5/10(金)公開『胸騒ぎ』映画評(小)
5/10(金)公開予定『胸騒ぎ』のちょっとした小レビューです。
公式サイトに掲載されている以上のネタバレは控えますので、鑑賞前に読んでいただいても大丈夫かも。
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まず鑑賞後真っ先に鋭さを感じたのは、英題の"SPEAK NO EVIL"というフレーズだ。直訳すると「悪を言わず」で、三猿のひとつ「見猿」が由来になっている。
主人公一家がデンマークからイタリアにバカンスを楽しんでいるところから幕が開ける。旅先で出会ったオランダ人一家と知り合って意気投合し・・というストーリーだ。
居住地が異なるため、共通言語は自然と英語になる。そしてそれぞれの家族内で話される言語はローカルにデンマーク語・オランダ語に分岐する。そして両家族の会話で再び英語に戻る。その繰り返しで会話劇が繰り広げられる。
そこで冒頭で紹介した英題"SPEAK NO EVIL"の意味を知ると、血の味のような不快感がじんわりと広がる。ぜひ「言葉」に注目して鑑賞してみてほしい。やはり様々な言語が飛び交う北欧という地域ならではの特色なのだろう、リューベン・オストルンド監督作『フレンチアルプスで起きたこと』のように、多言語の諍いが底知れない緊張感を演出している。
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そして肝心のホラー要素としては、大人のエゴと良心の二律背反を突きつける仕上がりに。ミヒャエル・ハネケ監督作『ファニー・ゲーム』の再来とも言える不条理がたっぷりと満ちているし、表面張力でギリギリの状態が続くのも何ともじれったくて、不快感を増長させる。
緩やかな曲線を登りつめると、いつの間にか胸のざわめきに気づくことでしょう。そうなったら、あとはもう直視し続けることしかできない。エンドロールに遭遇した瞬間、心の底から解放感を味わえる。
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久しぶりに唸るようなホラー映画を観ました。ブラムハウスのリメイク版の仕上がりはどうなるんだろう。北欧製だからこそ意味があると思う。
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