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調整や社内政治はBullshit Jobか?ジェネラリスト重視の弊害

さて、Bullshit Jobがなぜ高学歴、高収入の間で蔓延するか、みたいなことをずーっと考えてきたのですが、その理由の仮説の一つに「間違った人事施策がBullshit Jobを生み出してるんじゃないか?」というのがありました。

当初の4つの仮説のうちの一つ。

この仮説は、最初のBullshit Jobについての記事を書いたときに知り合いからもらったコメント:

戦前の軍部の暴走からの敗戦を反省した結果としての「シビリアンコントロール」を曲解した結果としての、「ジェネラリストがスペシャリストを従える」をはき違えた「ド素人考えを正しいとする空気」って切り口を検討してほしい

について検討するものです。

日本ではジェネラリストが偉い?

このコメントにあるように、どうやら日本の組織ではジェネラリストが出世する傾向にあるような気がします。(日本特有の現象かどうかはもっと深いリサーチが必要そうですが。。。)

たとえば、アメリカとかだと、理系のエンジニアだった人が組織のトップになる、というようなことが結構ありそうです。GAFAMのうち、GとFとMは技術者が創業者ですし、Gは創業者2人の後にマネジメントを引き継いだエリックシュミットも技術者だし、テスラのイーロンマスクもそうだし、、、みたいな感じです。

一方日本だと、大きく伸びてる会社でトップが技術者出身のところってどこなんでしょう?僕がパっと思いつくのはプリファードネットワークスくらいかもしれません。

また、ジェネラリストにならないと出世できない、みたいな雰囲気もある気がします。

僕はもともとシステム系の部署で働いていたこともあるのですが、技術が好きで好きで仕方なく、人間はぶっちゃけ苦手、という人は、素晴らしい技術力を持っていても出世できない傾向にありました。

というか、給料上げてもらうためには出世しないといけなくて、出世すると管理業務(マネジメント)をやらされる、という風になっていました。

技術が得意な人には技術を担当してもらって、そこで大きな価値を出してもらって、高給を払えばいいと思うのですが、もったいないなあ、と思ったりしていました。

いずれにせよ、日本ではジェネラリストの方が偉い、みたいな雰囲気がある気がします。

ジェネラリストは必要だが・・・

ジェネラリストは必要だと思います。なぜなら、全体最適を担保する人が組織には必ず必要だからです。法律のスペシャリストと、営業のスペシャリストと、技術のスペシャリストと、財務のスペシャリストだけでは会社は回りません。それを束ねて、だれの意見をどこまで聞いて、それらをどう組み合わせて、実際の行動、Next Step、打ち手、につなげていくのかを決める人が必ず必要です。

が、その人には各スペシャリストの話を詳しく聞いて、どのピースをどう組み合わせたら最適解になるかを導く力が必要です。どのスペシャリストが本当のことを言っているのか、どのスペシャリストが誇張しているのか、どのスペシャリストが自分の立場を守るために発言しているのか、などを読みとく力も必要でしょう。

これはとても難しいことだと思います。理解力とか頭の回転の速さとか、対人スキルとか、胆力が求められそうです。

ジェネラリスト=全体最適を担保するスペシャリスト

なので、ジェネラリスト=素人ではないでしょう。ジェネラリストとは、全体最適を担保するスペシャリスト、と言い換えることもできそうです。

ですが、コメントでもいただいたように、ジェネラリスト重視が勘違いされて「素人の意見も大事」「スペシャリストの言うことは個別最適しか担保してないから軽視」みたいな雰囲気が漂うと、問題が起きます。ここにBullshit Jobの発生の起源がありそうです。

スペシャリストの話を聞かないジェネラリストにできること:パワープレーと政治

スペシャリストの話を聞かない(or聞く気がないor理解する能力がない)ジェネラリストができること(orやりがちなこと)があります。それが、パワープレーと政治です。

例えば、プロジェクトAを進めるときに、いろんなスペシャリストがいろんな意見を言うはずですが、その時に、「とりあえずなんでもいいからやれー!」「なんでもっと早くできないんだー!?」「やれー、気合い入れてやれー」となる。(パワープレー)

本来なら、「Aが進んでない原因はB、C、Dなので、それを解消するためにはE、F、Gという施策を打ちましょう、そのためにスペシャリストAさんは~を、スペシャリストBさんは~を、スペシャリストCさんは~をいつまでにしてください、できそうですか?」みたいな感じで上手くまとめていくべきなのに。

もしくは、「どうにか早くすすめてくれないかな、評価よくしとくからさ」「Aを進めるのに賛成なBさんとCさん、ちょっと別部屋でミーティングしません?」みたいなこともおきそうです。(政治)

パワープレーと政治には具体的な指示がない

パワープレーと政治からは、具体的なタスクが何も生まれません。そうすると、各スペシャリストが、「無理なんだけど、まあ社長がやれって言ってるからやるかー」となって、成功見込みのない意味のない仕事をだらだらとやる、成功見込みがないと分かってるから自分の仕事にも見出せない。

そして、どうせ提言しても何も変わらないから、何も提言せずに、とりあえず仕事して給料だけもらっとこー。となる。怒られるリスクを背負って提言するのもアホらしいや、と。

Bullshit Jobの出来上がりです。

ジェネラリストの意義

ジェネラリストは必要と思います。調整はとても大事な能力だと思います。全体最適を担保する役割は組織に必ず必要と思います。

でもそれは、別に特別「偉い」わけではなく、スペシャリティの一つだと思います。エンジニアに専門性があるように、ジェネラリストには「全体最適を担保する」という専門性があるべきです。

なので、給料も同じでいいと思います。

実際、最近のIT起業なんかでは、社長より高い給料をもらっているエンジニアもたくさんいると思います。

適切なジェネラリストを意思決定層における組織では、Bullshit Jobも少なくなるのかもしれません。

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