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囚人のジレンマにおいては全確率の公式(サヴェッジ当然原理)が破れる Shafir-Tversky 1992



(量子確率論と囚人のジレンマにおけるLTP やsure-thing principleの破れの関係に興味がある場合はこのリンクを参照)

Shafir-Tversky 1992 の囚人のジレンマ(one-shot anonymous Prisoner's Dilemma Game)のデータの紹介:LTP(STP)が成立しない(=囚人のジレンマにおける行動実験のデータがコルモゴロフ確率論やベイズ統計の守備範囲外である)ことが報告されている

[囚人のジレンマの予備知識チェック]
以下の文を正しく修正するとどういう文になるかわからない人、どこがまちがっているかわからない人、それから囚人のジレンマにおいてなぜ協力確率>0の混合戦略によるナッシュ均衡が存在しないのか、その理由がわからない人は、まずこのリンクでおさらいすること。

誤1:「囚人のジレンマとは、互いに協力することがどのプレーヤーにとっても(自分にとっても相手にとっても)最適なのに、プレーヤーたちが合理的だと相互非協力に陥ってしまうゲームである」
誤2:「囚人のジレンマにおいては、相手が協力してくれるなら、自分も協力したほうが(自分にとって)得であるのに、相手が非協力してくるかもしれない可能性があるので自分も非協力したほうが(自分にとって)得である」

本題は以下から始まります:


以下に日本語で上記のデータの説明をする

(英文の緑文字の説明はこちら


LTP law of total probabilityは成り立つだろうか
この判別不等式を用いると、否である。以下に実験データを代入して直接計算により矛盾を証明する。


比較:ランダマイザーを用いた選択を被験者(実験参加者)が行ったら(=インセンティブに反応せずデタラメな選択をしたら)どうなるか →LTPが破れない(つまりnoisy decision makerのデータを測定した場合は、コルモゴロフ確率論やベイズ統計でそのdatasetを解析することが許される) ということの例証2つを以下にしめす それぞれp=1/2, 1/6の場合のp-一般化当然原理に対応する。


比較その2:合理的な(selfish utility maximizer)被験者(実験参加者)の行動データがLTPやSTPを破らない(=合理的な被験者実験参加者たちの行動データをコルモゴロフ確率論やベイズ統計で分析することが許されている)ことの証明(直接計算)これはp=0の場合のp-一般化当然原理に対応する。

残された疑問:以下のLTP(=実験データにおいて矛盾が生じた上記⑦式)の導出(式変形)の何行目が”間違っている”(Shafir-Tversky 1992の設定ではやってはいけない数式さばき)のだろうか?

[残された疑問の答え]:証明の一行目の等号がすでに「間違っている」(必ずしも成立しない)。この1ステップで「間違っている」のでそのあとすべてが「不成立」である。
→度数分布表をもちいた解説はこちら 確率空間を用いた説明はこちら

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