看護計画テーマ「神経精神科 老年期認知症患者の標準看護計画」
今回のテーマは「認知症」についてです。
高齢化社会となった日本では、認知症患者が多くなっています。
医学が発達したことにより、平均寿命が延びたことが大きな要因と考えられています。
対応が非常に難しい場合がほとんどなので、しっかりまとめていきましょう。
老年期認知症患者の標準看護計画
認知症とは
脳に器質性変化が生じ、理解、記憶、計算、抽象思考、判断、言語能力、注意力(集中力)といった脳の高次機能に障害をきたし、徐々に運動機能にも障害を起こし人格を喪失してしまう状態をいう。老年期の認知症症状を呈する疾患にはアルツハイマー型認知症や血管性認知症が代表してよく知られている。
1.アルツハイマー型認知症
発病は40〜60歳に多く、女性にやや多い。大脳のびまん性萎縮がみられ、萎縮は前頭葉で強い。病理組織学的には大脳皮質全般に神経細胞の萎縮、脱落があり老人斑、アルツハイマー神経原線維変化が認められ、特に海馬とその周辺で著明である。顆粒空胞変性が海馬の大型神経細胞にみられる。高度の認知症にもかかわらず人格は比較的保持されており、進行性の記憶障害を主とし、失語、失読、失書、失行等の巣症状がみられる。特徴的なものとして視空間失認がある。神経症状として筋緊張亢進、筋拘縮が生じることが多い。
2.脳血管性認知症
発病年齢は50歳以上に多く、男性に多い。まだら認知症で、老年認知症でみられる全般的な認知症と区別されることが多い。進行は、階段状で人格変化が少なく、病識は保たれ感情失禁をしばしば呈し、頭痛、眩暈、しびれ、片麻痺、卒中発作、巣症状等の神経学的症状が多い。
アセスメントの視点
認知症を装飾する形で譫妄が併発して現れる場合もあり、認知症なのか、譫妄なのか判断が困難な場合もある。それぞれの症状の特徴から、患者にいま起こっている症状を正確に判断することは適切な看護を提供するうえで重要である。また、病気の経過を知るうえでも重要となる。
譫妄は、急激に精神動揺が起こり、多くの場合、睡眠−覚醒リズムが障害される。認知症のように、徐々に会話はできるが物忘れをする、単語が出てこないといった状態なしに、急激に会話も成り立たないような状況が生ずる。
認知症は徐々に進行し、不可逆的であるが、譫妄は看護者の対応によって一時的に収まってしまうものである。この譫妄を適切に処理しなければ、暴れたり、食事、飲水や睡眠といった生理的ニーズの充足が不十分となり、危険な状態に陥る。
症状
出来事全体を忘れる高度な物忘れから始まり、判断ができなくなり、徐々に周りの状況を認知できなくなる。
行動の多くは、たくさんの動作が組み合わさせたものであるために、衣服の着脱、洗面、排泄等の動作を部分的に忘れ始め日常動作も援助なしにはできにくくなってしまう。さらに重度の認知症に移行すると、言葉が出てこない、相手の言うことが認識できない状況が生じ、運動機能の低下と共に寝たきりに移行する。
検査
生化学、血液一般検査
CTスキャン
MRI
EEG
SPECT
ECG
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)
WAIS−R
治療
中核症状である知的機能を改善させることは困難だが、脳の老化が少しでも遅くなることを期待して脳代謝改善薬を長期的に投与する。また脳血管障害がこれ以上進まないようにするため、脳循環改善薬や血小板凝集抑制薬も併用する。その他、意欲減退、うつ状態、行動異常等、認知症に伴って起こる症状を改善するために抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬を使うこともある。
知的機能は改善できなくても、副次的な症状の一部を改善することは、人間らしく生きるために必要であり、本人、家族にとっても意義のあることである。
作業療法は、患者の人間性と自由を尊重し、自発性と役割を高めることにより、患者に残された健康な部分の能力を強化できるため、社会性の回復や新たな獲得を目標とする手段として用いられることがある。作業活動はあまり変化を持たせずに、固定化、パターン化し繰り返すほうがよい。過去の経験を生かした簡単で予測性の容易なものが適している。もっとも、音楽等は古いなじみのあるものだけでなく、リズム等の影響が大きいため新しいものもよい刺激になることが多い。
経過と管理
認知症は一般的に3つのステージに分けることができる。
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