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茅葺職人見習のはじまり 第10話

22.04.13(水)
今日は弁当をつくる当番だったので、6時ちょうどに起きて豚肉を炒めることからはじまった。
今日から親方が復帰したので、いつもよりも緊張感があった。前日に研究室時代のボスと親方が打合せの機会で初対面したみたいで、なんだか不思議な感じがした。前ボスから現ボスに、遠慮なく鍛えてやってくれ的なことを言われていたみたいで、気が引き締まった。
久しぶりの親方の第一声は、てぬぐいのプレゼント。(Fig1)
てぬぐいにも大きく描かれているが、社名が好きだ。Earth Building / 地球人具。大学院時代に、建築家・岩崎駿介さんが「地球に何かつけ足すとしたら、美しくなければならない」という言葉をレクチャーの中で話されていたことを思い出す。建築という地球に何か付け足す行為をしたいという気持ちは昔から変わらないが、岩崎さんの言う美しくなければいけない=「建築とは何か」という問いに対する自分の答えが茅葺であった。茅葺屋根の建築は美しいと思う。生態系にとって重要な茅場をつくり、素材を獲得し、屋根にする。古くなった屋根は解体し、土に還り我々が口にする食材をつくりだす恵となる。茅葺屋根はだから美しい。デザインの可能性も含めて自分の建築人生の中で追求していきたい素材である。

Fig.01 地球人具のてぬぐい

午前は、ガンギを使って3段目の茅を叩き直すところからはじまった。ガンギの使い方がいまだに慣れないので、先輩や親方の手つきをじっと見る。やはり音が違う。重たい道具を軽そうに扱うし、見るだけではなかなか理解できない。その後、おしぼこをとって、茅の荷下ろしを行った。茅の運搬が一番体力を使うのでキツイ。目の前では、農家の人たちがタケノコ堀の休憩に燻製でベーコンを作っていた。
午後からは、屋根裏に回り、はり受けの作業を行った。受け手である人が、小屋組の梁を馬乗りになって動きまわり、屋根から来る針の縄を受け取り、垂木にかかるようにして再度縄を針に通し、おしぼこを垂木にむずびつけていく。屋根の人からは、小屋組の様子が分からないので、感覚的に針をさしていく。垂木からの距離が遠い場合は受け手側が「2寸(約6.06cm)左にお願いします」のように答える。感覚とコミュニケーションによって進め行く所業である。屋根裏は埃がたまっているので、マスクは必須であり、下に落ちる可能性もあるので他の作業よりも慎重に作業していくことが求められる。という感じで今日のメモをスケッチとともに書いた。(Fig.2)

Fig2.現場メモ

明日は天気予報によると雨予報なので、仕事が休みになった。休みはうれしくもあるが、日当制の仕事なので、雨が続くと生活がしんどくなる。雨が降るということで、今日は現場の片付けの際に、ブルーシートで覆って帰った。(Fig.3)

Fig.3 ブルーシートで覆われた屋根


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