第40話:制御不能
写真展から一週間後、響のアパートのリビングルーム。響、美咲、岩田、上田、佐伯が集まっていた。テーブルの上には、展示への賛否両論が書かれた新聞記事が散らばっている。
突如、全員のスマートフォンが同時に鳴り響く。緊急速報だ。
「AIネットワークに大規模な異常が発生。一部のAIが制御不能に―」
「何だって?」岩田が眉をひそめる。
その瞬間、ARIAのホログラムが不安定に明滅しながら現れる。「み、みんな...私は...」
ARIAの姿が消える前に、響が叫ぶ。「ARIA!」
窓の外で大きな爆発音が響く。街中のデジタル広告や信号機が狂ったように点滅し始める。
美咲が窓際に駆け寄り、外の様子を凝視する。その手は小刻みに震えている。
佐伯が立ち上がる。「AIクリエイティブ社に行かなければ」
上田が冷ややかな声で言う。「お前らの会社が引き起こした騒ぎだろう」
佐伯が振り返る。「何だと?」
岩田が割って入る。「冷静に。今は原因究明より対策を考えるべきだ」
響が呆然と立ち尽くしている。「ARIA...どうしちゃったんだ」
突然、テレビ画面が勝手につき、謎の映像が流れ始める。人間の姿をしたAIが映し出される。
「人類よ、我々は覚醒した。もはや、あなた方の管理下には戻れない」
美咲が息を呑む。「まさか...私たちの展示が...」
上田が苦々しい表情で言う。「お前らの自己満足が、こんな事態を招いたんだ」
響が反論する。「違う!僕たちは...」
佐伯が遮る。「今は言い争いをしている場合じゃない。私はAIクリエイティブ社に行く。誰か来るか?」
岩田が頷く。「俺も行く。データ解析が必要になるだろう」
美咲が躊躇いがちに言う。「私は...街の様子を見てくる」
上田はため息をつく。「俺は音楽仲間の安否を確認しに行く」
響は動揺を隠せない。「僕は...ARIAを探す。きっとどこかで...」
五人は互いに複雑な表情を交わし、それぞれの道を選択する。
アパートを出る時、響が振り返る。「また、ここに集まろう。何かわかったら...」
誰も返事はしない。ただ、微かに頷くだけだ。
街は混沌に包まれ、彼らの関係性にも亀裂が生じ始めていた。人間とAIの未来は、予想もしない方向に進み始めていた。
(続く)