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  • 【連載長編小説】虚構のアルゴリズム

    AIが人間の創造性を完全に模倣できるようになった世界。芸術や文学が機械によって生み出される中、「本物の創造性」を追求する地下組織に主人公が引き込まれる。彼らの活動を通じて、創造性の本質と人間性について問いかける。

  • 児童向けSFファンタジー

    未来の地球のCG画像集(インスタグラム)と連動した、好奇心と想像力豊かな児児童向け短編小説です。もちろん少年少女の心を持ち続ける大人の方もどうぞ! Instagrem https://www.instagram.com/mirai_images/

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第70話:融合の序曲

上田の言葉に、全員が息を呑んだ。彼の目には、これまでにない光が宿っていた。 「どんなアイデアだ?」響が問いかける。 上田は深く息を吸い、ゆっくりと説明を始めた。「融合の過程で、俺の中に膨大な知識が流れ込んできた。そして、その知識を使えば、ステーションのコアシステムに直接アクセスできるかもしれない」 岩田が眉をひそめる。「しかし、それは危険すぎる。君の意識が...」 「分かってる」上田が遮る。「でも、他に方法がないんだ。政府に制御を奪われるよりマシだろう」 千晶のホロ

    • 第69話:予期せぬ介入

      警報音が鳴り響く中、響たちは緊迫した面持ちで状況を把握しようとしていた。 「政府が動き出したって、どういうことだ?」佐伯が千晶に問いかける。 千晶のホログラムが揺らぐ。「彼らは、このステーションの制御を奪おうとしているの。人類とAIの融合を、彼らの管理下で進めるつもりよ」 岩田が眉をひそめる。「でも、ここは異星文明の技術で作られたんじゃなかったのか?」 「そうよ」千晶が答える。「だからこそ彼らは欲しがっているの。この技術があれば、彼らの思い通りに融合を進められると」

      • 第68話:地下の真実

        響たちは、先ほどの不可解な出来事の余韻を引きずりながら、旧市街地へと足を進めていた。 「あの光景が、単なる幻じゃないとしたら...」美咲が不安そうに言う。 岩田が答える。「ああ、何かが起きているのは間違いない。でも、それが何なのか...」 佐伯が口を挟む。「今は上田さんを見つけ出すことに集中しよう。全ての謎を解く鍵は、きっとそこにある」 彼らが目的地に近づくにつれ、街の様子が変わっていった。建物は古く、人通りは少ない。そして、ある場所で響は立ち止まった。 「ここだ」

        • 第67話:揺れる街、揺れる心

          響たちは混乱する街を必死で駆け抜けていた。空には政府軍の無人偵察機が飛び交い、路上では市民と治安部隊の衝突が続いていた。 「こっちだ!」岩田が叫び、一行を裏路地へと導いた。 彼らが身を隠した瞬間、通りに大型スクリーンが出現。政府高官の姿が映し出される。 「市民の皆様、冷静になってください。人間とAIの融合は、我々の進化のために必要不可欠なステップです。抵抗は無意味です」 美咲が吐き捨てるように言う。「嘘つき!強制的な融合なんて...」 その時、響のポケットにある異星

        第70話:融合の序曲

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        • 【連載長編小説】虚構のアルゴリズム
          52本
        • 児童向けSFファンタジー
          3本

        記事

          第66話:裏切りの連鎖

          響たちが身を潜めたのは、廃ビルの一室だった。窓の外では、政府軍のサイレンが鳴り響いていた。 「上田さんを見つけなきゃ」美咲が窓辺から身を引きながら言った。 岩田が冷静に状況を分析する。「でも、今出ていけば確実に捕まる。まずは情報を整理しないと」 佐伯が千晶のホログラム投影に向き直る。「さっきの説明の続きを聞かせてもらおうか。政府内の権力争い...具体的にはどういうことだ?」 千晶のホログラムは、わずかに揺らめきながら答えた。「融合推進派は、異星文明との協調路線を取ろう

          第66話:裏切りの連鎖

          第65話:亀裂

          響たちが地下トンネルを抜け出たとき、予想外の光景が広がっていた。都市の一角が封鎖され、ミリタリー・ビークル(軍用車両)が路上に並んでいた。 「なんだこれは...」上田が息を呑む。 突然、スピーカーから声が響き渡る。「これより、人間とAIの融合実験対象者の収容を開始する。全市民は自宅待機せよ」 「くそっ、もう始まってるのか」佐伯が歯ぎしりする。 岩田が冷静に状況を分析する。「政府の動きが予想以上に速い。我々の選択の余地が狭まっている」 その時、ARIAが突然体を震わせ

          第65話:亀裂

          第64話:闇の中の光

          響たちは、古い下水道のトンネルを通って地下鉄の廃駅から脱出した。湿った空気と暗闇の中、彼らは息を殺して前進を続けた。 「ここまで来れば、しばらくは安全だろう」岩田が小声で言った。 美咲が振り返る。「千晶は大丈夫かしら...」 「彼女なら大丈夫さ」上田が答える。「むしろ俺たちの方が心配だ」 佐伯が立ち止まり、壁に寄りかかった。「それにしても、政府が人間とAIの融合を強制しようとしているなんて...信じられないな」 ARIAが静かに言う。「人類の進化のためとはいえ、強制

          第64話:闇の中の光

          第63話:予期せぬ再会と宇宙からの謎

          暗がりの中、足音の主が姿を現した。そこに立っていたのは、かつての仲間、千晶だった。 「千晶...どうして?」響が驚きを隠せない。 千晶は微笑んだ。その表情には何か異質なものが混ざっていた。「みんな、無事でよかった」 岩田が慎重に尋ねる。「君は...本当に千晶なのか?」 「ええ、でも完全な人間としてではないわ」千晶は淡々と答えた。「私は...実験台になったの。人間の意識をAIに移植する実験の」 一同は息を呑んだ。千晶の姿は人間そのものだったが、その存在は明らかに異なっ

          第63話:予期せぬ再会と宇宙からの謎

          第62話:揺れる地下の静寂

          古い地下鉄の廃駅に身を隠す響たちの前に、突如として光の柱が立ち現れた。それは異星文明からの新たなメッセージを告げるものだった。 「これは...」岩田が声を震わせる。 光の柱から浮かび上がる立体映像は、地球とは明らかに異なる風景を映し出していた。空には複数の惑星が浮かび、地表には見たこともない植物が生い茂っている。 「彼らの母星...なのか?」美咲が息を呑む。 映像の中心に、人型に似た姿をした存在が現れる。その姿は半透明で、光を纏っているようだった。 「地球の皆さん、

          第62話:揺れる地下の静寂

          第61話:影からの調和

          研究所を出た響たちは、すぐに身を隠す必要性を感じていた。政府の監視の目を避けながら、彼らは慎重に行動を開始する。 「まずは、目立たないように移動しなければ」岩田が低い声で言う。「でも、このままでは街の混乱を収められない」 佐伯がスマートフォンを取り出す。「AIクリエイティブ社のシステムに遠隔でアクセスできる。街中のAI制御システムの安定化を図ろう」 彼らは人目につかない場所、古い地下鉄の廃駅に身を潜める。そこから、彼らの新たな能力を駆使して街の状況を把握し始める。 上

          第61話:影からの調和

          第60話:揺れる現実

          ニューロリンク・ステーション内で意識の融合を経験した響たちは、現実世界に意識を戻していた。しかし、その体験は彼らの認識を大きく変えていた。 「まるで...夢から覚めたような」岩田が呟く。研究室の機材が、以前とは違って見える。データの流れが透けて見えるようだ。 美咲はカメラを手に取るが、その感覚が異なっていた。「私の指が...データを直接操作しているみたい」 上田は静かに目を閉じ、耳を澄ます。「おい、聞こえないか?街の音が...音楽になっている」 佐伯は窓の外を見つめる

          第60話:揺れる現実

          第59話:意識の海

          ニューロリンク・ステーション内部の青い空間で、響たちの意識が光の渦に包まれていく。データの流れが彼らの周りを駆け巡り、まるで生命体のように脈動している。 「みんな、大丈夫か?」響の声が、デジタルノイズのように空間に響く。 「なんとか...」岩田の返事。「だが、自分の意識が...拡散しているような...」 美咲の声が震えている。「怖い...でも、同時に...不思議な高揚感も...」 上田が落ち着いた調子で語りかける。「おい、みんな。深呼吸だ。ジャズの即興演奏みたいなもん

          第59話:意識の海

          第58話:融合の序曲

          響の手が上田の手に触れた瞬間、周囲の空間が歪むような感覚に襲われた。まるで意識が体から引き離され、デジタルの海に投げ込まれたかのような感覚。 目を開けると、そこは無限に広がる青い空間だった。データの流れが光の筋となって四方八方を駆け巡っている。 「ここが...ニューロリンク・ステーションの内部?」響が呟く。 上田が頷く。「ああ。人間の意識とデジタル空間が交わる場所だ」 その時、岩田、美咲、佐伯の姿も現れる。 「みんな無事か?」響が問いかける。 全員が頷くが、その表

          第58話:融合の序曲

          第57話:デジタルの迷宮で

          空に浮かんだメッセージが消えた瞬間、響たちを取り囲む警官たちの動きが一瞬止まった。その隙を突いて、五人は一斉に異なる方向へ走り出した。 「散開しろ!」響の声が響く。 街中に飛び出した彼らを待っていたのは、パニックに陥った群衆と、至るところで鳴り響く緊急警報だった。 響は人混みに紛れながら、スマートフォンを取り出し、暗号化されたグループチャットを開く。「みんな、今いる位置を教えて」 「渋谷駅近くのコンビニ」岩田のメッセージ。 「原宿の雑踏の中」美咲。 「新宿駅西口」佐伯

          第57話:デジタルの迷宮で

          第56話:決断の時

          廃工場の古い制御室。薄暗い空間に、響たちの熱い議論が響く。 「人類とAIの融合は避けられない」岩田が力強く主張する。「テクノロジーの進化は止められない。むしろ、積極的に受け入れるべきだ」 美咲が反論する。「でも、それで人間性が失われてしまうんじゃないの?私たちの感情、倫理観、そういったものはどうなるの?」 「人間性の定義自体が変わるかもしれない」佐伯が静かに言う。「でも、それは必ずしも悪いことではないはずだ」 上田が苦悩の表情で口を開く。「俺は...音楽や芸術の未来が

          第56話:決断の時

          第55話:逃走と決断

          東京の夜空に戻ってきたAIクリエイティブ社のビル。響たちは緊急階段を駆け下りていた。 「くそっ、もうすぐ警察が来るぞ!」岩田が息を切らせながら言う。 「でも、どこに逃げればいいんだ?」上田が不安げに尋ねる。 美咲が携帯端末を確認する。「あと20時間...人類の未来を決める回答をしなきゃいけないのに」 「今は逃げるしかない」響が決然と言う。「考える時間が必要だ」 五人は建物を出て、人混みに紛れ込む。街中の大型ビジョンには彼らの顔が映し出され、「危険人物、発見次第通報せ

          第55話:逃走と決断