塩おにぎりと沢庵づけ
これまで食べたものの中で最も美味しいと感じたものは何か?と問われると、実は答えるのが難しいという問題に直面している。
いや、実は直面はしていない。
これは食べ物に限った話ではなくて、何かしらの一番を決める場合、最も好きなものは何か?とか最も美しいと思うものは何か?とか、そんなことを問われると、その選択肢が多ければ多いほど、一番を決めることってとても難しくなる。
でも、何か一つ、「一番美味しい」と感じるものを挙げるとすると、
「塩おにぎりと沢庵漬け」を僕は答える。
主食と漬物という地味な組み合わせが、なぜ一番美味しいと感じるのか?それは、それを口にしていた時の状況、その記憶と共に味が蘇るから。だと思う。
この「塩おにぎりと沢庵漬け」を食べていた、僕自身が経験した状況というのは、地元の秋祭りの昼食。
愛媛県の愛南町という地域で生まれた僕は、秋祭りの時期(毎年11月3日 文化の日)になると少し浮かれた気分になった。その日は毎年祝日なので、学校は休み。学校は休みなのに、学校の友達が朝早くから「はっぴ」(漢字わからん)を身に纏い、近くの神社に集まる。それだけで、特別な日であって、少しワクワクする気持ちだった。
その祭りでは、神輿を担ぐ人と牛鬼(うしおに)を押す人、太鼓を叩く人に分かれて、その地域の中を練り歩く。(遠いところは軽トラに神輿を積んで移動させる)僕の生まれた地域では、牛鬼は毎年、中学生が押していた。あとは子供神輿と大人神輿。
牛鬼は確か宇和島が始まりだったような気がする。よくわからんのでWikipediaで調べてみた。
和霊大祭と呼ばれる宇和島の夏祭りの中で、牛鬼まつりなるものが催されているということみたい。でも、宇和島が発祥なのかどうかはよくわからんかった。でも、僕が知っている限りでは宇和島を中心とした周辺の市町村以外では聞いたことがない。だから、宇和島発祥ということで。(宇和島宇和島言うてますが、僕は宇和島の出身ではないので、宇和島の南に位置する愛南町ですので。)
まあ、知らん人から見たら、大体似たようなもんですので、気にしなくても大丈夫。
牛鬼というのは、西日本に伝わる妖怪らしく、日本各地に伝承が残っているようだ。その中でも、愛媛県宇和島市の伝承は特に有名らしい。とWikipediaに書いてある。牛鬼がどこの発祥なのかと言うことは、この記事には直接関係ない。が牛鬼祭りを知らない方もいると思うので一応説明をしました。
そう、そんな祭りが毎年、文化の日に行われるんだが、祭り自体は楽しさや特別感はあるものの、ほとんど一日中歩き回るので非常に疲れる。だから、神輿を担ぐこと自体にはそれほど魅力は感じていなかった。楽しくもあったけどね。
僕が最も楽しみにしていたのは昼食で、大量のおにぎりを食べる時間だった。塩おにぎりや「ゆかり」ご飯(これ美味しいよね)、おかか(ふりかけ)といったおにぎりがあり、どれも美味しかったんやけど、疲れた体に「おにぎり」はとても美味しく感じた。また、ご飯が冷えて、米が粒だっている様も個人的には好きで、口に中に入れた後に充実感を感じる。そのためか、いまだに硬めの冷や飯が好きだ。
祭りの日に食べる、その「塩おにぎり」の旨さは格別で、なぜか普段は食べない「沢庵漬け」もついつい食べすぎてしまう。
普段も塩おにぎりってよく食べてると思う。その時も、もちろん美味しい。でも祭りの日に食べる塩おにぎりと沢庵漬けはなぜだかもっと美味しい。
それは多分、祭りという特別な、楽しく、疲れる、友人や近所のおっちゃんおばちゃんと神輿を担いだ思い出が、祭りの日に食べた、塩おにぎりと沢庵漬けを、めちゃくちゃ美味しい食べ物へと昇華させているんだろうと思う。大袈裟か。
今までで、一番美味しかった食べ物を思い浮かべた時に、その美味しい食べ物が楽しい思い出と共にあったなら、あなたは幸せです。もちろん僕も例外ではなく。
僕が住んでいた地域では、年に一回、健康ウォーキングなるイベントが催されていて、幼馴染たちと一緒に歩いた思い出がある。
歩いた後に食べた豚汁。
これもまた捨てがたい。
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