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揚/Yo_Interview.擬似民族音楽、拡張されたリフの美学
2023年11月にインディペンデントレーベル造園計画から1stアルバム『WORLDWATCH』を、2024年5月に2ndアルバム『After Dark Tour』をリリースした電子音楽家、揚(yo)。
彼の音楽性を特徴づけるアブストラクトなダブサウンドにインダストリアル〜トライバルなサインドメイク、それらは10年代に多くの電子音楽家たちがとっていたスタイルと共通のもののようにも思えるが、しかし彼はそれらの潮流とはまったく関係なく現在の音楽性に辿り着いたという。その独自のスタンスとプロフィールを掘り下げるため、インタビューをおこなった。聞き手は造園計画の島崎。
①揚について、水墨画、ダブ、ゲームサントラ
まずは揚の活動を始めた経緯を教えてください。
揚:もともとユーフォリアという、自分が打ち込みとギター、もう一人がベースという二人編成のダブ・バンドをやっていたんですけど、2020年くらいに「いい感じの曲を作ってインスタにあげたら売れないかな?」と思って一人で音楽を作り始めたんです。それは明るいダブエレクトロニカみたいな音楽だったんですけど、早々にそういう音楽が作れなくなっちゃって…(笑)。結局途中で開き直って作りたい音楽を作るようになって、今みたいな音楽になりました。
ではその売れ線(?)のダブエレクトロニカをやめた後に揚という名義で活動を始めたということですね。
揚:そうです。『四塞』という曲があるんですけど、それを出したタイミングで、名義を揚にしました。この『四塞』というタイトルは、黄霧四塞という中国の言葉からとっています。黄色い霧というのが天下が変わる時の予兆みたいなものらしくて、要は乱世に入っていく感、みたいな意味を持っている言葉なんです。当初は『四塞』とセットで『黄霧』という曲も出す予定だったんですけど、『黄霧』は頓挫してしまいました。
四塞
なるほど。ところで揚という名前の由来はあるのでしょうか?漢字一文字というのは、ちょっと珍しいですよね。
揚:そうですね。名前を考えている時に、何かネタがないかと曲のタイトルであったりゲームであったり故事成語であったり、色々見ているうちに、水墨画にたどり着きました。アブストラクトなイメージと、うねる墨の黒のベースっぽさが結構自分の音楽と近しいと思ったんです。それに「破墨」とか「撥墨」といった技法の名前もカッコよくて、水墨画の絵を色々検索して見ていたんです。その中で「拙宗等揚」(*1)の名前が出てきて、そこから取って「揚」としました。なぜ揚を取ったのかというと、自分の本名にも「よう」の読みがあって本名に近ければ名前に飽きたりしないかな、と思ったんです。
*1拙宗等揚(せっそうとうよう)
室町時代の水墨画家。同時代の画家、雪舟等楊(せっしゅうとうよう)の前期作品の名前であるという説と、別人説がある。
単にオリエンタリズムということではなく、自身の本名と紐づいているのは面白いですね。ではどういう音楽に影響を受けて、今のような音楽性にいたったのでしょうか?
揚:Ratville、GOTH-TRAD、『EVERGRACE』のサントラ、完全にこの三つです。
おお、ずいぶん明確なんですね!ではまずRatvilleについて詳しく聞かせてください。
揚:Ratvilleはドラムとギターとマシーンの三人編成のベースレスのダブバンドです。そもそも、Ratvilleを聴くまでいわゆるダブと呼ばれる物をちゃんと聴いたことがなくて、Ratvilleを始めて聴いた時、ダブミックスの浮遊感やグルーヴ、情景の見える音、すべてが初めての体験で、非常に衝撃を受けました。
具体的にRatvilleのどういう部分に影響を受けたのでしょうか?
揚:聴くたびに新しい発見があって、アルバムを未だに聴きおわれないくらいなのですが、多彩な音が浮かんでは消えていく中で、演奏そのものは非常にシンプルでミニマル。ベースは一曲に対してほぼ1リフで構成されています。でもそのシンプルさから生まれる一貫した強いグルーヴにとても憧れています。Ratvilleはベースレスバンドですが、彼らの打ち込みのベースは非常に参考にしています。
自分で曲を作っていてアイデアが浮かばない時は、展開や音を色々足して試行錯誤を繰り返すこともあるのですが、そういう時はRatvilleにならって、構成をシンプルにして、エフェクトと音の抜き差しだけでやってみようと思い直すようにしています。曲作りの方向性を決める指針ですね。
それとギターのトーンもとても好きです。乾いていて枯れた質感で、でもしっかりと鳴っている。さらにその音で鳴らされる単音リフがカッコ良すぎて、聴くたびに自分もそういう曲を作りたいなと思います。
揚の音楽にギターの単音リフが多いのはRatvilleの影響なんですね。ではGOTH-TRADはどうでしょう?
揚:GOTH-TRADはダブステップのトラックメーカーです。元々ベースがいるバンドをやっていたので、普通の打ち込みでベースを入れると「生の方がいいじゃん」ってなっちゃって、打ち込みで作曲をするときのベースにずっと困っていたんです。最初はトラップみたいな低いサイン波を使ってたんですけど、そのうちGOTH-TRADを通して、いわゆるワブルベースを聴いてかっこいいなと思って、そこからワブルベースを積極的に使うようになりました。
ワブルベースは揚の音源のそこかしこで出てくるグワグワしたベース音のことですね。
DROP BEATER
揚:そうです。彼はもともとREBEL FAMILIAという、ベースがダブレゲエバンドのDRY&HEAVYの秋本"HEAVY”さんで、GOTH-TRADがマシーンの、二人組バンドをやっていたんです。DRY&HEAVYからREBEL FAMILIA、そこからGOTH-TRADという流れでGOTH-TRADにたどり着きました。
ではクラブミュージックというよりは、ダブバンドが好きだったわけですね。
揚:そうですね。未だにクラブミュージックのことはよくわかってないです。
では『EVERGRACE』はどうでしょうか?2000年に発売されたPS2のゲームのサウンドトラックということですが。
揚:『EVERGRACE』のサントラは民族音楽っぽい部分の使い方が上手いんですよね。元々、芸能山代組とかフィールドレコーディングされたお経とかも聴いたりしていたんですけど、民族音楽がエレクトロニカといい感じに融合している『EVERGRACE』のサントラが一番ピンときました。
なるほど。ひとつの「手法」として民族音楽を使っているもののほうに興味があると。ではゲームサントラで他に影響を受けたものはありますか?
揚:『ガラージュ』ですね。1stアルバムの『WORLDWATCH』は『EVERGRACE』に影響を受けていたんですけど、2ndアルバムの『After Dark Tour』は『ガラージュ』に影響を受けています。『ガラージュ』は元々は1999年に発売されたプレステのゲームだったのですが、2021年ごろにアプリで再発されて、同時にサントラが初めてリリースされたんです。それ以降よく聴いていました。
『ガラージュ』のサントラはローファイで空気感がある音楽ですよね。『EVERGRACE』はもっとエレクトロニカらしいはっきりした音像なので対照的です。『After Dark Tour』と『ガラージュ』の関係についてもう少し詳しく聞かせてください。
揚:『After Dark Tour』を本格的に作り出す前に、『ガラージュ』の影響で、「街の中から不気味だけど切ないメロディが聞こえてくる」という雰囲気の曲を作ろうと思っていたんです。でもそういう曲を作るにはいいメロディを作らないといけないなと思っていたところで、大山田大山脈の『Jan-17』という曲をリミックスする機会があって、それでそのアイデアをもとに『Jan-17』のリミックスをやってみたんです。それがすごく上手くいって、「こういうものをもっと作りたいな」と思った流れで曲を作っていって、それが『After Dark Tour』の一部になっていきました。
いま触れていただいたリミックス(*2)は現在進行中の企画なので、まだ皆さんは音源を聴くことはできませんが、大山田大山脈『Jan-17』の原曲が持っている美しいメロディを、ホワイトノイズやヒスノイズを多用し、元トラックにカットアップを施した、かなり大胆なリミックスになっています。ではそのリミックスの前には、『After Dark Tour』の全体像はできていなかったんですね?
*2大山田大山脈/揚 Remix Works(仮)
揚、大山田大山脈が互いの音源をリミックスし合う、現在制作中のアルバム。造園計画よりリリース予定。当初は揚『WORLDWATCH』のカセット版のオマケ音源として制作が開始されたが、大山田大山脈による揚『四塞』のリミックスの悪魔的な仕上がりにより、オマケ音源から、2曲入りシングルに昇格するも、その後、揚によってリミックスされた大山田大山脈『04』の破壊的な完成度によって、アルバムにまで昇格し、現在も龍と虎のごとく揚と大山田大山脈が互いを高め合いながら制作進行中。
揚:そうです。『After Dark Tour』の1曲目の『アフターダーク』、2曲目の『Tour Guide』はリミックス以前にできていたのですが、それ以外の曲はリミックスの流れで作っていきました。
②コンセプトアルバム、疑似民族音楽的なもの
揚の作品はアルバムタイトルや曲名に工夫やこだわりが込められているように感じます。
揚:曲名はすごく気にしています。一行詩みたいなものしようと思っているのと、かっこいい単語を入れることは意識しています。好きな曲のオマージュというか、部分的に単語を借りてくることも多いです。
例えば『WORLDWATCH』だと『Slow Toture vs. Abstract Man』は Orchidっていうバンドの『New Jersey VS. Valhalla』という曲を参考にしています。あと『DROP BEATER』はNumber Girlの『EIGHT BEATER』、『Machinist Union Nightmare』はSong of Zarathustraというバンドの『Machinist Union』という曲から借りてきてます。
『WORLDWATCH』は並行世界の架空のムーブメントの名前が曲名になっているというコンセプトがありましたが、その想像力はどこからきているのでしょうか?音楽以外からの影響もあるのでしょうか?
揚:まず、アルバムを作るならテーマを持たせたコンセプトアルバムにしたいという思いがあります。昔Pierrotというビジュアル系のバンドがいたのですが、彼らのアルバムはほぼ全部コンセプトアルバムなんです。それにライブもコンセプチュアルな演出が多い。僕の中二病的感性の源泉だと思います。
例えば『CELLULOID』というミニアルバムがあるんですけど、そのミニアルバムは、セルロイドという人間に乗り移ることができる生命体をめぐる物語を通して、「人間とはなんなのか」という大きな問いに向き合っていく、というコンセプトを持っているんです。
なるほど。文学的な想像力を持っている音楽からの影響が大きいということですね。ひるがえって『After Dark Tour』にはどういうコンセプトがあるのでしょうか?
揚:『After Dark Tour』は途中からアルバムのタイトルとコンセプトを決めて、そこに向かっていく形で作っていきました。まずその名の通り、日没から朝までの旅路の中で目にするもの、という意味があります。それと、アルバム制作中に国立美術館でやっていたメキシコ展に行ったんですけど、そこで古代メキシコの人たちは夜を死、日が登ることを復活と捉えていたということを知って、日没から朝までの旅路というモチーフに、死んでから生き返るまでの行程という意味合いを重ねることにしました。
「Tour」は日本語だと観光を意味しますが、『After Dark Tour』における「観光」は、単純に「光を見る」のではなく、闇=死から光=生までの行程をめぐるものというわけですか。
揚:そうです。で、その「死」っていうのはどういうものなのかというと、多分殺されている、それですごく怒っている、という設定を作りました。そういう意味で『After Dark Tour』には「復讐」というテーマもあるんです。
アルバムのそこかしこに入っているボイスエフェクトから受ける印象も大きいと思いますが、確かに「怒り」というイメージは全編にわたって共通した気分のように感じます。とはいえ、「朝」に当たるはずの最後の曲、『Hello Eureka』も、最後の最後に明るい展開がわずかにあるものの、基本的には多くの時間を、混濁したノイズパートに当てていますし、単純に夜になって朝が来るということではなく、そこに葛藤とかストレスみたいなものがあって、それらをなんとか乗り越えてやっと朝が来る、というイメージなのかな、と感じました。
Hello Eureka
揚:そうですね。どうやってアルバムの展開を決着させようか悩んだんですけど、素朴に夜になって朝が来るという綺麗な感じでもないだろうと思って、今の形になりました。「復讐」が成功して終わりというよりは、いろいろグダグダになって、なし崩し的に朝が来る、というイメージです。『Hello Eureka』は完成するまでかなり時間がかかりましたね。
メキシコ展の影響もあってか、蛇とか寺とかマーケットとか祭りとか、曲名の語彙も古代メキシコっぽいですよね。でも同時に、SF的な意匠を感じさせる曲名もある。TVも出てきますし。
揚:SFは特別好きではないですね。TVという単語はが入っているのは、ソドムの『TV Murder』が好きだからです。ネメシスという単語は、ホラー漫画で『ネメシス』という雑誌があってそこから借りています。それに、ネメシスという単語は、意味的にも「復讐」にまつわるニュアンスがあるので、アルバムのコンセプトとしても合っていたのでちょうどよかったんです。
TV Nemesis
どこからか借りてきた単語を組み合わせるという手法は一貫しているんですね。少し話が戻りますが、さきほど「民族音楽も聴いていたけど、『EVERGRACE』のサントラの方が面白い」という話がありました。要はガチガチな民族音楽が好きな人とは違う感性でものを作っている、ということだと思うのですが、その「擬似民族音楽」とでも呼べるものへの感性についてもう少し詳しく聞きたいです。
揚:ガチの民族音楽って必ずしもキャッチーじゃないですよね。ガムランとか、特別キャッチーなものもありますけど、基本はポップじゃないわけですよね。でもぼくが好きなのはキャッチーなものなんです。だから、「本物の民族音楽」というよりも、ぼくらが漠然と思っている「民族音楽っぽさ」を上手く出してくれるものが好きなんです。そういう感性が形成されたのは、アニメの主題歌で聴けるような「民族音楽っぽいもの」がきっかけだと思います。
なるほど。先ほどあげていた芸能山城組も『AKIRA』の劇伴ですし、「アニメ的な想像力を経由した仮想的な土着性」というニュアンスが揚においては大事なのかもしれませんね。ところで「民族音楽っぽいもの」と電子音楽という取り合わせでいうと、トライバルテクノとか、アジア圏のレフトフィールドとか、フォースワールドといったジャンルがありますけど、揚の音楽においてそういうものからの影響はありますか?
揚:うーん、そういうものは全然わかりません(笑)。
大山田大山脈にインタビューした時も同じ質問をして、同じような反応でした…(笑)。同じメディア環境のなかで生きているから、似たものを作るようになったということかもしれませんね。
③サンプリングとリフの美学
2023年にリリースされた1stアルバム『WORLDWATCH』と今年、2024年にリリースされた2ndアルバム『After Dark Tour』、並べて聴くと音楽性に大きな変化があるように感じます。『After Dark Tour』はよりアブストラクトな印象です。
揚:まず『WORLDWATCH』と『After Dark Tour』の大きな違いは、ギターがあるかどうかなんです。『WORLDWATCH』のころは、ギターワンリフの曲が作りたいと思って、「リフもの」をいっぱい作っていました。そのなかで『Evilstep Movement』は自分の中で「やっとこういう曲ができた」という感触がありました。
Evilstep Movement
当時はバンドがメインで、電子音楽を作り始めたばかりだったので、電子音楽における展開の作り方がよくわからなかったんです。バンドの方法論で考えていたから、とにかくギターを入れて展開を作っていた。『After Dark Tour』の頃には電子音楽的な作り方にも慣れてきたので、ギターを入れなくなりました。
確かに『After Dark Tour』はいわゆる「リフもの」ではないですよね。
揚:いや、でも自分のなかでは『After Dark Tour』も「リフもの」のつもりなんです。ギターは入ってないですけど、ベースとか、あるいはサンプリングした音源を変調させたものがリフになっているんです。例えば3曲目『Temple Serpent Markets』は金物っぽい音がリフのつもりです。
Temple Serpent Markets
なるほど。ギターでいうリフというよりは、もっと解釈の幅を広げた意味でのリフということですね。定義が拡張された「リフもの」。
揚:そういうことです。とはいえサンプリングという意味でいうと、『After Dark Tour』ではギターを使っていないのでサンプリングを使う比率は上がっていますが、『WORLDWATCH』でも『After Dark Tour』でもサンプリングへの意欲自体は変わっていないんです。
なるほど。揚においてサンプリングは中心的な手法なんですね。
揚:そうですね。『WORLDWATCH』の時はプリセット音源を使いたくないというこだわりがあって、ドラムの音もスタジオで自分で録音したものや、昔誰かに叩いてもらった音源をサンプリングして使っているんです。
それから、楽器のサンプリングだけではなく、サンプリングした環境音を加工することもあります。こういう音が欲しいなと思ってサンプリング音源を探すこともあるんですけど、それよりむしろ面白い環境音を録って、加工して、「なんかいけそう」と思って曲を作るというパターンが多いです。そうすると事前に想定していないような、意外性のある曲を作れるんです。
環境音を加工して使用した曲のなかで、特に面白くなった曲はありますか?
揚:『Temple Serpent Markets』は元々あったボツ曲のリミックスなんですけど、花火の音や雷の音を加工したトラックを使って、元のボツ曲を壊していきました。
それから『Tour Guide』はピッチを落とした環境音をベースにして曲を作ろうというアイデアから作曲が始まっていて、それに合う環境音を探していました。最終的にはSpliceという、いろいろなサンプル音源をダウンロードできるサイトから持ってきたプリンターで紙を印刷する音のピッチを下げて、ベースリフにしています。楽器のような明確な音階が存在しない音を加工すると、普通なら思いつきようがないリフができることがあるので、そういう狙いもあってサンプリングを多用しています。
Tour Guide
過度に変調させたサンプリング音源はSN比が良くなかったり、音抜けが悪かったりしますが、揚の音源の中では、むしろそれも味わいの一つになっているように感じます。
揚:あとこれは今まで挙げたものともまた違ったサンプリングの活用方法なんですけど、『Fantastic Funeral』はサンプリングしたフレーズを逆再生して、さらにそこに別の音を加えてサンプリングっぽく聴こえないよう加工しているんです。
Fantastic Funeral
面白い!「リフ」への強いこだわりが伺えるお話ですね。そこまでやる人は、もうリフという形を維持させないで、もっとエクスペリメンタルな方向にいってしまうのが普通な気がするのですが、揚のサンプリングは言われてみると確かにギリギリ「リフ」と呼べそうなラインでミックスされている気がします。
揚:電子音楽をやるときに一番のお手本にしているのがTHE MAD CAPSULE MARKETSなんです。彼らの曲は、ループがずっと流れていて曲に入るパターンが多いんです。自分もそれをやろうとしているんだと思います。普通なら自分が作るようなフレーズは、「ループ」と呼ぶのかもしれないんですけど、「ループ」といった途端に曲ができなくなりそうなんです。「リフ」といった方が曲ができる。
なるほど。リフという概念を拡張的にとらえていくことは、制作に向かううえでの精神的なセットにおいても重要な意味を持っているんですね。
④機材紹介
実機を使用することもあるということでしたが、機材の紹介をお願いします。
揚:まずM.A.S.F.のSCMはよく使っています。金属の筐体のなかにピックアップだけが入っていて、叩いても音が出るし、声を録音することもできます。ENDONのメンバーが作ったブランドで、Aphex Twinも使っているみたいです。擦ったり、声を録音したり、かなり多用しています。
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ボーカルトラックのローファイな雰囲気はこの機材によるところが多そうですね。環境音はどのようにして録音していますか?
揚:環境音もiPhoneです。でもこの前ちゃんとしたレコーダーを買ったので、これからはもうちょっといい音で録音しようと思っています。それからELECTROGRAVEのQUAD OSCILLATORもノイズを作るときに使っていますね。割と「演奏」っていう感じの楽器です。『After Dark Tour』の最後の曲『Hello Eureka』のノイズパートで使っています。
揚:先程と同じく、M.A.S.F.が出しているOSC03も使っています。あらゆるノイズを出すことができます。単体で一回ライブができるくらいすごい楽器です。これも『Hello Eureka』で使っています。
あとマシーン以外のアコースティックな何かが欲しいなと思って、『After Dark Tour』からはディジェリデゥも使っています。『アフターダーク』で使用しているのと、『Alter Ego』のベースはディジェリデゥのピッチを下げて作っています。
Alter Ego
⑤次作への展望
それでは次作への展望を聞かせてください。
揚:自分が制作の中で一番のメインにおいているのは「キャッチーであること」なんです。その「キャッチーであること」を「リフがあること」と解釈して『After Dark Tour』を作ったんです。でも改めて聴くとキャッチーさからは離れたなっていうのは思っていて、なので改めてちゃんとキャッチーなものを作ろうと思っています。でも正直、具体的なアイデアは何も思いついてなくて、それくらい『After Dark Tour』は全部詰め込みましたね。
もっとまっすぐにキャッチーなものですか。キャッチーということは、作曲をするうえでも観客からの視線を意識しているということでしょうか?
揚:基本的にはライブでの演奏を前提にして曲を作っているので、ターゲットが初見のお客さんなんです。「この曲はあのリフの曲だ」とわかるようにしたいと思って作曲しています。
なるほど。アヴァンギャルド的な部分もありつつ、そういう意識が揚のある種のキャッチーさにつながっているわけですね。
揚:アヴァンギャルドのつもりはないですね。一応、Aメロ、Bメロ、サビは作ろうと思っています。
でもAメロ、Bメロ、サビの解釈と定義が変わってきている、ということですかね?
揚:そうです。でもその「解釈」を重ねすぎず、「キャッチーさ」という根幹は崩していないつもりです。今でもメロディックパンクを一番聴いていますからね…(笑)。
まさかのメロディックパンク…!
揚:はい…(笑)。I Excuseっていうバンドが今でも一番好きです。『As Someone's Like』という曲があるんですけど、これが作れたらもう曲はつくらなくていいかなと思うくらい好きです。
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『WORLDWATCH』
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