VR空間内でミュージックビデオの撮影 実際のスタジオで感じた バーチャル・プロダクション のメリットとは?
コロナ禍で人と人との接触を避けながらリッチな演出ができることなどから、バーチャルプロダクションという撮影方法が盛り上がっています。元々、ハリウッドの映画などでは数年前から使われている手法ですが、VRデバイスの進化により、今日では、低コストでのバーチャルプロダクションが実現できるようになりました。
ここ記事では、上記の低コストで実現できるバーチャルプロダクションについて、実際に背景を制作した立場から、その面白さや可能性、メリットについてまとめていきます。
今回は、Youtubeで再生回数などを含め、5つのギネス記録を持っているBLACKPINKのHow you like thatのRespect Copy MVの背景をCGにて制作させていただきました。
バーチャルプロダクションとは?
バーチャルプロダクションは、現実のセットなどなしで、バーチャル空間のなかで、実写の撮影とほぼ同じように撮影を行える技術です。言葉よりも動画でみた方がわかりやすいと思います。
これまで、映画や映像の撮影では、主に二つの方法で撮影が行われてきました。
1つ目が、リアルなセットや小道具、背景などを多くの人が多くのコストをかけて制作し、それを用いて撮影を行う方法です。例えば、映画タイタニックでは、船を初め多くのセットが作られ、合計30億円の予算が投じられたそうです。
2つ目がスターウォーズのように、背景をCGを用いて合成する方法です。この場合、実際にセットがなく後からCG合成を行うため、その場では、どのよう映像が最終的に出来上がるかがあまりイメージができず、また、カメラマンも実際の背景をイメージしながら撮影し、CGアーティストは、撮影された動画素材に合うように、背景をつけていきます。そのため、実際にCG合成されて出来上がった映像を監督が確認できるのは、撮影から時間がたった後です。
実写のセットを利用した場合は、その場で背景の見え方などを含めて監督や関係者がすぐに確認できます。また、演者も自分がどのような場所で演技して、周りに何があるのかが明確にわかるため、演技の幅が出ます。
このように現状の撮影方法では、CGを使わない場合は、作れないシーンや予算がかなりかかってしまう、CGを使った場合は、その場ですぐ映像を確認できないというデメリットがありました。この二つの問題を解決できるのがバーチャルプロダクションです。
バーチャルプロダクションでは、バーチャルな背景を用いるため、実際のセットを運んだり買ったり作ったりする必要がありません。また、撮影はリアルなカメラを用いて行うのですが、このカメラに取り付けられたセンサーによって、バーチャル空間のどこにカメラがあるのかを常に取得し、カメラには、バーチャルに作った映像がその場で確認できるようになっています。(VRのヘッドセットで、みれる景色をカメラに映し出しているとイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。)そのため、撮影した映像は、その場で監督や演者、スタッフを含めて確認でき、バーチャルな背景の色味や物の配置などもその場で簡単に修正ができます。これがバーチャルプロダクションの強みです。従来までの実写撮影とCG合成の撮影のいいところだけを取り入れて撮影ができます。
そのため、バーチャルプロダクションは、リアルとバーチャルが遭遇する場所と呼ばれることが多いです。
例えば、スターウォーズのドラマシリーズ、マンダロリアンではこのバーチャルプロダクションで撮影が行われていました。(今週からシーズン2が放送される!!)
バーチャルプロダクションのメリット
ここまでで、バーチャルプロダクションがハリウッドなどで使われ初めてきた、大きな理由を紹介してきましたが、実際にバーチャルプロダクションの制作現場で、感じた細かいメリットなどをここではかいて行こうと思います。実際の撮影の要素やセットアップに関しては、こちらの動画にまとめさせていただきました。(今回は、HTC VIVEとUE4を用いて実現しました。)
- 低コストで豪華な背景を実現可能
今回僕らでは、以下の4つの背景を制作しましたが、実際のリアルなセットを作ると、CGで作るよりも長い期間と10倍以上のコストがかかると思います。
- VRで体験できる。
作った背景は、VRのデバイスをつけてその中に入って、上記の画像の空間で踊ったり大きさを確認したり、歩き回ることができます。そのため、撮影前にVRのデバイスをつけて、どのような場所で撮影が行われれるかを予め体験することや、バーチャル空間ないで、実際の背景を使って演出などの議論をすることができます。
- カメラのトラッキングの作業が必要なくなる。
CGを後から合成する際には、撮影された映像のカメラの動きをCGソフト側でもう一度再現する必要があります。通常これは、CGソフト側で自動でやることができますが、精度やばらつきもあり、バーチャルプロダクションでは初めからカメラに映像がついてくるので、後から行う処理が簡略化できます。
- 撮影現場で、バーチャルな背景をその場で編集したり、ライティングや動きを変えることができる。背景の大きさや位置がリアルタイムに把握できる。
などです。
最後に
バーチャルな空間での表現というのは、これからさらに広がり、できることが広がってくると思います。その可能性を信じ、一緒にバーチャルな体験を更新していける仲間を募集しています!! もし興味を持っていただけたら、ご連絡いただけるとありがたいです! よろしくお願いします!!
(twitter @r_etx)
今回のHow you like thatのRespect Copy MVは、goraku株式会社さんがxR lab.を開設し、行われているプロジェクトの一環です。バーチャルプロダクションに興味がある方は、是非、gorakuさんにご連絡ください!!