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器用貧乏な人は爪を隠しておくべし

「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があります。これは本当に能力のある人はそれを無闇やたらに見せびらかさない。という意味ですが、その奥深さを痛感した事があったので、ご紹介したいと思います。

IT業界に身を置く自分は色々なツールを駆使し、様々な業務をこなします。例えば営業職なのでPowerPointを使って提案書も作りますし、Excelを使って数字の管理や種々帳票を作成します。画像の加工はGIMPを使い、ホームページの更新はWordPressを使います。SEO対策も行う事もあれば、サーバの構築もします(営業職なのに)。オンライン展示会のコンテンツ作成や、会社案内や各種チラシの更新、種々情報の分析、新規顧客の開拓、エンジニアが足りなければドキュメントのレビュー、プロジェクトのマネジメント、現場の作業も行うといった始末。

この様に粒度がバラバラで幅広い業務に対応するのは、営業職という職種が経営と経理以外全ての業務に関わるという側面と、なんか色々な事が出来てしまう。という理由からです。そして、何でもかんでも対応している自分自身に対して気持ち良くなっていたのでした。

しかし、世の中には「何でも出来るとは何にも出来ないと同意である」といった意味の言葉が存在する様に、飛び抜けたスペシャリスト的な能力が無いと今の世の中では不利だという事に気付かされました。それは1人の人間の時間は皆と同じ24時間しかないという所に起因します。

どういう事かと言うと、色々な事が出来ると知られた途端、様々な人から相談を受けます。そして、自分の時間が驚くべき勢いで消費されていくのです。2人からの相談とその対応であれば問題ありませんが、20人から全くバラバラな内容の相談を受ければどうでしょう?自分の限られた時間があっという間に無くなるだけでなく、自分の24時間を20人に対して割り振る訳ですから、当然の事ながら1人1人に対応する時間は限られ、相談してちょっとだけ助かったと思ってくれる20人が出来上がります。もし2人からの相談であれば相談して本当に良かったと心から感謝してくれる人が2人も生まれるのにです。

こっちは1人、それを1対nで対応すると出来る事は限られ、結果として時間を費やして対応した事はすぐに忘れ去られます。忘れ去られた時間は何もやっていないという評価に落ち着きます。更に悪いことに時間をかけられない中途半端な対応になってしまえば、本当のスペシャリストから思いもよらない指摘やクレームが来るかもしれません。しかし、じっくり時間をかけて対応した2人からは長い期間記憶に残り、恐らくその成果もしばらく生き続けるでしょう。もし自分が色々な技術やアイデアを持っているとしても、軽々しく皆の前で披露しない方が良いと思います。ここぞといったタイミングになったら、その時初めて吟味した能力を明らかにする。すると相談される事や任される事が自然に選別され、非常にシンプルかつ有意義な時間配分が出来るでしょう。

「能ある鷹は爪を隠す」これを頭の片隅に置き普段の業務に携わると、自分自身も楽になるし、後々の結果として思った以上の評価が下される事になる。そんな気がしてなりません。


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