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研修転移は「転移モデル」から「越境モデル」へ
今回読んだ論文はこちら
⇒研修効果の転移条件ーアフターネットワーク理論の視点からー
研究目的
「研修効果の転移」をアクターネットワーク理論(ANT)の視点から考察して、転移条件について新たな知見を提供するもの。事例をANTの視点から分析する。
理論的背景
先行研究においては、研修転移の条件として「職場のサポート」「施行機会の有無」「日常業務への適合」などが挙げられていた。これらは主に人的要因を対象としたもので、そこには非人的要因への考察が欠けている。
そこで本研究では、「社会的事象を様々なアクター(actor)が参加するネットワーク」として理解する「アクターネットワーク理論(ANT)」を用いて考察を行う。
ANTについてもう少し詳しく書く。平易に言えば、人を個人として捉えるのではなく、その周囲のモノや人とのネットワークとして捉える考え方らしい。例えば、「有能な研究所の所長A」は、Aのみではなく、Aを取り巻く様々な人工物(筆記具、メモ、PCなど)やその周囲の人物(同僚)がAと一緒に業務を行うことで、「有能な研究所の所長A」が構成されている(Callon & Law, 1997~1999)。
つまり、Aだけでなく、その周囲の人やモノによって、人の能力の可能性は変わる。この視点は「個人が発揮する能力を、個人の内側にある何かと考える在り方」に変更を迫るものである。
結論
研修転移は、研修場面での内容を現場でそのまま適用する「転移モデル」から、異なる文脈を結びつけて活用する「越境モデル」へと変化する必要がある。そして研修と現場の2つの文脈を繋げる要素を、ANTの視点から無理のないネットワークを構築することが重要となる。
例えば、ツール開発においては「受講者+ツール+業務+周囲の環境」が上手く構築されない場合、ツールは置いてきぼりの結果となる。またマインドの開発についても、どのように現場の要素を使って、学んだ内容をネットワークに埋め込むが重要になる。
有効性
今回の研究では、理論的に過去研究を考察しているだけなので、有効性の証明はできていない。
面白かったポイント
・アフターネットワーク理論を用いることで、「個人が発揮する能力を、個人の内側にある何かと考える在り方」に変更を迫るという点
・転移モデルから越境モデルへの移行。ただ方法は具体的には明示されてない。現場の改革が必要とだけ
・ツール開発とマインド開発には応用できそうだが、知識系やスキル系には微妙?
※次に読むべき論文=香川(2015)
雑記
試しに論文のまとめに使ってみた。引用の仕方とか、内容の妥当性とか、どこまで噛み砕いて読み物にするかとか、悩みどころは尽きない。一旦は自分のメモ用としてます。
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