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Journal du 11 août

十時前に起きて、バイトのまかないの豚炒めとごはんを食べて、タバコとアイスコーヒーと米を買いに外に出る。近くのコンビニに行くつもりで自転車で家を出たが、米を買わないといけないことを思い出し、ジーンズと黒Tシャツというラフな格好で百万遍にいった。ゆるっとしたサイズのTシャツにサンダルでコンビニに入ると、地元の人みたいだ、と思う。百万遍はお盆だから家族連れが多い。三世帯がちゃんと揃っている。あとは帰省しない学生がちらほらといる。三世帯が揃っていることには特別感がある。それはまるで、ナイフとフォークとスプーンが用意された格式高いフランス料理のようなものだ。

コンビニでアイスコーヒーを買う。片手で自転車を押し、もう片手でアイスコーヒーを持つ。ドラッグストアに米を買いに行くために、アイスコーヒーを自転車の籠に入れようとして、誤って倒してこぼしてしまった。コーヒーの発酵臭が焼けた地面からたちこめる。

五キログラムの米を籠に乗せて、隙間にアイスコーヒーとタバコを詰めて、立ち漕ぎで家に帰る。

時々窓がガタガタというから、風が強いのかもしれない。バイト先の、古民家を改装した居酒屋の、離れにつづく横開きのガラス扉がある。遠くてぴゅうぴゅうという隙間風が聞こえる。ガラス窓に近づいてみる。光に透かしてみると指のあとが白くなっている。秋の雲のように薄く伸ばされている。お盆が終わると、僕の頭のなかはもう秋が近づいてきていることでいっぱいになるだろう。お盆が終わると、あとはその狂騒を引きずるようにして、自転車で坂を下るように、惰性で時間が進むのだろう。そうして夏休みが終わるのだろう。

昨夜は書店で大学受験の参考書を選ぶ夢をみた。高校二年の夏、ということになるのだろうが、頭脳は大学五年生のつもりだった。久しぶりに受験生活に戻ってきた、六年経って進化した頭脳でバリバリやってやるぞ、と気合が入っていた。高校二年だから、古文漢文に手を出すよりもまずは数学の基礎を固めるのが良いだろうと思い、数学の参考書の棚を見る。チャート式や黄色い背表紙の参考書がきれいに揃えられて陳列されている。チャート式、懐かしい響き、遠い友人の名前を呼ぶようだ。赤、青、白、黄色。歩行者信号が点滅するのに焦らされて走り出す三世帯の家族。夢から覚めて、僕はもう受験生ではないという当たり前のことに気づいた。

(日本語:921字)

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