神戸を発つ時、空は灰色だった。 今、ここ長崎は快晴の夕焼けだ。 初めて来た長崎空港と大村湾。それなのに、なぜかノスタルジーを感じる。 ほのかに鼻腔をかすめる潮のかおり。静かに揺らぐ水面。そこに反射するかすかな橙は秋から冬へ移ろいゆく寂しさのようなものさえ感じさせる。 寂しさを感じさせるもの。 夕日の風景。 静かで、のどかで香り豊かな自然。 明かりがポツポツと、人知れずともり始めた街灯。 ふと、何かを見た時に悲しいわけでもないのに物寂しさを感じるのはなぜだろう?
日が短くなった秋のとある日。 仕事が終わり、駅からとぼとぼ歩く。 片手にはねぎの頭が出たビニール袋。 ふと気の向くまま、近道を求めて細い路地裏を進む。 両手を広げれば軒先に引っかかってしまいそうなほど狭い道。 あたりは街灯の一つもなく、迷い込んでしまったような錯覚におちいる。 小窓からは夕方のにおいがする。 お風呂の石鹸のいい香り。焼き魚の焦げたにおい。線香のたなびく煙。 「そうだ、僕はこのかおりを知っている」 そして、記憶がフラッシュバックする。 中学生の頃だ。グラ
今年の11月は暑い。 温暖化の影響らしいが、未だに車に乗っていると西日が強く、エアコンのクーラーをつけることがある。そうかと思えば、日が暮れると恐ろしく、寒くなる。最近は日が落ちるのが早くなったことも相まって、年の瀬へのカウントダウンが聞こえ始めた気がする。 少し前、街中はハロウィンのオレンジ一色だった。あれからまだ数日しかたっていないというのに、今や街はクリスマスムード一色になっている。クリスマスのイルミネーション、クリスマスのBGM、コーヒーはクリスマスブレンド…、