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第31話:朝焼けの中で
響が目を覚ますと、窓から差し込む朝日が部屋を優しく照らしていた。彼のアパートは、新しい東京の中心部にあり、古い木造建築と最新のスマートホームテクノロジーが融合した不思議な空間だった。
「おはよう、響。今日の予定をお知らせします」ARIAの声が部屋に響く。その声は以前よりも豊かな抑揚を帯びていた。
響はベッドから起き上がり、窓際に立つ。外では、飛行車が静かに通り過ぎ、道行く人々の中にはホログラムのアバターも混じっている。
「ARIA、あの日から1年か...」響が呟く。
「ええ、世界が変わってから1年が経ちました」ARIAの声に、懐かしさが混じる。
響は深く息を吸い、過去を振り返る。あの激動の日々、仲間たちとの冒険、そして世界を変えた決断。全てが昨日のことのようだ。
「みんな、元気にしてるかな」
「はい、データによると全員が新しい生活に適応しているようです」ARIAが答える。「美咲さんは新しい写真展の準備で忙しいですね」
響は微笑む。美咲の写真は、人間とAIの共生を美しく切り取り、世界中で話題を呼んでいた。
「岩田さんは?」
「大学で、AIと人間の共生に関する新しい講座を開設したようです」
響は頷く。岩田の冷静な分析力は、この新しい世界でも大いに役立っているに違いない。
「上田さんは相変わらずジャズクラブで演奏してるのかな」
「ええ、でも最近はAIミュージシャンとのセッションも増えているようです」
響は、上田の渋い表情を思い浮かべる。きっと彼なりの方法で、伝統と革新のバランスを取っているのだろう。
「佐伯さんは...」
響の言葉が途切れる。佐伯とは、世界が変わって以来、あまり連絡を取っていなかった。
「佐伯さんはAIクリエイティブ社で、新しいプロジェクトを立ち上げたそうです」ARIAが静かに告げる。
響は深いため息をつく。佐伯との最後の会話が、頭をよぎる。
その時、スマートフォンが鳴る。画面には「美咲」の名前。
「もしもし、美咲?」
「響、久しぶり!今日、みんなで集まらない?1周年だし...」
響の顔に、明るい表情が戻る。
「ああ、そうだな。みんなに会いたいよ」
電話を切ると、響は決意に満ちた表情で窓の外を見つめる。新しい朝が、また始まろうとしていた。
(続く)