人類は3種類の人間に分かれた #05
通りへ出ると、何人かの人間が
歩いていた。
その服装をよく見ると、何か変
だ。
男性も女性も、なんか、下半身
が膨らんでいるように見える。
そういえば、手術着のようなも
のから、普段の服に着替えるとき、
パンツが少し膨らんでいるように
感じた。
ズボンをはいたが、パンツに違和
感がある。
街を歩いている人の中には、ズ
ボンやスカートを履かないで、パ
ンツのまま歩いている人がいる。
男性に限らず、女性もだ。
僕は思わず、歩いている人を指
差した。
「あの人見て! パンツのまま歩い
てるよ」
原口は、なんでもないと云った。
「ああ、あれは。パンツファッショ
ンだ。 別に珍しくはない」
「なんだって? 今なんと言った?」
聞き間違えたとおもい、再度聞
いた。
「だからぁ。パンツファッション
だって。 自動おむつ装置を履い
ているのさ。俺もはいているし、
君もはいているよ」
「自動おむつ装置?」
「そうだ。自動おむつ装置。
これを履いていると、トイレに行
かなくて済む。 そのまま、用を
足せばいいのさ」
はあ? 何を言ってるんだ?
良い大人が、そんな事できるのか?
「おいおい。冗談は良してくれよ。
いい大人が、そんな事できる訳な
いだろう。冗談いうのはよしてく
れ」
「いや、冗談でも何でもない。
俺はマジメだよ。この自動おむつ
装置を履いていると、大も小も、
瞬時に分子レベルまで分解してし
まうのさ」
「本当か? じゃー、音はどうす
るんだ。オナラとか出るだろう?」
「それは問題ない。パンツが吸い
付いて、瞬次に分解してしまう為、
匂いも音も出ない。無音だ」
「ええ? 用を足すたびにパンツ
が吸い付くのか? それはちょっ
と、まずい事にならないか?」
原口はおかしなことを聞くという
顔をして言った。
「何が?」
「そのう。なんだ……。感じてし
まうというか、なんというか……」
「あはは。そんな事か、俺たちは
赤ちゃんの頃から履いてるから、
なんとも思わないよ」
原口の話を聞いて、そんなもの
かと、妙に納得した。
「じゃー、ここで、試してみろよ」
と原口が、ニヤニヤしながら言っ
た。
「おいおい。今ここでか?
いいよ。 今は遠慮するよ。後で、
一人の時に試してみるよ」
原口がいうのには、この自動お
むつ装置がAIによって発明され
た当時は、赤ちゃんのおむつに適
用された。
おむつ交換の手間がなくなって、
子供を育てる家庭において、爆発
的なヒット商品になった。
売れに売れた。
大人用の自動おむつ装置も発売
されたのは当然の成り行きだった。
寝たきり老人の介護や、病院
などの分野で、爆発的に広まった。
やがて、これに目をつけたオタ
クが、自分でも履きだした。
これも、みるみるうちにオタク
の間で広まった。
オタクは男性も女性もいる。
はじめは、男性のオタクに広まっ
たが、機能性を重視する女性も、
履きだした。
こうして、その便利さから、自
動おむつ装置は街中でのファッショ
ンにまで、昇りつめた。
街中や、家の中からトイレがなく
なった。
「じゃー、君の家に行こうか」
そう言うと、原口は、首を後ろ
に捻って、自分の右のお尻に向かっ
て、しゃべった。
「アレクサ! UFOをここへ」
はあ? 何をしてるんだ、この
男は?
僕はぷぷっと笑った。笑いをこ
らえ切れない。
「おいおい、今、何をした?」
「あ。これか。僕の右の尻タブに
は極小のAIチップが埋め込まれ
ているんだ。君のお尻にも埋め込
まれているハズだ。君の右のお尻
にな。
尻の右か左かは、国によって違う。
日本人は右の尻だが、アメリカ人
は左だ。
今、アレクサと言ったのは、
AIの名前だ。OKグーグルも
いるし、Siri もいる」
以前の電脳人の僕には、チップ
などは必要なかった。もともと、
AIの存在を知らないのだから、
当然だが。
原口の説明によると、このAI
チップのおかげで、人口知能と繋
がる事が出来るそうだ。
瞬次に、5メートルほどのUFO
が僕達の目の前に現れた。
もはや、未確認飛行物体ではな
いのだが、通称として「UFO」
と呼ぶそうだ。
二人はUFOに乗り込んだ。
UFOの中はおよそ、機械らしい
ものが見当たらない。
原口がアレクサに命じると、
瞬時に目的地の家に着いた。
家の中はガランとしていて、何
もない。生活に必要な物は空間転
移装置を介して瞬次に運ばれてく
るらしい。
僕は原口に聞いた。
「ところで、何で、君はこんなに
僕に親切にしてくれるんだ?」
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