デザインコンペでアイデアが被る問題
こんにちは。
プロダクトデザイナーの三島です。
今日はデザインコンペの話をしたいと思います。学生のころから色々なコンペには参加し入賞させて頂いているのですが、コンペには良い面も悪い面もあります。良い面もたくさんあるのですが、今回ちょっと取り上げたい話題があるので先にこのことについて記事を書きます。
コンペに参加している皆さんの中には、こんな経験はありませんか?
・過去に落選したアイデアが今年入選している。
・今年自分が出したものと似たデザインが入選している。
・既に発表しているデザインと似ているものが入選している。
コンペでは、ざらにあります。
コンペの特性上、発想や内容が似通っている提案が出るのは仕方がないです。コンペにも依りますが、似ているアイデアは全て却下される場合やその中で一番優れているものが選ばれる場合があります。
今回はそのことについて、自分の件を例に掘り下げて考えてみます。
①最初に
まず、最初にコンペは似たようなコンセプトがたくさん応募されます。なので、どっちが良いか悪いかという話をしたいのではなく、仮に同じデザイン・コンセプトだった場合、どうすれば良いかな?という話をします。
通常ですが、基本的には落選した側は泣き寝入りしかありません。それ以外の方法を模索するお話です。
自分も毎年かなりコンペには参加しているので、この似ているケースはめっちゃあることなんですが、今回は問題提起も兼ねて自分の例に3つの理由から取り上げてみました。
・今現在、商品化を進めている
・過去に落選したほぼ同じアイデアが今年入選している
・今後同じようなことが起きた時のために、対処を模索する
②コトの発端
まず自分の件について、最初の成り行きからお話します。
話は昨年の2018年のTOKYO MIDTOWN AWARD 2018に参加した時に戻ります。MIDTOWN AWARDは参加数は1000を超える大きいコンペで、デザイン業界ではかなり有名です。
そこに毎年自分も出しているのですが、昨年出した作品「ツギテペン」に焦点を当てます。実際に応募したときの書類は、こんな感じでした。(CMYKなので色が若干おかしいですが、)
コンセプトをまとめると、
・継手+鉛筆
・最後まで短くなっても使えるという機能性
・組木を身近にするというテーマ
拙い感じがあるかと思いますが、このコンペに出す時は一瞬でアイデアが伝えるために、最終審査のために試作でギャップを見せるためなどの理由で、分かりやすいビジュアルにしています。
このデザイン画では、腰かけ蟻継ぎ継手を用いていますが、他の継手や仕口を用いて、日本伝統の木工技術を知るきっかけにもなって欲しいと考えていました。
結果としては落選でした。
しかし、自分としてはこのデザインが好きで、日本伝統の木工技術をもっと身近にする文房具として自主的に商品化を進めようと考えました。ちなみにこのアイデアの元が一番最初に出たのは、2018年1月31日と記録されています。
③商品化の準備
落選が分かった昨年の10月頃から、ツギテペン(継手鉛筆)の商品化を進めることにしました。
ツギテペンだけでなく、せっかくなら日本伝統の木工技術「組木・仕口・継手」をもっと身近にする文房具ブランドを作ろうと考えました。
①○○継手をモチーフにした鉛筆
②○○仕口をモチーフにした○○
という感じに、現在複数のアイテムの試作を作り、商品化の準備を進めています。(他のものはまだ非公開で進めています。)
④似たアイデアが入選
その商品化のために準備を進めている最中に、今年2019年のTOKYO MIDTOWN AWARDの最終審査の結果が発表されました。
そして、その中に一つに「ツギテペン(継手鉛筆)」と似たデザインが入選しているのを見つけてしまいました。
参照元:https://www.tokyo-midtown.com/jp/award/result/2019/design.html
継木鉛筆
鉛筆木口に「組木」を使い、鉛筆同士を継ぐことで極限まで短くなっても使える鉛筆。組木とは、切り込みを入れた木材同士をつなぎ合わせ、立体に組んだり、材を延長することができる木造建築の技術。日本古来の技術を身近かつ実用的に触れることができればと思い、制作しました。
引用元:https://www.tokyo-midtown.com/jp/award/result/2019/design.html
こちらのコンセプトは
・組木+鉛筆という点
・最後まで短くなるまで使える点
・組木を身近にするという点
個人的には、だいぶ似てるなと思いますが、どうでしょうか?
これは運営側からの判断だと類似性は少ない。という判断になります。実際に似たようなアイデアや類似したアイデアが多いのがコンペだということになります。
ちなみに、今回入選したものは、見た感じ大阪城大手門の柱に使用されている継手かと思います。(名前がありません) こちらもかなり有名な継手で、自分のブランドでも他のデザインに用いております。ただこの継手は複雑なので、鉛筆には向いていないので私の方では採用していませんでした。
⑤対処法
対処法としては、以下のようなものがあります。
・出す前に、意匠権などを出願する
・結果が出た後に、問い合わせをする
・先に商品化をする
先に意匠権を出願する
今回、自分の方で意匠や特許、実用新案などの権利は申請していなかったので、同じようなモノを出せたときに法律的にはどうしようもありません。
ただ著作権は無方式主義と言われ、 創作された時点で何も申請を必要とせず著作権の発生を認めるという法律もあります。
ただ今回のモノに対して、後から著作権を主張するのは難しいようにも思えます。
どうしても真似されたくないアイデアは、先に意匠権などの権利を抑えたほうが良いかと思います。(費用が掛かりますが)
結果が出た後に、問い合わせをする
ミッドタウンアワードの運営の方に「似てませんか?」という問い合わせをしてみました。
「類似性の観点からは共通項は少ない」との返信があり、
「2018年から企画しデザインなので、このコンセプトのまま商品化を進めて良いですか?」という自分が返信をすると、
運営の方から「商品化の実現をお祈りしております。」と返事が来たので、何も問題なく商品化が出来そうです。
※運営から、noteの記事にしても良いとの許可を頂いています。
先に商品化をする
今回の自分の場合ですね。ただ自分の場合は先に発表をしており、既に商品化の準備を進めていたので、可能性があったのかもしれませんね。逆に向こうから訴えられるリスクや、製品化するためのお金のリスクがあるので、どうしても実現したい人はちゃんと確認して商品化することをお勧めします。
「コンペで自分が出したものと似たデザインが入選したときにどうしたらいいか」に対してのアンサーですが、
①まず問い合わせしてみる。
②先に商品化をするのはありだけど、リスクあり。
③どうしてもアイデアを真似されたくない人は、先に権利を押さえる!
そもそも誰も思いつかないようなアイデアを考えるのが良いかなとも思いますが、もし被ってしまった場合や被りそうな場合は参考にしてみて下さい。
⑥来年、商品化します!
ということで、最後に宣伝っぽくなりますが、ツギテペン(継手鉛筆)を含む、3つのプロダクトの試作を進めています。
来年、商品化に向けて、クラウドファンディングを行う予定です。日本伝統の木工技術「組木・仕口・継手」をもっと身近にする文房具ブランドの商品として、発表します。
①○○継手をモチーフにした鉛筆 ツギテペン(継手鉛筆)
②○○仕口をモチーフにした○○
③○○仕口をモチーフにした○○
自分のウェブサイトやツイッター、noteでも最新情報や経過を載せると思いますので、興味がある方はぜひ。
http://taiseimishima.com
https://twitter.com/taisei_pd
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