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井上真央出演『サンセットサンライズ』を観た

★ストーリー
南三陸のある漁港町に移り住んだ若者と、その町の人々の悲喜劇。

★推し場面
▷涙が演技する⁉︎
真っ暗な海を前にして、ひとり車内で、ある音源を聴いて、井上真央は涙するのだが、そのタイミング、頬の伝い方、涙までが演技をしていた。泣きの演技ではなく、涙をも支配していた。

★女優
井上真央
▷〝海〟の女優
〝国民の妹〟といえば、多くの人は浅田真央を想像する。でも、僕にとっては、同じ真央でも、断然、井上真央だ。その理由は、言わずと知れた〝キッズウォー〟のおかげだ。ずーっと見てたし、それから、作品数こそ多くはない、ずーっと主役格でいるのだからすごい。
演技者としての凄さは、どんな役をしても、演技を感じさせない自然体に魅せる。簡単に言えば、演技に力みがない。
この映画も東北のとある役場務めの女を演じているが、演技を感じさせない。
こういう女優、というより、俳優は皆無じゃないかな。
あと、素朴なビジュアルも美しい。
井上真央は〝海〟の女優。表面的には何もせずとも、日々、時間、天気、場所により、様々な色に変化する。まさしく自然体だ。そしてまだ未開の深層がありそう。
涙を芝居する意味が、少し分かった気がする。

★長澤まさみ研究
▷真反対の自然体
長澤まさみも、決して力みの強い俳優ではない。井上真央と同様、とても自然体な俳優だと思う。
だが、長澤まさみが井上真央に敵わないことがある。それは〝現実的な存在感〟だろう。とはいえ、長澤にも絶対負けないものがある、それが非現実的な〝夢のような存在感〟だ。
この『サンセットサンライズ』での井上真央の佇まいには、どこの学校にも居たような美少女の振る舞いがある。しかし、長澤まさみはどうだ。どこの学校にも居るようなビジュアルではない。少なくとも僕の通った学校にも、井上真央のような美少女は居たが、長澤まさみのような美少女は居なかった。
そうそれこそが、長澤まさみが恒星である正体でもある。

★パンフレット
読みやすい。
井上真央のインタビューは、演技と変わらず、やっぱり自然体だった。頭も良い、知識も豊富なんだろう。難しい言葉は使わずとも、深みがある。

★まとめ
▷〝観る〟よりも〝感じる〟映画
いい映画やった。
華美なことはほとんどなく、日常的な映画であるけれど、その日常が訪れるまでに費やした時間を、ゆっくりと見せてくれる。いや、見せるというより、感じさせてくれた。観客をも町の住人として迎えてくれたように感じた。
そして脇役が素敵。
まずは中村雅俊って、こんなに良い俳優だったんだなぁ。登場すると、凄い安心感が生まれた。その役にピッタリな度量が見えた。
もうひとり、池脇千鶴が、もう池脇千鶴じゃなかった。昔、一度、映画の記者会見で、話をさせてもらったことがある。とても印象の良い人だった。昔から演技には定評のあった俳優だけど、いやぁ、最初は池脇千鶴と分からないくらいに憎らしかった。でも後半は…キッズウォーの井上真央に、朝ドラ〝ほんまもん〟の池脇千鶴の揃い踏みは、僕には贅沢な共演だった。
内容に華美さはないけれど、こういうトーンの映画こそ、今の時代は劇場で観るべきだし、南三陸の自然を映画らしく魅せていた。
グランメゾンパリよりも、劇場向きの映画だった。

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