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ゼウドの服装について(1)

 <スペルズベイン・サガ>に登場するゼウド・シェルキロス・アンバーダイン(以下ゼウド)という男の服装について考えてみたいと思う。

 ゼウドの作中での立ち位置は主人公であるグリンザールのいわゆる相棒である。しかし彼もグリンザールに匹敵する数奇なバックボーンの持ち主であり、『灰都ロヅメイグの夜』などの時系列的には初期の作品で活躍していく。

 <厄災の中心>たるグリンザールを中心に回って行く<スペルズ・ベイン・サガ>ではあるが、劇中ではグリンザール以外の登場人物にもスポットが当てられることがままあり(この辺は忍殺とよく似ているが、忍殺の「物語の進行をゲストキャラが担い、最後にニンジャスレイヤーが現れニンジャを殺す」タイプでなく「現地の問題をグリンザールらと協力、あるいは別の立ち位置から解決しようとするキャラクター」という形でスポットが当てられることが多い気がする)、現在公開されている初期の時系列の作品においてゼウドはグリンザールに匹敵する存在感を放つもう一人の主人公である。

 グリンザールとゼウドとの出会いは『灰都ロヅメイグの夜 5:ゼウドの見る夢』によれば少なくとも二年以内の過去に遡る。

無慈悲なるエターナル・ダスクの荒野をゆく彷徨人にして、灰都ロヅメイグの雑踏の中にも生き、時に血みどろの修羅と怪奇の渦の中にも生き、だが決して何者にも賞賛を与えられることはない、暗い英雄の道のりを歩む二人の男だった。彼らは決して自らの信ずる運命と信念と美徳を失っては居なかったし、この世界で多くのものが辿る酩酊と停滞と退廃の道を進むこともなく、ゆえに堕落しても居なかった。しかし、これまで数多くの危難と、奇怪にして目眩むような冒険を潜り抜けてきた勇敢にして抜け目のない二人の放浪者にしては、此度は何事か様子が異なっているようではあるまいか……。
(『灰都ロヅメイグの夜 2:我らが故郷』より抜粋。無料試し読み分より)

 そこにどういった邂逅があったかは俺の知る所ではないが、『2:我らが故郷』における上記の抜粋には『数多くの危難と、奇怪にして目眩むような冒険を潜り抜けてきた』とあり、彼らは幾度となく恐るべき困難を相手に立ち回り、その都度その彷徨い人としての知識と実力(と、多くの幸運)によって危機を乗り越えてきたのであろうことがわかる。

 ただかなりの危機を乗り越えてきたと思われるものの二人の考え方には明らかな差異があり、特にグリンザールは<魔法>に対して確かな怒りと殺意を持って行動しているのに対し、ゼウドは<魔法>などの神秘に対して「そんなものはお前の妄想、夢幻。ありえない」とそもそもその存在に否定的なスタンスを一貫して貫き続けている。

 どうにも『銀貨の行方』までの(エトゥバは全編が公開されていないのでカウントせず)ゼウドは直接的に魔法に関わったことは無く、様々な危機に置いて出会っていたであろう<魔法>との対峙においてもグリンザールが独力で、あるいはゼウドもそれをそうとは知らずのうちに対処してきたと思われる。

 ちなみにゼウドの言によれば、彼はグリンザールよりも1つ年上の26歳だ。

 話が逸れた。ゼウドの服装の話をしよう。

 ゼウドはグリンザール(やそのほかのキャラクタ)に比べてその服装や装備構成が非常に詳しく語られているキャラである。髪、瞳の色から指輪に至るまで(明示されてないのは靴ぐらいでは?)ここまで詳しく明確に提示されているキャラクタは俺は他にあまり知らない。「それならイマジナリ簡単じゃない?」と思った頃が俺にもあったが実際ふたを開いてみるとそこまで簡単な話ではなかった。

 ゼウドは「何を装備しているか」は非常に詳細に書いてあるが「それがどういう装備なのか」についてはほぼ書いて無いのである。あっても品名くらいのものだ。

 それではゼウドの外見描写をまとめて…まとめていきます。

 一番最初に書いたゼウドである。これはアップロードしたか覚えてない。した気もする。この地点で自分が把握していたのは『ぱさりとした灰色の髪』『右隻眼、眼帯』『髪の各所を乱雑に革紐でまとめる』『吟遊詩人』『美丈夫』『無精髭』といった具合だった。頭、顔の描写に関してはあまり特筆するべきところはないように思える。この地点で俺が気をつけていたのは少し眠たげな眼、ニヤリと擬音の付きそうな表情、あとグリンジに対して年上アッピールを繰り返していたので少々年齢が上がった気もする。

 その後『資料集など』が公開されたりロヅメイグファンの各氏によりゼウドの外見描写が発掘される(この時瞳の色が灰色ということも知った)につれて俺は大きく頭を抱えることになった。上述の具体的情報の少なさゆえだ。なので俺は珍しく詳しい描写のあった『眼帯に刺繍されたアンバーダイン家紋』に挑もうとした。完全な選択ミスだった。

 有料noteであるので引用は避けるが、その詳細は『灰都ロヅメイグの夜 5:ゼウドの見る夢』で170文字以上に渡って説明されている。

 軽く説明しようと思ったけどちゃんと説明すると本編のコピペになるし購入者の方くらいしか読んでないかなと思ったのでやめておく。

 ともかくその文様の説明は滅茶苦茶詳しい上にあっちを立てればこちらが立たずと取り捨て選択を迫られる部分もあった。しかし何とか形にしようと苦心して作ったのがこれだ。

 竜と塔を重点して考えたが串刺し竜にはなっていない。稲妻も無理やり感が大きく思える。俺のイマジナリの限界と言えるだろう。今ある案のいくつかを見てみてもこれが一番マシだと思える。研鑽が必要だ。

失敗作たち。

 次に俺を悩ませたのはグリンジの時と同じく、ロードトック式外套、及び巻革鎧だ。ロードトック式外套だが、これは本編にある程度描写があった。主に『各所に配置された鎖金具によって音が出る』『ゼウドは革鎧や外套に様々な雑嚢、小道具を装備している』この2つを俺は主に重点してイマジナリした。

 まずゼウドはグリンザールよりも遥かに装備品が多いが吟遊詩人であり、あまり戦闘的には見えない外套ではないかと考え、グリンザールのそれよりも一見特別な工夫は少なくする。面と向かった時即警戒されるような服装ではゼウドの<詩人の眼>も通用しにくいのではと考えたのと、単純にメリットがないからだ。(可能な限り他人を自身の運命に巻き込むまいとするグリンジならばメリットになりうるかもしれない)

 次に<永延の黄昏>(エターナル・ダスク)の荒野を流離うのに適した外套ではないかと思案し、荒野…荒野といえばメキシコだが、俺は様々な知見から直観的に寒暖差、荒野特有の突風(これは『隻腕剣士と隻眼詩人』にも描写がある)、地底からの寒気のあるロヅメイグでも着こなせる全天候性を重視、特に首回りの布を増量した。それと発掘品や小物等を吟味する際に地べたに置くわけにも行かないと思うので、シートのように地面に敷いたりと行った用法にも使われたのではないかと考えた。

 さらに要素としてあった鎖金具を実装するためにいくつかの部位に分解(ここはイマジナリグリンザールの外套を参考にした)、大荷物のゼウドに適するような工夫を施して一応のイマジナリーを完成させた。これがそうだ。

 見にくいかもしれないが、こんな感じだ。左右それぞれの外套と首・背中部分の外套に部品を分け、それを鎖金具で接続するとともに隙間から革帯(ベルト)を外側に出すことでナーバルドと言った目立つ荷物を効率よく装備できるようにと考えた。この外套ではゼイローム式連装石弓は左右外套部分に隠れるように考えてある。

 次に手をつけたのはゼゴー巻革鎧だが、こいつは本当に情報が無かった気がする。そもそも名前からしてゼゴーだったりゴゼーだったり(言われて気づいた)で安定しない。なので100%イマジナリだ。

 一応『ロードトック式巻革鎧の作り方』に倣い革帯の集合体のような服装にした。だがそれだとグリンザールのそれと被るため前面に革の板めいた装甲を重ね強度を補強した。ゼウドは両手に石弓を構え射撃に徹する戦闘スタイルなので相手と向き合う動きには合っていると思う。

 それと劇中、酒場での演奏中などでも常に革鎧を着用しているため蛇腹めいて体を曲げやすい構造を想定。前面部分の革もそこまで体の動きを妨害するものではないと俺は考えている。

 着脱方法だがロードトック式のような金具による装着型ではなく通常の服のように脱ぐことができるようタンクトップめいた形状にした。これはとても重要だ。何故ならもし女性といいアトモスフィアになった際いちいち革鎧を手順通り外していたらおそらく相手が冷めるからだ。これはゼウドにとっては死活問題のはずだろう、多分。

 以上の要素を踏まえたうえで現在一番ちゃんと作ってあるゼウドはこれだ。外套の金具と隙間とかはこの絵がもっともちゃんとしている。ただゼゴー巻革鎧やロードトック式外套について描いてまとめたのは本当にこの記事を書きながらのため、次ゼウドを描くときにはある程度の変化を伴うものと思われる。

 現在しっかり考えてあるのはこのくらいだ。その他『東方弦楽器ナーバルド』や『ゼイローム式連装石弓』については思いついたら描く。まぁこの辺りが個人的には一番ヤバイと思うのだが。

 とりあえず今回はここまで。


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