なんでもない日々 壁

 高橋(仮名)は、この壁にボールを投げる。ぶつかったボールは高橋のもとに戻る。
 子供の頃から高橋は、一人、この壁でボール投げをしていた。大人になっても、投げている。かれこれ、五十年、高橋はこの壁でボール投げをしている。
 この壁は築六十年である。
 ただ、それだけのことだった。

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