正義は母にあり
「ああー! 世界がパンクしてしまったァー! お前達が正義を振りかざすせいでェー!」
胡散臭い声でゲラゲラ笑う男を前に私が取った行動は、銃弾と言う『正義』をその頭蓋にぶち込んでやる事だった。もんどりうって床に叩きつけられた男を見て、余りのあっけなさに我ながら溜息が出る。
この仕事が自分に向いていないと気付いたのは初仕事のその日だった。
この仕事が物騒な物だと気付いたのも初仕事のその日だった。
だが私ももう三年この仕事を続けている。仕方ないだろう。無職が子を養えるほど世の中甘くない。
とりあえず早く帰らないと! ああ我が子よ泣いてないか。腹を空かせておもちゃでも食っちゃいまいか。先ほど転がした男の事などすっかり忘れて、踵を返して帰路に着く。
「上司の流す血より子供の流す涙の方が大事か」
らしく無い真顔で扉の前に立ちはだかった男の腹に向け、私は念入りに三発の『正義』をぶち込んだ。
【続く】