい音。名前はその人をかたどる固有の、唯一の音だと考えると、美しい名前はアートであり、孤独で、独特の光を放っているように感じる。
太郎とか、そういう使い込まれて多くの人が共有している名前は、地球に根ざしたつながり合う人間という生命体について考えさせられる。
雨で山仕事が休みになったけど、かき氷屋の準備は進める必要があるので今まで揃えた材料をメニュー担当の後藤さんに渡すために、昼の2時に勇太の家で待ち合わせることにした。
僕はそれまでに仕上げる書類をやって、noteを書いて、チェロとギターで遊んだりしていた。
チェロはヤフオクで安く手に入れたんだけどネックが折れていて、指板でなんとか支えている状態だったけど、それでもうまく弦が指板から程よい距離になるように木の枝を突っ張り棒にした。楽器で遊んでいるとイメージする音に手が反応してくれるようになってくる。買って半年のチェロも、段々と手がイメージする音を自動的に鳴らしてくれるようになってきて、正直とても下手だけど弾いていて楽しい。
12時になっていたので急いでしたくをして車に急いだ。
着いてみるとアンディと勇太がいて、僕が預けていたジャンベで遊んでいる。
「めっちゃいいね、だけどチューニングのロープを巻いてないから音が低いよ。
たいしチューニングのやり方わかる?」
アンディがジャンベを触りながら聞いてきた。僕はわからないと答えると、アンディは最近登った富士山の話をしながら手慣れた手つきでチューニングのためにロープを編み始めた。
これは1番basicなチューニングのしかた。アンディの知識は僕にない文化と経験に根付いていていつも感心するばっかりだ。
まだ試作を作るための材料が揃わなかったので、いくつかの打ち合わせをしてアンディの家でチャイの分量や作り方を確認することになった。
アンディの家は異国の香りがする。
建物自体は農家の家で、作りも変わったところはないんだけど、香りが違うだけで自分がどこの国にいるのかわからなくなる。
僕がチャイの作り方をiPadで動画に収めている横で、勇太と後藤さんはとなりの部屋でくつろぎながら、手巻きタバコをふかしている。
アンディは僕に作り方を説明しながらチャイをささっと作っていく。
「ここで目を離すとすぐファーってなっちゃうから。」
作ったチャイは計りながら作ったのでいつもよりもミルクが多くてリッチでクリーミーだ。
た「今回のは結構クリーミーだね」
ア「いつもだったらぴったりわかる。今日は計ったから」
ア「スパイスは水で出す。ミルク入れたあとだと美味しくない」
後「カレーと一緒だね」
チャイを飲みながら、おもむろにアンディが動画を流し始める。
アヌーシュカシャンカール。
ノラジョーンズの異母姉妹で、シタールのレジェンドの娘。
inside me.
室内にタバコの煙が充満する。
フラメンコとインドの音楽が混ざった心地いい音楽が流れながら、時折誰かがジャンベを叩く。
ラチョ・ドロームは見るべきだよ。ジプシーによってフラメンコとインドは繋がっている。
煙で白んだ部屋で、アヌーシュカシャンカールのシタールの音が鳴り響く中、チャイを飲みながら他愛のない話はダラダラと続いた。