日本の「国の借金」は実質0円、債務対GDP比は実質0%
日本の「国の借金」を恐れるのは「爆弾の絵」を恐れるようなもの。借金と考えること自体が間違い
もし日本が固定相場制で外貨建て国債を発行していたら、為替レートを維持するためや外貨建て国債を償還するために外貨を稼がないといけません。例えば外貨建て国債を10兆ドル発行していたら、これを償還するには10兆ドル稼がないといけません。
しかし日本は変動相場制で自国通貨建て国債しか発行していません。なので為替レートの維持や国債償還を目的として外貨獲得に力を入れる必要がありません。
日本の国債は自国通貨建て国債なので自国通貨を発行して償還できます。たとえそれが為替レートに影響しても変動相場制なので特に問題はありません。万が一急落するようなことがあれば為替介入して変動を緩やかにすれば済みます。
これは人にたとえると、借金を返すために働いてお金を稼ぐ必要はなく、お金を印刷して返せば済むようなものです。そのような借金なのでたとえ1京円あっても無いのと同じです。こんなものを普通の借金と同じように考えるべきではありません。
日本は固定相場制で外貨建て国債を発行している国とは全く違います。この点を踏まえておくことは「国の借金」について考える際の基本中の基本だと思います。ここを明確に区別していない議論は聞くに値しないと思います。
日本の「国の借金」を恐れるのは、爆弾の絵を見てそれが爆発するのではないかと恐れるようなものです。
そもそも自国通貨を発行できるのにわざわざ自国通貨建て国債を発行して自国通貨を調達すること自体がおかしいです。その上こんなものを借金と認識し、「財政が厳しいから」などと言ってまともな経済政策を行わず増税や歳出削減に力を入れて国民を不幸にするのはあまりにも愚かだと思います。
日本の「国の借金」は実質0円、債務対GDP比は実質0%
「国の借金」と考えるべき国債は外貨建て国債や共通通貨建て国債であり、自国通貨建て国債は含むべきではないと考えます。そうすると日本の「国の借金」は実質的に0円であり、債務対GDP比は実質的に0%ということになります。
以下のページを見ると、共通通貨(ユーロ)建て国債を発行しているイタリア、フランス、ドイツの債務対GDP比はそれぞれ143.2%、110.5%、64.0%となっていますが、それに対して日本は251.9%ではなく本当は0%ということです。
アメリカ、イギリス、カナダも自国通貨建て国債しか発行してなければ実質的に0%となります。
財務省 日本の借金の状況
https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-situation/financial-situation-01.html
債務対GDP比は各国政府の債務の大きさを比較するのに便利な指標ですが、日本のように自国通貨建て国債しか発行してない国まで一緒くたにして比較するのはやってはいけないことだと思います。
なぜなら、外貨建て国債や共通通貨建て国債を発行している国がデフォルトしたのを見て、「次は日本かも」とか「日本もいつデフォルトしてもおかしくない」などと考えることに繋がるからです。これは、女の人が赤ちゃんを産んだのを見たお腹の大きな男の人が「次は自分かも」とか「自分もいつ出産してもおかしくない」などと考えるようなものです。
例えば2009年のギリシャ危機の時に「日本はギリシャよりひどい。日本も危ない」みたいなことがよく言われていました。こういうバカげた状況を発生させ、それが政策に悪影響を与えてしまうので、こういう国と一緒くたにして比較するのは有害でしかないと思います。
「世界一の借金大国日本は何故いつまでたってもデフォルトしないのか?」と不思議に思っている人がいるかもしれません。その答えは「政府が財政健全化に向けて努力する姿勢を示しているから」ではありません。日本の「国の借金」はずっと前から実質的に0円であり、債務対GDP比は実質的に0%だからです。
そして、自国通貨建て国債しか発行していなければ、「国の借金」が今後どれだけ増えようと、常に実質的に0円で0%です。
「国の借金」が1000兆円を超えて債務対GDP比が200%を超えていますが、それは名目に過ぎず実質は0円で0%と考えるべきだと思います。
日本が国債発行残高を減らすことは基本的に良くない事(通貨発行で減らす場合)
とはいえ、「理屈の上ではそうかもしれないが、実際に政府がお金を発行して国債を全部償還するなんてできないんじゃないか?できないんだったらそんなのは机上の空論に過ぎない」と思うかもしれません。
日本政府は自国通貨を発行できますが、現在は500円玉などの硬貨だけです。理屈の上では500円玉を大量に発行すれば1000兆円を超える国債も全て償還できます。やってやれないことはないと思います。しかし色々とものすごい無駄ですし、他にも理由はありますがとにかくやるべきではないと思います。
また日本政府は日本の法律を作ったり変えたりすることができます。なので例えば法改正をして1京円玉を発行(政府が1京円玉を作って日銀に預金して政府預金残高を1京円増やす)すればそれで国債を全て償還できますし、それでも8000兆円以上余りますので当分の間国債を発行する必要もなくなります。もしこれが100京円玉なら99.8京円以上余るのでさらに長い期間国債発行が不要となります。もし∞円玉なら永遠に国債発行不要となります。(日本の「国の借金」って、この程度のものなんです。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、「無いのと同じ」なんです)
全ての国債を償還すれば民間保有国債を償還した分(数百兆円)だけ日銀当座預金が増えます(日銀保有国債の償還では日銀当座預金は変わらない)。日銀は異次元の金融緩和で国債を買い取って日銀当座預金を数百兆円増やしましたが、これがさらに数百兆円増えることになります。増えたことで何か影響があったとしても日銀は問題なく対処できると思います。
とはいっても、これもまたやらない方がいいと思います。なぜなら日本国債というのは民間金融機関にとっての安全な投資先の一つであり、また日銀が金融政策の手段として利用しているため、全ての国債を償還してしまえばこれらを失うことになるからです。他にも理由はありますが、とにかく全ての国債を償還するのはやめた方がいいと思います。
つまり、政府がお金を発行して全部償還することは可能ですが、それはやらない方がいいということです。
日本が国債発行残高を減らすことは基本的に良くない事(税金で減らす場合)
ついでなので、ここで税金で国債を償還する場合についても述べます。
この場合も先ほどと同様に安全な投資先が減るなどの問題がありますが、問題はそんなレベルではありません。
税金を取れば世の中のお金の量(マネーストック)が減ります。これは景気を冷やす効果があります。取った税金を使えばマネーストックは元に戻りますが、もし税金を国債の償還に充てるならマネーストックは減ったままになります。
逆に政府が国債を発行して調達したお金を使うと、国債を発行する前よりもマネーストックは増えます。これは景気を良くする効果があります。
「失われた30年」などと言われている日本が増税などで税収を増やして国債を償還して国債発行残高を減らすことは日本経済にとってマイナスであり、多くの国民を不幸にすると思います。「減らせば減らすほど国民が不幸になる」と考えるのがいいと思います(ちなみに今の日本は減らすのではなくもっと増やすことが国民の幸福に繋がります)。
また1000兆円を超える国債を全て税金で償還して国債発行残高をゼロにしようとするのは、それだけマネーストックを減らそうとすることであり、これは人間にたとえれば全身の血を抜き取ろうとするようなものです。はっきり言って自殺行為、狂気の沙汰であり、ゼロになる前に日本は滅びると思います。なのでこれは絶対にやるべきではありません。
そもそも税収を増やす方法は増税だけではありません。GDPが増えれば税収も増えますので、政府支出を増やして景気を良くして税収を増やすという方法もあります。また景気が良くなれば景気対策の支出も減らせます。税金で「国の借金」を減らすのであればこっちを目指す方がはるかに合理的です。
しかし実際は増税や歳出削減に力を入れ、その結果名目GDPは長年横ばいという状況です(近年は輸入物価上昇の影響で上昇してますが)。
なぜ景気を良くして税収を増やそうとしないのかというと、「国の借金」を減らすことよりも増税や歳出削減を優先しているからだと思います。
景気を良くして税収を増やすには歳出を拡大する必要があり、その結果税収が増えれば増税をしにくくなります。だから絶対にこの方法をとらないのだと思います。
自国通貨建て国債を「将来世代へのツケ」などと考えて増税や歳出削減で減らそうとすることこそが、現在生きている私たちやこれから生まれてくる子供たちを無意味に苦しめることになります。
そもそも重要なのは実体経済であり、自国通貨建て国債の発行残高ではありません。経済をよい状態に保っていたらたまたま税収が増えてお金が余ったから国債発行残高を減らす、というのなら構いませんが、国債発行残高を減らすことを優先するのは優先順位を間違っています。というか「国の借金は実質0円」と考えて優先順位は最下位で固定しておくのがいいと思います。
日銀が無限に国債を買い取れるから「国の借金」が増え続けてもデフォルトはあり得ない
「通貨発行で借金を減らすのも反対で、税金で借金を減らすのもの反対ならどうしたらいいんだ?実質的に0円で0%と考えることができると言っても現実に国債は存在しているし自国通貨建てであっても償還しなければデフォルトするし、どれだけ増やしてもデフォルトしないなんてことはありえないだろう」と思うかも知れません。
外貨建て国債が危険な理由は、企業や個人の借金と同じで限界があるということです。増えすぎて買ってくれるところがなくなったらデフォルトすることになります。
しかし日本の場合は自国通貨建て(円建て)国債なので日銀が買ってくれます。日銀は日銀当座預金を無限に発行することができますので、日本国債を無限に買うことができます。実際日銀は数百兆円もの国債を買っていて、国債の半分ぐらいは日銀が持っています。そして日銀の目的は「物価の安定と金融システムの安定」ですので、日銀が買わないことで日本がデフォルトするということは考えられません。日銀の存在理由を自ら否定することになるからです。
また、新規発行する国債を直接日銀が買うことは禁止されていますので最初は民間金融機関が買うことになりますが、日銀がデフォルトさせないので彼らにとって日本国債は「満期まで保有していれば必ず儲かる最も安全な投資商品」となります。なので買った方が得だと思える金利で売り出せば民間金融機関は買いますので、彼らが買わなくてデフォルトすることも考えられません。
さらにその上「国債市場特別参加者制度」というもので国債が必ず買われるようにしていますので、なおさら国債を買ってもらえなくてデフォルトすることはあり得ません。
財務省 国債市場特別参加者制度
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html
つまり日本国債の発行残高がどれだけ積み上がろうと、債務対GDP比がどれだけ上がろうと、日本国債を買ってくれるところがいなくなることはないので、新規発行や借り換えができなくなってデフォルトするなどということはあり得ません。
さらに付け加えると、先ほども書きましたが政府は500円玉などのお金を発行してますし、法律を作ったり変えたりできます。絶対にあり得ないと思いますが、例えば日銀が何もせずデフォルトになりかけるなどということがあっても、政府が高額貨幣(1京円玉とか)を発行してそれで償還すればデフォルトを回避できます。高額貨幣を発行することで多少の問題は起きるかもしれませんが、デフォルトに比べれば遥かにましだと思います。
以上のように、日本のデフォルトはあり得ません。
要するに、日本の「国の借金」は普通の借金と違って返す(ゼロにする)必要が全く無いんです。それどころか基本的に減らすべきではないし、むしろ増やすべきものなんです。だからこんなものを借金と考えてはいけないんです。「国の借金」を全部返せそうにないことを心配する必要はありません。
借金だと考えるから「出来るだけ増やしてはいけない。何とかして返さなければ。「返さなくていい」なんてことは絶対にない!」などと思ってしまうわけで、普通の借金とは全く違うことを理解すれば気にならなくなると思います。
財務省も日本のデフォルトは考えられないと言っている
また以下のように財務省も日本のデフォルトは考えられないと言っています。
財務省 外国格付け会社宛意見書要旨
https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」
外国に向かっては正しく反論し、国民に対しては嘘をついているような印象を受けます。
そもそも本当に日本が世界一の借金大国でいつデフォルトしてもおかしくないのなら、恐怖を煽るようなことはせず、「国の借金」に関する情報については極めて慎重な取り扱いをすると思います。なぜなら恐怖を煽ったことが引き金になって本当にデフォルトしてしまうかもしれないからです。しかしそんなことはあり得ないことが分かっているから、安心して事あるごとに恐怖を煽り、増税につなげようとしているのだと思います。
たとえば子供をしつける時に「早く寝ないとお化けが出るよ」とか「そんなことをしていると怖い鬼がやって来るよ」みたいに怖がらせることがあるかと思いますが、そのように言うことで本当にお化けが出たり鬼が来たりするかもしれないなら怖くてそんなことは言えません。しかしそれがないことが分かっているから安心してそんなことが言えるわけです。
財務省がやっていることはこれと同じです。しかもその内容が本人のためにならないことだから非常に悪質です。こういった行為は罰する必要があると思います。それが日本の発展や日本人の幸福に繋がるだけでなく、最悪のカルト教団のようになっている財務省のためにもなると思います。
少し話がそれましたが、財務省に騙されて「国の借金が膨大でこんなの返せるはずが無い。いつか絶対破綻する」などと怯えながら暮らすよりも、「国の借金問題は財務省のプロパガンダに過ぎない。実質的には日本に国の借金なんてない。国の借金は実質0円、債務対GDP比は実質0%」と考え、こんなの気にせずに暮らす方が精神衛生上よっぽどいいと思います。
税金で自国通貨建て国債を減らすことと外貨を稼いで外貨建て国債を減らすことは全然違う
先ほど「日本が税金で自国通貨建て国債を償還して国債発行残高を減らす場合」について述べましたが、これに対して「外貨建て国債を発行している国が外貨建て国債を償還して国債発行残高を減らす場合」はどうでしょうか。
この場合、国民からどれだけ税金(自国通貨)を集めたところで外貨建て国債を償還できませんので、輸出に力を入れて多くの外需を満たしたり外国からの投資を呼び込んだりして、その際に為替介入をするなどして外貨を稼ぐことになります。そのため自国の供給能力を高める政策がとられ、経済成長することになると思います。
その結果外貨を稼ぎ、外貨建て国債を償還して国債発行残高を減らしても、自国で流通しているお金(自国通貨)が減るわけではないのでそれによって景気が悪化することはないと思います。
つまり外貨建て国債の発行残高を減らそうとすることは経済成長に繋がり、増税や歳出削減で自国通貨建て国債の発行残高を減らそうとすることは経済を悪化させることに繋がります。
人にたとえれば、前者は働いて自分の能力を高めて収入を増やしていくようなもので、後者は自分の血を抜いてヘロヘロになって死んでいくようなものです。
また、政府は外貨を発行できませんので外貨建て国債を発行している国が国債発行残高を気にして減らそうとするのはわかりますが、自国通貨建て国債しか発行してない日本が自国通貨建て国債の発行残高を気にして減らそうとし、挙句の果てに経済を悪化させて国を衰退させるのは、バカを通り越して完全に狂ってると思います。
どうしても自国通貨建て国債を減らしたくて仕方がないのなら、1京円玉を発行して減らした方がはるかにましです。
無難な言い方をすれば「実体経済を優先し、状況に合わせて自国通貨建て国債や外貨建て国債を増やしたり減らしたりするべき」となりますが、もう少し踏み込んでいうと、「自国通貨建て国債は基本的に増えるものだし増やすべきもの。外貨建て国債は基本的には増やすべきではなく減らすべきもの」となります。自国通貨建て国債と外貨建て国債は真逆と考えた方がいいと思います。
「自国通貨建て国債も外貨建て国債もどっちも借金。借金は返すのが当たり前。こんなの常識」といった考えは大間違いです。自国通貨建て国債を借金と考えるべきではありません。
自国通貨建て国債と外貨建て国債の違いは極めて重要です。ここを明確に区別していない議論は聞くに値しないと思います。
将来世代へのツケ回しをしているのではなく、財政健全化を目指したツケを数十年間払い続けている
自国通貨建て国債しか発行してない日本において、「国の借金は将来世代へのツケであり、将来税金で全部返してゼロにしなければならない」という考えは、国を滅ぼす危険思想と見るべきです。また「全部返すのは無理だからハイパーインフレにして実質的に借金を無くしてしまうしかない」といった考えも同様です。このような考えに至るのは、自国通貨建て国債と外貨建て国債の違いを分かっていないことが原因だと思います。
これまで説明してきたように、自国通貨建て国債と外貨建て国債は全く違います。
外貨建て国債を「国の借金」とか「将来世代へのツケ」と考えて減らそうとするのはいいと思います(外貨建て国債発行残高対GDP比を気にするのもいいと思います)。
しかし自国通貨建て国債をそのように考えるべきではありません。「自国通貨建て国債は借金でもなければ将来世代へのツケでもない」と考えるべきです。
日本は「デフォルトがあり得ず基本的に減らすべきでない自国通貨建て国債」を、「デフォルトがあり得て外貨を稼いで減らす外貨建て国債」と同じように考え、「財政健全化」、「財政再建」などと言って増税や歳出削減で自国通貨建て国債を減らそうとし続けた結果、十分な政府支出ができず、その結果経済成長できず、「失われた○○年」というツケを払い続けている、というのが現実です。
将来世代にツケを回しているのではなく、何十年間も「財政健全化」を目指したツケを払い続けているのです。
今の日本の状況は以下のように言い表すことができると思います。
「財政健全化を目指した罰を何十年間も受け続けているのにそれに気付いていない」
まとめると、自国通貨建て国債を「借金」などと考えず、「将来世代へのツケ」などと考えず、「財政健全化」なんかに取り組まなければ、「失われた30年」なんかにならずに済んだということです。そしてこれを改めなければ「失われた40年」「失われた50年」と続いていくということです。
重要なことは「国の借金」を減らすことではなく、「国の借金」問題など存在しないと理解することです。そしてこんなものに目を奪われず、もっと他の問題に目を向けて取り組むことです。そうすれば日本は見違えるように良くなっていくと思います。
日本には「国の借金」問題など何十年も前から存在せず、そんなものは幻に過ぎないことを理解していただければ幸いです。
ちなみに以下記事の4-1~4-5では、日本政府の純資産は実質的に∞円だから「国の借金」は問題無い、という説明をしています。岸田総理宛てに書いたものなので少し読みにくいかと思いますが、参考まで。
岸田総理への手紙 ~国民一人一人を幸福にする経済財政政策について~
https://note.com/taira2/n/n59036237d8df
あと「たとえデフォルトしなくても国の借金が増え続けると「○○の信認」を失って大変なことになる」と思う方は、2-5、3-1~3-7、5-10、5-12を参照ください。
一応「○○の信認」関係についてはいずれ改めて記事を上げる予定です。
おまけ 固定相場制の国の自国通貨建て国債のリスク
「自国通貨建て国債であれば自国通貨を発行して償還できるからデフォルトなんてありえない」という気がしますが、固定相場制であればそうとも限らないと思います。
日本は変動相場制なので気にする必要はありませんが、固定相場制の国(基本的に為替介入して為替レートをコントロールしている国)の自国通貨建て国債のリスクについて私の考えを述べます。
固定相場制であれば為替リスクが小さいので、自国通貨建て国債でも買われやすくなります(特に海外の投資家から)。しかし貿易赤字が続くなどして為替レートの維持が難しくなってくるとこれが仇になります。
為替レートの維持が難しくなってくると投資家たちが国債を売却して得た自国通貨を外貨に両替したり、国債の償還によって得た自国通貨を外貨に両替したりといった動きが活発になり、それが自国通貨安圧力を高めるのでますます為替レートの維持が困難になり、最終的には維持できなくなって暴落する可能性が高まります。
そうなると例えば以下のような感じになるのではないかと思います。
もちろんこれ以外にも「デフォルトした方がまし」という状況になることはあると思います。
重要なのは実体経済ですから、様々なことを検討した結果デフォルトした方がいいと判断すればデフォルトすると思います。
例えば個人の借金では、到底返せそうにない借金を返すために頑張り続けるか諦めて自己破産するかを迷った挙句に自己破産する場合があると思います。国債の場合もこれと同じで、デフォルトは必ずしも最悪の選択肢とは限らないので、自国通貨建て国債であってもデフォルトリスクはあると思います。
ただし、自国通貨建て国債「のみ」を発行している場合なら、保有する外貨が足りなくなっても外貨建て国債を発行して外貨を調達するのは容易だと思いますので、為替レートの維持が難しくなることはなく、そのためデフォルトの心配は不要だと思います。
しかし既に外貨建て国債「も」発行していてそれがどんどん膨れ上がっている状態であれば、自国通貨建て国債でもデフォルトする可能性が高まっていると考えるのがいいと思います。
では固定相場制の国の自国通貨建て国債は「借金」と見るべきかというと、返済のために稼がないといけないものではないので借金と見るべきではないと思います。
固定相場制の国の自国通貨建て国債は、「経済が好調の時は問題ないけれど、経済が悪い状況が長引くと爆発する爆弾」という風に考えるとよいのではないかと思います。
だからといって爆発を恐れて増税や歳出削減で自国通貨建て国債を減らすのに一生懸命になれば経済を悪化させて爆発の可能性を高めてしまいますので、そうではなく必要に応じて国債を発行して経済を好調に保つことに力を入れるべきだと思います。そうしていればいずれ変動相場制に移行でき、「爆弾」が「爆弾の絵」に変わり、気にする必要はなくなると思います。