2023重賞記『セントライト記念』

穴で狙ったコスモサガルマータは、もう格の違いとしかいいようがない内容だった。4角でソールオリエンスに外から並ばれたときに、明らかに怯んだように見えた。もちろん、手前の問題もあったようだけど、GI馬の迫力に気圧されたような止まり方だった。

そのソールオリエンスも追い込んで脚力は見せたが、勝ち馬には遠く及ばなかった。もちろん、見据えているものが違うだけに、勝負づけが済んだわけではないが、結構な着差をつけられている。おそらく射程圏に入れて競馬をすると、切れ味は削がれるだろうから、逆に相手有利に働く可能性が高くなる。本番で王者の逆襲は果たして⁉︎

さて勝ったレーベンスティールは、その勝ち方の鮮やかさも特筆すべきだが、長いファンにとっては、何と言っても母の父の名前を抜きには語れない馬だ。

トウカイテイオー。
シンザン、ハイセイコー、テンポイント、オグリキャップ、ウオッカ、ディープインパクトらと並び称される日本競馬界のカリスマだ。
ただ強いだけではなく、人の心を鷲づかみにする圧倒的な魅力を持った馬たちだ。例えば、テイオーの父シンボリルドルフは、多くのアンチが存在した。テイオーには居なかったとまでは言わないが、その数は圧倒的に少なかったはずだ。こうしたカリスマたちも、やはり目立ったアンチは少なかった。
そのなかでも、サラブレッドらしい親子の物語が宿っているのは、トウカイテイオーだけだ。
父にはなかった大衆性と、抜群の容姿、そして育ちに似合わぬ不撓不屈の精神を持ち合わせた、そのキャラクターが競馬ファンを虜にした。
父としてトウカイポイントとヤマニンシュクルの2頭を輩出したが、騸馬と牝馬だったために、父兄での血は途絶えてしまったのは残念でならない。

その貴重なテイオーの血を母系に有しているレーベンスティールは、僕ら世代のファンにとっては、希望の星、そのものだ。
大外枠を利した皐月賞、奇跡を起こした有馬記念、トウカイテイオーの思い出の地中山で、孫のレーベンスティールが、世代王者ソールオリエンスを破ったことは、テイオーファンに、あの青春の、燃えたぎっていたころの競馬への情熱を思い出させてくれた。

次は菊花賞か。
テイオーが踏めなかった無念の舞台。レーベンにとっては父リアルスティールが2着に敗れた屈辱の場所。
ストーリーは、レーベンの菊絵巻で描かれはじめた。

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