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小説『エッグタルト』

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高校で吹奏楽部に所属している太田と、数学オリンピックに出場することが決まった女子高生、川野さんの話です。
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2020年4月の記事一覧

小説『エッグタルト』第三章

 次の日、昨晩の猛練習で疲れ果てていた山田は、昼休み中に自分の席で突っ伏して寝ているようだったので、俺は早々に弁当を食べ、図書室へと向かった。特に読みたい本があるわけでもないのだが、昼休みの残り時間に教室で一人で過ごすのも嫌なので、そういったときはいつも図書室で本を読んでいるふりをして過ごしていた。
 図書室で、さまざまな種類のスポーツについて説明している本があったので、読んでいたら時間潰しになる

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小説『エッグタルト』第二章

 授業が終わると、クラスメイトたちが、先生に指摘されていたことをからかってきた。
「太田って真面目なのに、なんかいつも先生とかに怒られてるよな」
「うるせえよ」
 確かに俺は昔から、何かと先生に怒られていた。なぜなのだろう。ちゃんと真面目に生きているはずなのだが。次の授業は、移動教室だった。移動する際、川野さんとすれ違った。そういえば、川野さんはなんの部活をやっているのだろうと思い、声をかけてみよ

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