「功利主義(効用主義Utilitarianism)」の“間違い”(バートランド・ラッセル「西洋哲学史」より)
選好関係からnormativeな結論が導ける、という間違った主張がすでにジョン・スチュアート・ミルにおいて存在していた、とバートランド・ラッセルが指摘しているので紹介する。バートランド・ラッセルはケインズの学友であったため、経済学に関する知識を持っていたし、彼の師匠は倫理学者ムーアであり、真・善・美といった概念を、快という感情や心地よさ、人々に避けられずに選ばれやすい性質がある、などのような「自然の性質」に帰着させることを「自然主義的誤謬(naturalistic fallacy)」であると指摘した人であるので、ジョン・スチュアート・ミルの概念的混同に敏感に反応して著作で指摘したのであろう。また、バートランド・ラッセルの名付け親はジョン・スチュアート・ミルであり、親交があったので、ラッセルがミルの思想を誤解したのだ、との解釈も妥当性が低いだろう。
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