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我が秘、導きの月光よ2

 君は月光に見えたことがあるか?

 前回はARMORED CORE初作に置けるムーンライトソード、LS-99-MOONLIGHTについて私見を述べさせてもらった。

 今回はDemon's Souls(以下デモンズ)で皆さまにその姿を見せた月光、<月明かりの大剣>についてお話したいと思う。

月明かりを映す伝説の大剣
月光の騎士ビトーの名と供に広く知られる
現存する、数少ない神の啓示物のひとつ
青いクリスタルの刃はただ光にすぎず
故に盾などで防ぐことはできない

 月明かりの大剣はソウルシリーズに置ける初の月光であり、後々DARKSOULSシリーズに登場する<月光の大剣>、その雛型とも言える武器だ。キングスフィールドの後継作という側面を持っていたデモンズではその存在は特別フィーチャーされることはなかったが、その特異な能力は主に対人戦闘において大きな存在感を示したことは間違いない。

 デモンズに置ける月光は以後シリーズの月光の大剣とは大きく違う、一種の変わり種だ。Bloodborneを除くシリーズの月光の適正能力はいわゆる「魔法」である理力パラメータを参照しているが、デモンズの月光は信仰パラメータを参照している。故にこの武器を使用できるのは信仰のパラメータに大きくウェイトを置いた、所謂「アンバサ戦士」と言われる者達だった。

 彼らは高い信仰値から来る数多の回復奇跡、祝福された武器による自動回復能力を持つ体力系タンク職。しかしデモンズに置ける奇跡は他者を回復させることができないシステム的に発展途上の代物だった。(後のDARKSOULSシリーズに置ける信仰職のキャラクターは周囲を回復し遠距離攻撃もこなす高いサポート能力を持つ職へと進化した)それでも彼らは死亡時一定のHPを回復し死を免れる「一度きりの復活」、祝福された武器と合わせ、自身のHPを見る見る回復してゆく「再生」を用い、多くの攻撃を受けてなお生存し続ける、息の長い戦いができるキャラクターだ。

 しかし祝福武器は比較的攻撃力が伸びづらく、信仰武器には欠月武器(理力補正のMP自動回復派生)に対する月武器のような攻撃力特化の互換派生も存在しなかった。攻撃系魔術は「神の怒り」しか存在せず、故に彼らは「タフだが決め手に欠ける」タイプに分類される戦闘スタイルを持っていた。

 しかし月明かりの大剣はその欠点を補う高火力武器である。

 他の武器と違って物理属性攻撃力を持たず、魔法属性攻撃力に特化しており、さらに優秀な補正値を持つ事から高いダメージが期待でき(被ダメージ側の耐性にもよるが、このシリーズでは幾つかの属性を合計した上での高い攻撃力と単一属性による同等数値の攻撃力では後者の方が高いダメージを叩き出せることが多い)攻撃範囲と速度、消費スタミナのバランスの取れた大剣カテゴリということで、まさにアンバサ戦士の切り札とも言える武装だった。

 更に特筆すべきことに、この月明かりの大剣はこのゲームの対人戦において支配的であった「盾によるガード」を素通り、つまり完全貫通する特殊な効果を持っている。当時は物理、魔法両方のダメージを100%カットする<暗銀の盾>が多くのプレイヤーに愛用されていた現状を見るに、メタゲームを崩す武器として警戒されていたことは間違いないだろう。

 ただ、ビジュアル、性能共に優秀な武装であり愛用者も多かった月明かりの大剣には一つの大きな欠落が存在する。


 光波が出ないのだ。

 デモンズ当時、武器のモーションはカテゴリごとに固定であり、月明かりの大剣も他の大剣と同じモーションを取っていた。故に光波を放つという特殊なモージョンを実装できず、代わりとして貫通という特殊性を与えられるに至ったのではないか。私はそう考えている。(盾貫通能力を持つ武器はこれ以外に曲剣である<ブラインド>が存在する。これはいわゆる技量武器だが、所持者は神職の関係者だ)

 余談だがデモンズにおける各武器のモーションは海外からも史実に忠実として高い評価が与えられている。


 最後に、以降のソウルシリーズでは「魔術の祖たる古竜、白竜シースによる被造物」と言う明確な設定が存在し、入手方法もその関係者のソウルに密接に関係している<月光の大剣>に比べ、月明かりの大剣に関する設定はそのフレーバーテキストしかない。

 嘗て「月光の騎士」と呼ばれたビトーなる者の手にあった事、神の啓示物の一つとされている事。そして、多くの神職者とそれに関連するアイテムが数多く配置された<腐れ谷>にまたこの剣も存在した事。

 その程度の考察材料しかなく、その出自を推察することは困難を極める。

 しかし一つ。この世界における信仰の触媒、タリスマンが神の似姿であり、真実、その正体が一体何だったのか。

 そのあたりから、Demon's Soulsの世界における信仰の一端に踏み込む事ができるのかも知れない。

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