現代版桃太郎 ー命あるところ正義の雄叫びありー
-シリーズ 趣味を語る #2-
2019年10月14日、東映特撮YouTubeチャンネルで「百獣戦隊ガオレンジャー」の毎週2話配信が始まった。ブログの方でも仮面ライダーを特撮の話題としてばかりだが、私の特撮沼の原点は、実は仮面ライダーではなく、この「百獣戦隊ガオレンジャー」である。
あの頃は、今では考えられないほど多く登場する巨大ロボットたちに心を躍らせていたものだが、成人した今改めて見直すと、また違った視点から見れて非常に面白い。仮面ライダーにしても、戦隊モノにしても、昔観た作品を見直すとまた別の角度から新鮮に観ることができる。これが東映特撮作品の1つの醍醐味であろう。
改めて第1話と第2話を観ながら、作品のモデルの1つが「桃太郎」だということに気づく。オルグと呼ばれる怪人の襲撃に逃げ惑う市民は、オルグを「鬼だー!!」と指をさす。対峙するガオレンジャーたちは、パワーアニマルと呼ばれる動物の姿を模した精霊たちの力を借りて戦う。そして、必殺技には破邪百獣剣という大剣を使う(桃太郎は大剣ではなく普通の日本刀だが)。その時のセリフ(技名か?)も「邪鬼退散」。ほら、鬼退治だ。また、オルグの側においても、頭に生える角の本数がそのステータスの指標となっている。やはりそのモデルは角を生やした鬼であると言わざるを得ない。
だが、“おとぎ話の桃太郎” との違いも当然存在する。
まずは人数。“現代版桃太郎” には桃太郎が5(+1)人もいて、色とりどり。そして、その中には桃色(ガオピンク)を存在させないのがまた粋な演出。たまたまなのか意識的なものかはわからないが、粋である。というか、桃太郎は常に戦闘服を身にまとっているから、そもそも変身しないのか。まぁ細かいところを挙げ出すときりがないので、ほどほどにしよう。
次に、犬・猿・キジの登場について。これは正直微妙なので、ここでは判断を避けたい。ただ、事実としては、オオカミ・ゴリラ・ワシ・ハヤブサ・コンドルのような同系統の動物たちが登場することに触れておく。
そして、桃太郎たちは動物の力を借りると言ったが、それは桃太郎側からきびだんごを渡してお願いする訳では無い。むしろ、動物側から指名してくる。言うなれば、パワーアニマルによる「ドラフト会議」が行われるのである。そして、交渉が成立すると桃太郎たちの手からきびだんご(宝珠)が出てきて、動物たちからプレゼントされる。
また、鬼退治のために鬼ヶ島へ行くことはなく、むしろ鬼からおいでくださる(というか襲撃しにくるところを迎え撃っているだけ)。
最後に、鬼退治をしても財宝はもらえない。これがある意味1番重要な違いかもしれない。やはり働きに見合う報酬はあって然るべき。現代の桃太郎たちはどのようにしてモチベーションを維持していくのか、今後その点にも注目してみよう。
“おとぎ話の桃太郎” を、同じ子ども向けの話という尺度の上で現代に当てはめると、どうやらこうなるらしい。私の記憶が正しければ、今後はどんどん “おとぎ話の桃太郎” からは遠ざかるはず。“現代版桃太郎” が今後どのように展開するのか、これから毎週楽しみにしていきたい。