団地の遊び 七不思議と自治会長
七不思議と自治会長
昭和時代。団地中央には、商店街があった。ストアーは今でもあった。
そのストアーの下には、地下があり、倉庫になってるという。核シェルター代わりにもなるそうだ。食糧が備蓄されている。ごく少数の人しか知らないらしい。
この件に関しては、みんなあまり関心がなかった。なぜなら、べつにいいではないか、というわけである。嘘でも本当でも、どっちでもいい。
情報源はMM2(仮名)だった。コイツは成績はいいのだが、ストアーの件はともかく、基本、超常的なものが大好きで、なんでも話をそっち方面に持っていくクセがあった。
団地に空き部屋がある。ところが、夜になると、緑色の光が窓から漏れているという。これもMM2情報である。夜十二時頃なので、さすがに出歩くことはしなかった。
MM2のウチは小五あたりで突然貧乏になったので、電気代節約のため、集会所の軒下で勉強していた。一晩中電気が点いている。なので、緑の光も見ることができた。
昼間、その一階の空き部屋を見に行ったところ、特になんにもなかった。ウルトラセブンかなんかで、夜になると宇宙人が、団地を支配しているというのがあった。そんなのの見過ぎではないか?と学級委員Rとかは言っていた。
そもそも団地七不思議ということを言い出しのも、MM2である。
その七不思議は、バカなので全て覚えていないのだが、なんとか思い出してみます。
特に七不思議ではないと思うが、一つはストアーの地下。二つめは、空き部屋の緑の光ーーーやはり宇宙人がなんらかの理由て関与してるそうだ。
三つめは、給水塔のテッペンの円盤型にいるオッサン。確かに、夜でも明かりがついてることはある。ただ、そのオッサンは、その給水塔のテッペンの、今川焼きみたいな形の所に住んでいて、五十年ぐらい降りて来ないという、だから誰もその姿を見た者はいない。
ということです。
団地中央公園にいると鼻水が出るのは、サダという妖怪のせいらしい。確かに、団地中央にいると、鼻水が出るという、わけのわからない現象は、ときおりあった。要するに、ほこりっぽいからだろう、そう言われていた。
ところが、誰が言ったか忘れたが、おそらくMM2と思うが、妖怪サダの仕業だそうだ。いったいどんな妖怪なんだ?と聞くと、人間に鼻水を出させるだけの妖怪だ、という。
ちなみに、最近、五十年たって思い出し、検索してみたところ、本当にサダはいて、つまり、サダという妖怪の存在自体は認められーーー実際問題はともかくーーー要するにいるそうです。
一番気にして、ていうか、信憑性、ていうか、みんなが避けていたものがある。集会所のトイレであった。
トイレの一番奥は、使ってはいけない、使わない方がいい、そういうのがあった。もちろん個室のことである。
これは、怪談系の話なのか、単に壊れてる系の事なのか、正直思い出せない。ともかく、一番奥は、使われなかった。
なんとなく、一回使ったような記憶がある。全然イヤな感じはせず、なんだなんもないぞ、と思った薄っすらとした覚えがある。確か、高校の時のことだと思う。バカなりに気にはしていたようである。
あとは、何があったのか。
自治会長を怒らせると、団地から追い出される。確か、そういうのもあった。多分、冗談だろう。でも、あたしの名前出しな、これで問題を解決してしまう人である。
これは、七不思議でもなんでもないのではないかと思うが、実際、高橋(仮名)自治会長は、権力を持っていたのは、確実であった。
クラスメイト高橋の母親である。
高橋は、口に出しては決して言わないが、実はいろんなことを知っていた。団地の裏事情を、自治会長つまり母親から、口止めされていたのだろう。これは大人になっても変わらず、単なる団地内の噂話を問いただしても、いつも口ごもって、ハッキリとは言わなかった。
団地では、ちょくちょくドラマの撮影が行われた。
そんな時、公団側から、高橋自治会長がいいと言うのであれば・・・撮影許可をなんで、家主でなく店子がするのか不明だが、本当か嘘かはともかく、そんなことは、いかにもありそうな話として、普通に受け入れていた。
現在、自治会長は高齢のため、引退してるのだが、その権勢はいまだに衰えず、ガードレールがあって大きなトラックが道に入れないと言ったら、集会所行ってガードレールはずす鍵もらってきな。あたしの名前出して。これで解決するのは、令和になっても、変わらない。
自治会長の話は、やはり当然、七不思議でもなんでもない。
しかし、MM2が話を強引にまとめた。
「七不思議とは、自分たちで作るものなのさ。フッ・・・」
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