人魚の羽杯 選歌の感想

どう選んでいったのかなど書いて残します。
先月の（多分）中頃、追加の選者としてお誘いを受けました。

深山睦美といいます。
選者の経験無し。うたの日以外での「評」の経験も無し。

そもそもこういう傾向の短歌も、詠んだことがない。
以前AV短歌に参加させてもらった時も、全然エロくないやつで誤魔化したのを許してもらったという経緯があります。

選歌基準

他の選者の方々がどのように選歌したのかは知りませんが、私は減点方式でした。そうしないと全然ふるいにかけられなかった（何周読んでも候補が減らなかった）からです。

他に考えていたのは、極端な例ですが、（そんな作品はありませんでしたが）例えば小児性愛を詠んだ歌があったとして、万が一その人のbioに学校の先生ですと書いてあったり、小児科の公式アカウントで参加してたりしたら炎上するだろうな、みたいなことです。
フレーム問題で壁の色が変わることを考え始めて結局爆発するロボットのようですが、自分にとっては必要な工程でした。

この杯に参加している以上、詠者本人はある程度の覚悟というか、「『こんなエロいことを考えているのは、この人です！ドン』と受け取られる可能性のある文脈で発表されること」を了承しているものと思われます。
とはいえ、内容が内容だけに「この短歌がもし〇〇（特定の属性をもつ人間）の作品だったら結果発表後に変な目に遭うんじゃないか」とか、どうしても考えてしまいました。

その選歌基準は杯の趣旨に反しているだろうと思われるかもしれませんが、すみません。職業病です。

個人賞

画像は選者のひとり、小羽さんが制作。
「画像制作やらデザインやらは、趣味で少し」とおっしゃっていたが、違うと思う。

すごすぎる。この画像が賞品ではないか？
えっち短歌445 / 現代のコンピュー

・詠セッ之才賞
もし君の身体部位を得られたら縫いつける新月の背後に
／高遠みかみ　さん　@takatoo_mikami

そういえば新月の背後と満月の背後って同じ場所ですね。
本当に自分の言いたいことを言っている歌は魅力的だなと思いました。

・蠱毒に耐えま賞
なめらかな鎖骨にあごを乗せるとき眼科で気球を覗くようだね
／やいずみ　さん　@yomogi_ice

オートレフラクトメーターって短歌の題材にいいですね。あの気球って絶対誰も乗ってないですもんね。誰が浮かせた気球なんでしょうか。不気味ですね。

本当は個人賞をここで勝手に２０作くらい増やして列挙したいのですが…私のTwitterのいいね欄にまとめるにとどめます。結果発表後に作者名を見にいきましたが、個人賞候補作品の７割以上はFF外の方の短歌でした。やおさん顔が広いですね。

最終選考に残った作品がすべて載った、人魚の杯ネプリもどうぞよろしくお願いします。

全体の感想

人魚の羽杯全体を通して思ったことは、やおさん（主催）がかなり信頼されているのだなということです。
「私はコレがエロいと思います、そしてそれを短歌にします、それをツイートしてエントリーです」ってかなりハードル高いと思うんですが。すごい数の短歌（445首）が集まっていて、攻めた内容のものもかなりありました。

短歌は匿名、シャッフルされた状態で選歌しました。
さすがにこれとこれは同一人物だろうな、というニッチなフェチシズム丸出しの短歌でも、集計後に見てみると別人だったというケースがいくつかあって面白かったです。

なにしろ初めてのことなので、お前のこういうところがダメなんだ、そんなんじゃお前の短歌人生終わっちゃうぞ、他のところじゃやっていけないよ、お前のことを思って言ってるんだよみたいな話は、本当に聞きたいので遠慮なく仰ってください。DMやリプでお待ちしています。

深山睦美 2023年4月3日