団地の遊び 正月
正月
なぜか、暮れになると、新宿に買物に行った。たいがい、三十日に新宿に行って、京王デパートに行く。
子供心に、ここに来なければ、買えないものがあるとは、どうしても思えなかった。
地下にある和菓子屋で、もちろん和菓子を買っている。正月に食べるわけではなく、翌日までには、食べている。これも謎であった。なんでこの日に買いに来るのか、不思議だった。
この時代は、まだ米は米屋で買っていた。餅も米屋で注文する。すると、三十一日に、まだ切ってない四角くて平べったくて、温かい餅を、米屋が配達してくる。
餅の大きさは新聞紙ぐらいあった。それを、すでに切れ目の入ったところを包丁で切る。お椀に入るくらいの四角い餅ができる。
まだ温かく、柔らかいので、その場で食べたくて仕方なかった。なので食べた。ところが意外に中は固く、美味いことは美味いのだが、要するに中が固いのだ。
団地の正月は、特に変わったことはなかった。集会所に門松なんぞが、あったような気もする。
正月なので、団地自体、静か、というほどでもなかった。いくらか静か、という程度であった。
あまり公園で、遊んでる奴はいなかった。しかし、芝生にはいた。
団地は至る所、芝生だが、そこで何をしてるかというと、凧上げである。
なんか凧を上げてる人は多かった。たいがい、父親と一緒で、まだ低学年の子供が凧を上げている、というより、あげようとしている。まともにあがってるヤツは、あまりいなかった。凧を持って芝生を走ってる子供、というのが圧倒的に多かった。
中央グラウンドまで行くと、結構、上手にあげてる人がいる。それもかなり高くまで、あがっていて、そういう人が何人かいて、たいがい大人だった。
いずれにせよ、正月の平和な風景といえる。
当時、ゲイラカイトという、かなりしゃれた凧が登場した。なんか、ビニールみたいで、ともかくカッコいいのである。
友人のDW2(仮名)が、それを持っていて、自慢げにみんなに見せた。そして、早速、あげてみたら、確かにカッコいいだけあって、決して見かけ倒しではなく、よくあがったのだが、風に煽られ、電線に思いきりからまった。
これは、みんなで大笑いした。DW2は自慢して、カッコつけて、実際途中までは、形も決まっていたのだが、結局、電線にからまり、凧は電柱近くにくっついたままである。
上のほうなので、登って取りにも行けなかった。登れたとしても、凧のからまってる電線の所まで行くのは、かなりムリがあり、危険であった。
管轄は東京電力のはずである。もしくは、団地つまり公団住宅の敷地なわけだから、集会所にでも行けばいいのだろうか?
なんかそんな話をしたのを覚えている。
しかし結局、DW2はなんにもしなかった。すっかりいじけてしまい、もういいということになった。
本人がそう言うのなら仕方なく、ゲイラカイトは電線に引っかかったままになった。結構、長い間、そのままだった。
ウチの住んでる号棟のベランダから、からまったままの、ゲイラカイトが見えたのは、よく覚えている。
あと正月といったら、何があったろうか?コマは、年中やっていた。そんなわけで、正月だからといって、何か特別なことをした、ということもなかった。やはり、しいていうのなら、凧上げであるーーーとはいえ、べつにいつやってもいいのだが。
なんか親戚の人が、家に来た。こういうのは、正月的のような気もする。でも、正月でなくても来ることはできると思うのだが。
で、結局は、お年玉である。正月といったら、これにつきる。
結局、最後は金か。そういうわけである。
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