団地の遊び 中央公園

中央公園

 団地中央には、ストア、商店街、集会所、中央グラウンド、中央公園といわれるモノが存在した。
 中央公園と言っても、特別スゴい遊具があったわけではない。
 しかし、すりばちがあった。すりばち公園とか言われるアレである。
 すりばちの下は、広い砂場であった。そのすりばちは、場所によって、角度が違った。
 ゆるい所もあれば、八十度ぐらいの急なところもあった。
 八十度ぐらいあると、当然、そこを登ることは、できない。なので、鉄の鎖が、付いていた。その角度なら、すりばちの上から、下に飛び降りるということもできた。下が、砂なので、怪我することもなく、なかなか滞空時間が長く感じられ、楽しかった。
 でも一番楽しく、スリリングだったのは、すりばちの傾斜を駆け抜けることである。
 これは、スピードと遠心力がものをいい、いつもできるとは限らなかった。調子のいいときでなければ、成功しなかった。
 なんといっても、八十度ぐらいの傾斜だと、体が、ほぼ真横になるわけである。
 なんか今日はやれそうだ、そう思ってるときに限って、砂場で小さい子たちが、遊んでいたりする。八十度傾斜の下で。
 もし途中でコケて、その子たちの上に落ちようものなら、大変なことになる。
 前、やったときは、失敗した。やはり、一番傾斜のキツい所を突破できず、砂場に降りた。
 その日は、やれそうだった。
 なので、やった。ゆるい傾斜の所から、走り出す。全速力である。すぐにも、最大傾斜の部分に近づく。さらに加速し、一気に駆け抜ける。左側の足首が九十度近くグニュリと曲がってるのがわかる。体が、ほとんど真横になっている。手を伸ばせば、下の砂場で遊んでる子供に届きそうだ。
 そこを突破する。成功した。あとは、ゆるい坂になる。
 なかなか快感である。
 もっとも、子供の母親と思える人たちの一人が、鬼のような目でニラんでいる。
 すり鉢の横には、よくわからないデカいオブジェのようなものがあった。
 四角やら三角やら菱形の形を、したものを、くっつけたようなモノで、大きさは二十五メートルプールぐらいあった。上に登ると、デコボコしている。なぜなら、いろんな形のモノが、くっついてできた構造物だからである。
 これはいったいなんなのか。大きな溝みたいになってる所があって、そこがプールである、というのを、のちに聞いた。とてつもなく浅いプールである。子供の膝ぐらいの深さしかない。
 どこから水を引いたのか知らないが、なんか一度、水を入れプールにしたということで、写真があるそうだ。
 このよくわからない構造物で、一番よく覚えているのは、下の方に洞穴みたいになってる所があったことである。
 三角形の奥行きで、せいぜい子供二人しか入れない。ここは、なんだか好きだった。 
 しかし、好きなヤツは他にもたくさんいて、よく先を越されていた。
 缶蹴りでは、必ずここに隠れる奴がいた。真っ先に探す場所もここで、すぐバレる可能性かすごく高いのに、なぜか、小さな洞穴に入りたかった。自分も、その一人だった。
 確か、オレンジ色をしていた。言い忘れたが、形が違うと同時に色も違う。結構ハデな構造物である。
 オレンジ色の三角形の洞穴。なんか落ち着くのである。みんなもそう言っていた。
 中央公園という、立派な名前でも、あるのはこんなものであった。たいがい、誰か知らないヤツらがいて、そういうときは、あまり遊ばないので、よって使い勝手の悪い所といえた。
 少し高台になっていて、その途中の坂道は小さな木々が茂り、そのへんで銀玉鉄砲を撃ち合ったのを思い出す。
 あとで、弾を探すのか、大変だった、そんなことを、令和の世で思い出す夜だった。

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