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台湾で「実名制」販売マスクを買ってみた話

 先日(2021年3月16日)、近所の薬局に行ってマスクを買ってきました。台湾政府がマスク工場から買い上げ、公認薬局で販売するという、いわゆる実名制(要本人確認)販売マスクです。今は、予約をすればコンビニでも買えます。購入には身分証(健康保険証など)の提示が必要です。
   この実名制で購入できるマスクは医療用(台湾基準)でもあり、匂いがほとんどなくつけていて違和感をあまり感じないので気に入っています。ただし、購入できるのは一人10枚セット一点のみで40台湾ドル(約160円、マスク一枚あたり約16円)で、二週間に一度限りです。
   台湾内での備蓄および生産量が増えたとのことで、昨年末までは9枚セットだったのが、今年初めから10枚セットになり、値段も45台湾ドル(約200円)から40台湾ドルに下がりました。少しお得になりました。180日以上滞在する予定(居留査証)で訪台している外国人の私も、居留証(滞在許可書のようなもの)を薬局に持って行けば買うことができます。外国人も買える分量は同じです。素晴らしいです。現在のところ台湾の薬局、ドラッグストアなどでは様々なマスクが山積みされ、マスク不足は解消しているので、この制度はいつまで続いてくれるのかわかりません。個人的には続いて欲しいですが.....。
 購入時、居留証を見せると受付の方が端末に何やら入力してくれたあと、お金を支払います。オンラインで管理しているんですね。これもすごい。知人によれば、購入する必要がなければ、自分に割り当てられた分を外国への寄贈分に回すことができるそうです。その場合、私は試していませんが、オンラインで申請するとのこと。台湾政府は、海外にマスクを寄贈してばかりとの一部国民からの批判に対する措置だそうです。そんなシステムをちゃちゃちゃとつくれる台湾の人材の豊富さとそんな優秀な方々が活躍できる場を提供している行政府の存在はうらやましい限りです。
  マスクの色、デザインはいろいろあるようですが、その時の入荷によって異なるようで大人用か子ども用かしか選べません。前回は薄いブルー、今回は薄いグリーン(二回目)でした。うちの子は、他の色のマスクに比べて薄グリーンの方が日本のテレビドラマのドクターXに出てくるお医者さんみたいでかっこいいと気に入っているようです。脱線しますが、ドクターXは、台湾入国後の二週間隔離期間中、ホテルの部屋備え付けのケーブルテレビで視ました。平日毎日放送していて、あのときの私たち一家の数少ない娯楽のひとつでした。最終回の日、なぜかそのチャンネルだけ映らなくなり、あーだこーだと必死にテレビをいじくり回したのもいい思い出です。(隔離期間なので従業員は部屋に入ってくれません。結局視れませんでした。)エンデンィングに流れるテーマ曲とあの例の台詞を聴くと台湾を思い出すことになるでしょう。  

マスク1

 台湾の実名制販売のマスクには製造年月日、有効期限、工場住所等が記載されています。不具合があった場合、いつ、どの会社がどこの工場で作ったのかすぐ判ります。上の写真では、左のマスクの袋の後ろ側にマスクの付け方の説明と製造責任者の諸情報が印刷されています。責任の所在が明らかです。品質の悪いものを作れば、すぐに大きな問題となりますが、いいものを作ればそれはいい宣伝になります。妻によれば、薬局で実名制マスクを購入したとき、何かしらの不具合(ひもがとれる等)があれば、すぐに無償交換するといわれたとのことです。しっかりしています。
 今回購入したマスク会社を検索してみると、昨年3月上旬に台湾総統がマスクの生産状況を視察したマスク会社のものでした。あの時期は、台湾でもマスクの絶対量が足りない状況のなか、政府主導でマスク生産を増やすため他業種からも参入し、生産者は文字通り不眠不休で働いたと知人から聞いたことがあります。その頃、日本の与党は何をしていたのかなと検索してみると、お肉券やお魚券の配布を検討していたんですね。思い出しました。さすがに取りやめになりましたけど、驚きですよね。
    一方、台湾では、感染症対策に一定の基準をクリアしたマスクは必須→マスクが不足している→マスクの生産拡大、そして、その先のマスクの安定供給まで政府主導でやり遂げました。新型コロナの出始めの頃、感染症対策としてのマスク着用を軽視する国は少なくなかったと思います。そんななかで、迷うことなく全住民のマスク着用を迅速に進めた、台湾の感染症専門家や責任ある地位の人たちの判断の正しさが、今日の台湾の状況をみると、証明されているのではないでしょうか。
 昨日(3月18日)、妻が別の薬局で買ってきたマスクが同じメーカーのピンク色のものでした。台湾でピンク色のマスクといえば、台湾でマスク不足が深刻化していた4月中旬、ピンク色のマスクは恥ずかしい、といって着けたがらない男の子どもがいるとの声に対し、台湾のコロナ対策本部の全員がピンク色のマスクを着用し、記者会見に登壇したことはよく知られています。日本でも洗えば縮む例のマスクが配布されたとき、サイズが小さく、顔が大きいと思われるから着けるのを恥ずかしいと思う人がいて、話題になりました。一度でよかったので、閣僚全員で着用して欲しかったですね。
 せっかくなので、台湾のマスク供給の経緯をちょっと調べてみました。過去の報道によれば、台湾のマスク実名制販売は昨年2月6日に始まり、当初は一人1週間2枚のみだったとのことです。台湾政府は昨年1月末には、マスクの価格高騰と品薄に対し、台湾で生産したマスクの全量買い取りを決め、国民に供給することを開始しました(現在は全量買い取りは停止)。それでも一部の人による買い占めがあるなど、マスクの入手が困難な状況に対し、実名制販売を導入したとのことです。名前の確認には普及していた健康保険証を採用したとのこと。

「マスクの購入が実名制に、購入できるのは7日に1度で1人2枚まで」
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148&post=170462

 マスク供給開始の初期、混乱を緩和するため台湾のオードリー・タンIT担当大臣らが薬局のマスク在庫状況を把握できるアプリを立ち上げたことはよく知られています。実名制販売決定から実施までわずか3日。スピード感ありますよね。このアプリ(今は停止中)の評価については、「マスクマップ 台湾」で検索すると多くの記事があります。
 また、今、売られている実名制販売マスクには「Made in Taiwan MD」の刻印がついています。MDはMedical Device の略で医療用の意味です。昨年9月、とある企業が医療用ではない、海外から輸入したマスクを台湾製と偽って実名制販売マスクとして販売しているとの情報があったことを契機に、その対策としてMade in Taiwan にMDの文字を追加することになったとのこと。また、前回買ったものと今回のものではロゴが少し変わっていました。偽物対策なのかも知れません。写真を載せるのはやめておきます。

Taiwan masks to be printed with “MD” and “Made in Taiwan”
https://en.rti.org.tw/news/view/id/2003950

 
 台湾政府機関の2021年3月19日発表によれば、新規感染者は6人でした。これで、新型コロナ累計感染者数は、感染者数1004人、死者10人、隔離解除959人です。誤解ないように、一日の数字じゃないですよ。これまでの累計です。新規感染者は入国時に定められた検疫期間中にみつかることがほとんどです。感染者と接触した者は、詳しい基準は分かりませんが、隔離や自主健康管理の対象となります。入国者に対する厳格な検疫体制を構築しています。台湾は入国者を制限していますが、鎖国をしているわけではありません。最近、4月1日に台湾とパラオ双方の団体旅行を再開させるとの報道もありました。海外旅行ですよ。いいですよね。とはいえ、帰国後に二週間の自主健康管理期間が課せられるようですが、予約は殺到しているようです(※パラオ旅行始まりました。報道によれば、感染者は出てないのですが、その後、予約はあまり入っていないようです。もし、旅行に行って感染すると大変ですから、皆さん気が進まないのでしょう。2021年4月9日追記)
 台湾と日本は規模が違うので、単純に比べることはできませんが、日本も感染抑制に向けて台湾に学べることは少なくないと思います。例えば、マスクの性能基準。驚いたことに、日本の「医療用マスク」「家庭用マスク」というのは、その性能に関する検定規格がないそうです。

「マスクについて Q2」一般社団法人日本衛生材料工業連合会http://www.jhpia.or.jp/product/mask/mask3.html#q2 Q2参照
 
 日本政府もマスク着用を呼びかけていますが、マスクなら何でもいいというのではなくて、着用することで一定の効果が期待できる日本独自の性能基準があった方がいい気がします。どうでしょう?もちろん、鼻が出る小さいマスクでもOKというのではなく、台湾の認証マスクと比べても遜色ない基準にしなければなりませんが。
 台湾は、世界でも極めて少ないゼロコロナ対策に成功している国です。もちろん、これまで国内で感染者が出たことがあります。それをロックダウン(都市封鎖)しないでゼロに持っていってます。ゼロコロナなんて無理。そう思う人が大半だと思います。でも、それができる可能性があることを台湾は証明し続けています。ゼロコロナいいですよ。マスクはしないといけないですけどね。

(本雑文中のリンク先には2021年3月19日にアクセスしました。)

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