小説『エッグタルト』第二章
授業が終わると、クラスメイトたちが、先生に指摘されていたことをからかってきた。
「太田って真面目なのに、なんかいつも先生とかに怒られてるよな」
「うるせえよ」
確かに俺は昔から、何かと先生に怒られていた。なぜなのだろう。ちゃんと真面目に生きているはずなのだが。次の授業は、移動教室だった。移動する際、川野さんとすれ違った。そういえば、川野さんはなんの部活をやっているのだろうと思い、声をかけてみようかと思ったが、相変わらず俯きながら通り過ぎていってしまったので、その後ろ姿をぼんやりと見ていた。
授業を終え、部活が終わったころには、もう十九時を過ぎていたが、グラウンドを見ると、サッカー部はまだ練習中のようだった。サッカー部は都大会でもよくベスト16まで残るような、そこそこの強さがあるのだが、体育会系の部活は練習時間が長くて大変そうだな、と毎度思う。
山田は、二年生ながらFW(フォワード)のレギュラーらしい。一年生のころは、先輩たちから生意気だ、などと言われしごかれていたらしいが、熱心に練習をするので、今は周りから認められているらしかった。あ、またシュートを決めた。髪を靡かせながら。なぜ髪型まで格好がつくのだろうと、特に特徴もない自分の髪をつまみながらそう思った。山田は練習に集中していて、こちらに気づいていないようだったので帰ることにした。
帰る途中、コンビニに寄ってアイスを買った。当たり付きのやつだ。まだ当たったことはないけど、なぜかいつも買ってしまう。今日はどうだったかな。外れた。
誰か、アイスの当たりを引く確率論などを導いて俺に教えて欲しい。川野さんやってくれないかな。当たりを引いたところで、面倒臭くなって捨ててしまうかもしれないが。こういうものは、当たったという事実そのものが嬉しいものなのではないだろうか。当たったことはないので知らないんだけど。
寝る前に、今日山田から聞いた川野さんの数学オリンピックの話を思い出した。俺は、理系科目がてんで駄目なので、一体どんな世界なのだろうと皆目見当もつかないが、話す機会があればどんな感じなのか聞いてみようと思った。そもそもなんでうちの高校に来たのだろう。そういうことまで聞くのは野暮だろうか。そんなことをぼんやりと考えながら、寝てしまった。