5.the lie that lies are expedient

 ひとつしかない幸せを、分け合うの。自分がひとりで、独占しようとしないの。

 理屈はそうだけど、そうはいかないの。そういう風には思えないの。信じられやしないの。ひとつしかないなら尚更、自分だけのものに、していたいの。そうやってすぐバグるの。

 あるんだよ。ひとつしかないのに、みんながなれる幸せ。消えも減りもしないし、姿や形も変えない。いや、むしろ形なんてない。大小も高低も貧富もない。香りも味もありゃしない。

 そんな幸せがひとつある。なんて言われても、それは見えないんだよ、人間には。

 だから、わざわざ仮があるんだよ。仮の幸せがあるから、真実の幸せがあるってわかるんだよ。真実の見えてない人間にも、観じることができるんだよ。

 嘘も方便って言うけどね、ありゃ嘘だね、嘘は嘘よね。迷い惑わす妄語なのね。

 方便は仮から真実に導く、だから、嘘みたいだけど、偽物が意味を持つ。たとえ嘘でも、嘘からでた真となる。

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