夏の魔法
3日前の夜、1人の友人が声を上げた。
海に行こう
僕を含めた数名が名乗りを上げ、バスに乗って海水浴場へ行くことになった。
その翌日、これ見よがしに晴れ渡る空の下で、僕たちは海を、そして「夏」を満喫した。
発起人の友人は、4回生の夏に海に行けないのは万死に値すると豪語していたが、まさしくその通りであったと言うほか無い。
ただ1つ、砂浜で水着ギャルと仲良くなってキャッキャウフフしたいという僕の歪み汚れた願望は、ついには成し遂げられなかった。
先日のプールの時もそうだが、地方の海水浴場やプール施設には家族連れしかいない。
僕が追い求めるピチピチの水着ギャルはどこにもいない。
とは言え、仮に水着ギャルがいたとして、コミュ障陰キャオタクヤニカス運動不足おじさんの僕が、声を掛けて仲良くなってキャッキャウフフすることなど、限りなく不可能に近いことはもはや言うまでもない。
僕の「夏」は一体どこへ行ってしまったのだろう。
僕にだって夏の魔法ぐらい使えたっていいじゃないか。
いや、そうやって僕が、悪い意味で夏の魔法的なもので舞い上がっていたのかもしれない。
どうやら僕は、大学生最後の「夏」にこんな怖すぎるオチをつけてしまったようだ。
偶然と夏の魔法なんかに頼るもんじゃないと心に刻んだ大学4回生の夏。