1ヶ月足らずで、楽曲制作からリリースまで行い、ミュージックビデオもなしにビルボードチャート1位にする方法とは? #13
今回のトピック
ラテンアーティストのBecky Gの共同マネージャーであるBen TischkerとMarc Jordanが、ライバルレーベルの2人のラテンスターが、1ヵ月足らずで楽曲制作からリリースまで行い、ミュージックビデオもなしにビルボードチャート1位にすることができた方法とは、何でしょうか?
Becky GとKarol Gの共通点と違い
Becky GとKarol G,は、二人とも女性のラテンアーティストで、年齢が近く、ジャンルも近く、キャリアも並行し、アーティスト名に同じイニシャルGがついていて、共通点ばかりなスーパースターの二人。こんなに共通点ばかりのアーティストが、今後誕生することはあるのかなーというくらい、ですよね。ちなみに、Becky GはRCA/Sony、Karol GはUniversal Music Latino所属です。
それぞれのファンも、2人のGたちがいつコラボするのかと、待ち遠しくしていたと思います。実は、2018年、Becky Gの「Sin Pijama(パジャマなし)」という楽曲のコラボアーティストを、Karo Gで検討されていたのですが、実現しなかったんです。結果的に、このSin PijamaはNatti Natashaという女性ラテンアーティストとコラボすることになり、大ヒットしました。それ以来、2人のGたちが一緒にレコーディングする可能性は、掴みどころがないまま時が経っていました。
コラボ曲 Mamiiiのリリース決定
しかし、今年2月10日、この2人のスーパースターは、予告なしにコラ・シングル "Mamiii "をリリースしたのです。この2人の共通の友人であるOvy on the drumsがプロデュースとコライトを担当したことで実現したこのコラボ曲は、有害な関係を克服するためのパワー・アンセムとなり、すぐにヒットしました。
ビルボードチャートのトラッキング期間の最終日にリリースされたにもかかわらず、翌週にはHot 100で15位にランクインし、両アーティストにとってHot100での史上最高位となりました。また、ビルボードのHot Latin Songsチャートでは、1位を獲得し、現在までに9週にわたって首位を獲得しています。
このコラボ曲は、まだまだ伸びしろがあり、この曲のチャート上位を維持する勢いは正しい方向に向かっています。先週末のKarol GのCoachella セットで、2人は初めて「Mamiii」を一緒にライブ演奏しました。Becky Gのニューアルバム「Esquemas」は5月13日にSony Music Latin(Kemosabe Records/RCA Records)から発売予定で、「Mamiii」は収録され、今後さらにプロモーションが予定されているそうです。
短期間での楽曲制作からリリースで世界的ヒット曲を生み出した理由
Becky Gの共同マネージャーであるBen TischkerとMarc Jordanは、ライバルレーベルの2人のスター(Becky GはRCA/ソニー、Karol GはUniversal Music Latino)が1ヶ月足らずで作曲、制作、リリースし、ビデオもなしに世界的ヒットとなる1位を獲得できた理由を語っています。
共同マネージャーのジョーダンは、Beckyが13歳のときから12年間、彼女のマネジメントをしてきたので、娘のような存在でもあると話しています。2人は他にも事業を展開していて、ティシュカーはWide Eyed Entertainmentというマネージメントや音楽出版の会社を、ジョーダンはエンターテインメント会社State of the Artを運営しています。ティシュカーはフランス人、ジョーダンは西インド諸島のアメリカ人ということもあり、Becky Gのマネジメントは、2人の経歴から名付けられた共同会社WIP(West Indian Paris)を通して行っています。WIPは、ラテン系スターのプロデューサー、エドガー・バレラや、スプレッドロフ、ヴィバルコ、エンジェル22などのアーティストも扱っている。
英語でキャリアをスタートさせた後、メキシコのバックグラウンドを掘り下げるため、
彼らが初めてラテンアーティストに取り組んだが、Becky Gだった。その時、ティシュカーとジョーダンは、ラテン文化に浸り、「謙虚に学ぶ」ことを選択したのです。
マネージャーの二人は、「私たちはラテン音楽や文化を何も知らない2人の外人でした。」と話しています。
また、彼らはSony Music Latin-IberiaのAfo Verde会長から貴重なアドバイスをいただいていました。それは、「ダイヤル式にするな。電話一本でどうこう言う外人にはなるな。飛行機に乗って、私たちに話しかけなさい」です。最初の年、彼らはマイアミに22回も行っていたそうで、そのラテン音楽について学びたいという気持ちや、ベッキーが素晴らしいキャリアを築けるよう、必要な関係を築くための姿勢が、こうした素晴らしい結果を生み出したのだと思います。
コロナで移動が大変で、リモートワークが主流になった今でも、人と合い、信頼関係を築くことはとても重要ですよね。
楽曲制作
1月、Becky GがニューアルバムEsquemasの制作に集中していた頃、プロデューサーのOvyの弁護士、Stephanie Chopurianからマネージャーのティシュカーに電話があり、OvyがBecky Gに「ヒット」を生み出したと告げたのです。「OvyはBecky GにAメロとサビを送り、聴いたBecky G とマネージメントチームはこの曲に惚れ込んだそうです。
ティシュカーはその後、Becky GのロサンゼルスのスタジオにOvyを招き、この曲の制作に取りかかりました。当時、彼らはKarol Gではなく、様々男性アーティストとのコラの可能性を考えていたそうです。その2日後、OvyはBecky Gに電話を通じて、Karol Gを紹介しました。電話で、Karol Gは「この楽曲が好き」と伝えた。
リリース後
現在、「Mamiii」はHot Latin Songsで9週目の1位を獲得した。
最近公開されたミュージックビデオには、Becky G とKarol Gは出演せず、ミア・カリファとユーフォリアのスター、アンガス・クラウドが出演しています。
そして、Becky GがKarol Gのコーチェラ公演にゲスト出演したこともヒットの要因となっています。
さらに、"Mamiii "は音楽的なヒット曲であると同時に、有害な関係を克服するためのパワー・アンセムということから、この曲の歌詞が、Karol Gと元旦那のAnuelとの離婚に何らかの関係があるのでないかという憶測がS N S上で飛び交い、結果的に話題性を生んだのです。また、この一連の盛り上がりは、Becky Gのニューアルバム『Esquemas』にとっても、大変良いマーケティングツールとなったのです。
Becky Gのマネージャー、ジョーダンは、「今までBecky Gのベスト・アルバムで、大変だったのは、リリースのタイミングと計画の変更だったのですが、今回のニューアルバムは、計画を変更するに値するほどのチャンスであり、誰もがそれを理解していました。曲は今を生きていて、呼吸をしているもので、時に素晴らしい計画には変更が必要なこともあるんだ、と感じさせられました。」と話しています。
まとめ
今、日本のストリーミングのトップ10のほとんどが、TikTokから話題になった曲ばかりです。しかし、世界的にヒットを生むためには、時にはこうした人間的なドラマがあったり、リアルな信頼関係があってこそなのかもしれません。
コロナ前のようにリアルに足を運んで、人と語り合うことで生まれる大ヒット曲は、日本から生まれる日が来るのでしょうか?
Written by Taiga Kunii (@__taigakunii__)