団地の遊び UFOとの人生
UFO との人生
昔から、UFOはよく目撃した。これは自分だけでなく、友人たちもそう言っている。
そして、大人になっても、UFOは、よく見た。
ある時、元学級委員のRが言った。三十五歳ぐらいの時である。「家を買って、引越して、少し落ち着いたとき、UFOが来たよ。多分、様子を見に来たんだろうな」
バカじゃないか?と思う人も多いだろうが、元学級委員Rは、まじめに言ってるのである。
つまり、子供の頃から大人になっても、ずっとUFOに見られている、というわけである。
ますますバカじゃあないのか?と思うだろうが、まあ思うなら思っていただいても、構いません。
子供の頃からバカだし、大人になってもバカです。バカは死ななきゃ治らない、と言いますが、当たってます。
よって、この際、自分の経験を書いてしまうが、UFOが家に来た。
夜。というより、朝方、夜明け前のまだ暗いとき。バラバラバラというヘリコプターのローターのような音が窓の外で聞こえた。窓のカーテンの向こうから、強い光が射す。投光器を当てられてるようである。
目が覚め、起きてカーテンを開ける。眩しすぎて、なんにも見えない。しかし、確実に「見られてる」という感覚があった。そしてそれは、悪意は感じられなかった。なんとなく好奇心を持って見ている。そんな感じであった。
本当にヘリコプターなのではないか?という可能性もないわけではないが、ならなぜ民家にそんなことをするのか?
芸能人の何人かも、自分と同じ経験をしたことをテレビで話していた。
自分の友人たちも、同じことを言っている。何人かが、大人になって、同じ経験をしてるのである。
そして話は、子供の頃になる。小六の林間学校であった。山中湖に二泊三日の、修学旅行代わりのものだった。
オリエンテーリングがあって、山道を歩いた。丈高い草の道で、周りは草しか見えなかった。一本道だから、迷ってるわけではないのだが、感覚的には迷子の気分であった。
草の中の道を、ほぼ直角に曲がった。すると、先を歩いていたMM2(仮名)がいなかった。「ええっーーー!」良美ちゃんが本気で、そしてすごく驚いた。一緒にいたのは、女学級委員山岡、自分であった。
おい!出てこい!自分は草むらに声をかける。自分たちの背より全然高さある鬱蒼とした草むらである。見通しは、まったくない。
悪ふざけしないで出てきなさい。山岡が本気で言った。
静かだった。なんの音も聞こえない。草を見ても、誰かが強引にかき分けたというような形跡は、まるでなかった。
少しの間、佇んでいた。はっきり言ってどうしたらいいのか、わからない。すると、後ろのチームの奴らが現れた。
学級委員Rと三村夏子がいるグループで、いつものメンツなので、ホッとした。
ここに残る者と先生に言いに行く者と分かれましょう。山岡がRと相談し、決定する。
道は三つあると聞いていた。要するに、富士の裾野に広がる大きな草むら。オリエンテーリングで進む道のことである。なぜか、この道は全然、人が来なかった。
とはいえ、小学生である。そんなにややこしい道なわけはない。
学級委員Rたちが、先に進んだ。自分たちは、ここに残った。前に進みたいのだが、MM2がどこに現れるのかわからない。
少し先を歩いた。すると、何かを感じた。なにか、草むらとは違うニオイを覚えた。
右の草むらの中に入る。これが現在なら、スティーヴン・キングの「イン・ザ・トール・グラス」を思い出すだろう。
金属がこすれるようなニオイがした。イヤな予感がする。MM2が仰向けに倒れていた。おい!声をかけると、うーん、という呻き声がして、体を起こした。
担任のK先生が後ろから来て、MM2を抱えると、お前たちも早く草むらかろ出ろ、と言って、急いで皆で道に戻った。そして、走るように、前へ行き、集合地点の広場に着いた。
MM2は何も覚えていないと言っている。そして、またUFOにさらわれた、アブダクションだ、と言っている。なんといっても、体に発信器を埋め込まれた奴である(本人談)。
問題はK先生であった。何かを見たらしい。助けに来るのが、やけに早かった。しかし先生は、多くを語らなかった。知らないほうがいい、それだけで、決して話さなかった。
団地の西南の空には、いつも楕円形の大きな雲があった。MM2が言うには、UFOの基地だという。そして、実際、自分たちだけでなく、団地住民のUFO目撃情報は多かった。
子供の頃からUFOは身近だった。UFOの科学力は凄いだろう。バカな自分は、この年になってこう思っている。「親知らず抜いてくれないかな」
MM2は、三十歳半ばに、謎のメッセージを残し姿を消した。そして、今現在も、消息を知る者は誰もいなかった。