Journal du 7 août
柳の木がゆれている、今日は割りと涼しいかもしれない。出町柳の喫茶店でアイスコーヒーを頼む。モーニングの時間だから、店内にはイーズなピアノが流れている。気温が上がる前に帰ろう。そう思って時間を計算しつつ作業を始める。
ご飯に海苔をのせて、醤油をかけて食べる。父親は納豆ご飯にして食べている。仙台のビジネスホテルの朝食会場で、旅の最終日の朝ごはんをとる。夏休みに僕は父と東北旅行に出かけた。新潟を北上して由利本荘、田沢湖に泊まり、岩手に出て盛岡、平泉中尊寺、そして仙台までたどり着いた。
朝食が済むと父の車で海のほうへ行く。地面は遠くまでまっさらだった。四角い区画を何度も曲がって、父親は何かを探していたようだった。飛行機がスローモーションのように地面の上を飛んでいた。
モーニングが終わり、喫茶店にはいつものアメリカのポップミュージックが流れる。真ん中の円卓に座っている二人の老婦人は、聞き手と話し手がはっきり分かれるタイプの老婦人だった。ナポリタンのベーコンとチーズが運ばれてくる。
東京の実家では、いつも昼食にナポリタンが出てくる。うちの家族はそれぞれのタイミングで昼食をとるのだが、母親はそれが嫌いだった。キッチンの換気扇は、ゴーという音を立てて、できたてのナポリタンを吸い込んでいる。
東京の西部は住宅街だ。二三区から放射状に伸びる横糸に、関東圏を環状に走る経糸が組み合わさる。そのマトリックスのなかを、明滅するある一点の光が通り過ぎる。
京都の河原町の丸善でゾラの対訳、リルケの対訳とドイツ語文法の本を買う。何となく聞いているアルバムは、アントニオ・カルロス・ジョビンの"wave"。ジャケットのキリンがまっさらな平面を特に目的もなく無為に走っている。自転車で鴨川を遡上して家に帰る。そのあと大きな台風がきて、家に閉じこもる日々がしばらく続いた。
この前買ったバルサミコ酢がもうなくなった。焼き鳥にバルサミコ酢とローズマリーをかけてイタリア風にして食べる。これなら焼き鳥だけでも飽きずに食べられると思ったら、バルサミコ酢のほうが先になくなってしまった。仕方がないので、黒胡椒とわさびを出してくる。机の上に置いてどちらで食べようかと考える。昨日はクロコダイルの背中に黒胡椒を振りかける夢をみた。
階段を登って土手に上がると、武蔵小杉のビル群が見える。多摩川。ガス橋の下には菜の花が咲いている。橋の上からみると、軽トラックがゆっくりと土手を走ってくる。近付いてくると、軽トラックの荷台にはピッチングマシンが載せられていて、その背中の発信機が赤く点滅していた。
(日本語:1024字)
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