コーチェラから学ぶ、新時代のフェス事業の3つの戦略とは?
コロナの影響で、2年連続、開催を中止していた世界的有名なフェス、コーチェラが4月15日に無事開催されました。
コロナだけでなく、国際情勢や気候変動など、さまざまな物事に影響され、
フェスの運営は大変厳しい状況に置かれている中で、どのようにしてコーチェラはアフターコロナ時代のフェス運営を成し遂げようとしているのでしょうか?
今回は、コーチェラから学ぶ、新時代のフェス運営の3つの戦略について解説していきたいと思います。それでは、let’s get started!
コーチェラから学ぶ、新時代のフェス事業の3つの戦略とは?
1. ダイバーシティ戦略
a. クロスマーケティング
b. 88rising
2. オフライン戦略
a. 限定グッズ
b. コラボ商品
c. N F TのQ Rコード
3. オンライン戦略
a. Youtube Liveによる配信
b. 限定グッズ
c. N F T
今年のコーチェラはかつてないほど、出演者のダイバーシティが進んだラインアップだったと思います。例えば、ラテン音楽がアメリカの音楽市場で爆発的な成長を遂げるなか、コーチェラでは出演するラテンアーティストを2020年から2倍に増やしました。今年は、20組以上のラテン・アーティストが出演しました。メキシコの地方音楽のバンダからレゲトン、トラップまで幅広く、Karol G、Anitta、Nathy Peluso、Ed Maverick、Pabllo Vittarなどが出演します。ラテン音楽=レゲトンといった固定概念ではない、様々なラテン音楽が近年世界的に成長し、国際的にリスナーを増していることを示しています。
コンサート検索アプリBandsintownのデータによると、ツアーやフェスティバルが復活する今年、ラテン系アーティストへの需要はかつてないほど高まっているそうです。2019年から2022年にかけて、ライブファンは今年のコーチェラのラインナップの上位16組のラテン系アーティストに500%以上高い関心を示し、その期間中にプラットフォーム上のファンの関心が5000%以上伸びたとのことです。。この増加率は、Bandsintown上のアーティストのフォロワーの増加率で測定されるとのことです。
また、アジア系アメリカ人のアーティストを数多くマネージメントし、Head in the Clouds FestivalのプロモーターであるGoldenvoiceと提携している88risingは、土曜日のメインステージで、CL、Jackson Wang、Hikaru Utada、Milli、Bibi、Warren Hue、Niki、Rich Brianが出演するHead in the Clouds Forever Showcaseを独自に開催し、ブランドとクロスマーケティングしながら、ステージを盛り上げました。
BTSがラインアップに入っていなかった理由は、さまざまですが、
ラスベガスでのパフォーマンスと日程が重なっているため、コーチェラの参加はできなかったようです。コーチェラとのビジネスよりも、独自で開催するコンサートの方が、話題性や収益も高くなるように思えます。
しかし、B T Sなしでも、コーチェラがこのような新しいジャンルのアーティストを出演させ、挑戦することで、新たな観客を生み、他のフェスティバルとの差別化や優位性を高めることができるのです。
■オフライン戦略
コーチェラは、長年アーティストグッズの販売も行ってきましたが、近年はその販売方法にも大きな変化が生まれました。その1番の理由として、コロナの影響で人々のライフスタイルが変わった中、リアルなイベントに来てもらうための体験づくりである。
実際、コーチェラで行われたさまざまなブランドやアーティストによるグッズ販売の体験を解説していきますね。
フェスでは、何百ものパフォーマーのTシャツ、パーカー、バンダナ、ソックス、ポスター、ブランケット、ステッカーなどを収容するメインのグッズ販売エリアには、少なくとも1000人以上の列をなしていました。そして、特定のアーティストがさまざまなブランドと協力して、コーチェラ限定グッズを作り始め、ほとんどの場合が、フェス会場でしか購入できないようになっています。
そのためには、高いコストがかかるのも想定できますよね。
希少性が高く、独占的なグッズ
そのため、いかにグッズの希少性を高くして、コーチェラの独占的なアイテムであるかというのをアピールする必要があります。
例えば、ヘッドライナーであったビリー・アイリッシュと、シンガーソングライターのコナン・グレイは、メインエントランス付近に自身の巨大なポップアップストアを持つだけでなく、アメリカン・エキスプレスと協力して、限定商品をデザインし、発売しました。
ビリー・アイリッシュは、彼女のイメージの入った既存の黒いパーカーをアップサイクルし$100で販売し、コナン・グレイはサボテンの刺繍が入ったスイカ色のcrewneck pulloverを70ドルで販売しました。どちらもアメリカンエキスプレスのアーティストショップで販売されましたが、ビリーアイリッシュのパーカーは販売後わずか15分で完売しました。残りの在庫は、アメリカン・エキスプレス・ラウンジに並ぶアメリカン・エキスプレス・カード会員が会場で購入することができ、フェスティバルの金曜日にのみ販売されました。
また、ハリー・スタイルズは、フェスティバルのメインエントランス近くにある彼のハリーズハウスのポップアップで、45ドルから75ドルのイベント限定シャツ、プルオーバーセーター、パーカーなどを販売しました。また、彼の美容会社Pleasingは、大胆でカラフルなマニキュアバーを作り、ファンに無料のマニキュアを提供し、コーチェラ特有のバンダナを20ドル、特大パーカーを110ドルで販売しました。
そのほかにも、コーチェラをライブ配信しているYoutubeとコラボしたBillie Eilish, Brockhampton, Flumeの限定グッズも購入することができました。このグッズは、4月16日のライブ配信の時のみ販売されました。Tシャツは$35-45,ブランケットは$80といった価格帯です。
アルコールのハイネケンやアブソルート・ウォッカのような企業は、21歳以上を対象にラウンジを設置し、飲み物を楽しみながら、自社のアクティベーションに参加できるようにしています。また、サングラスのレイバンやポストメイツは、ポップアップでファンに様々な写真体験やフェスティバル限定の無料グッズを提供しました。
会場内は、有名ブランドの名前を見かけるのは目新しいことではありませんが、コロナ前と比べていくつか変化しています。例えば、以前のようなポップアップでブランドの無料グッズを提供する代わりに、アフターコロナでは、体験を重視した、会場内の限定体験や、ブランドのソーシャルチャンネルやメーリングリストを通じて招待状されるようになったのです。コロナの影響で、リアルで行く理由として、楽しい体験をいかに提供できるかが重要ですよね。
■オフライン戦略
コーチェラは、暗号仮想通貨取引所FTX と提携し、Coachella Collectibels NFTsを独自に開発し、販売を開始しました!
これは、良い音楽とライブを楽しむことに焦点を当てたコーチェラとしては、想像以上にハイテクでイノベーティブなビジョンを必要とする開発でしたが、コーチェラのファンにとって、ワクワクしかない企画だと思います。
暗号仮想通貨取引所FTXと共同で独自のN F Tマーケットプレイスを立ち上げ、フェスの参加者は、N F Tを購入することで、生涯使えるコーチェラパスからアート、フォトブック、デジタルコレクティブルなどあらゆる権利を得ることができます。NFTの中には、表示価格で購入できるものと、一定期間内にオークションで入札するものがあります。
例えば、現在入札が行われているのは、限定デジタル写真のセット(入札は10ドルから)、一方、ライフタイムパスは、なんと100万ドル(さすがVIP)で買い取ることができる。
このNFTは、限定グッズから飲食券まで、さまざまなものと交換することができる。すでに無料のNFTを持ったフェスの参加者が、NFTを持つ人たち専用の入場レーンに入る姿が見られました(ただし、専用の入場レーンと通常の入場レーンでは、さほど入場のスピードは変わらなかったらしいです。)
また、現地に実店舗を構える代わりに、ステージの間に階段のような没入型アートインスタレーションを設置し、ファンがQRコードをスキャンしてサイトから直接商品を注文できるようにしました。フェスに参加している方々が優先的に購入できる仕組みを体験を通して提供しています。
・Youtube
また、仮想通貨もやらないし、リアルに参加もできないという人は、Youtubeのライブ配信を通じて、パフォーマンスからインタビュー、そしてリプレイまで無料で視聴することができます。
今年のYoutubeライブ配信は、今までとはちょっと違い、初めてYoutube Shoppingを導入し、Youtube限定のグッズを購入することができます。
また、先ほどお話にも出た1億円以上もするLifetime Passを1名にプレゼントする#YoutubeCoachellaSweeptakesという企画を実施ししました。参加者は、Youtube Shortに”Who would your dream +1 be if you won Coachella passes for life?”という質問に答えて、ハッシュタグ#Youtubecoachellasweeptakesをつけて、Youtube Shortにアップします。縦型ショート動画のTikTokやReelに対抗して、ユーザーを増やすための企画として、とても面白いですよね!
その他にも。Youtube Premiumのユーザーは、6つのプリパーティに参加する特権を得ることができたり、ビリーアイリッシュのYoutube限定コラボグッズが販売されたりと、バーチャルでの限定的な体験をさまざまな形で提供していて、十分に楽しめる企画だと思います。
■まとめ
コロナだけでなく、国際情勢や気候変動など、さまざまな物事に影響され、
フェスの運営は大変厳しい状況に置かれている中で、さすが、コーチェラだなと、これだけ盛りだくさんな楽しい企画をリアルでもバーチャルでも提供してくれるのは、本当にエンターテイメントの結晶だなと思います。
ぜひ、日本の音楽関係者やアーティストの皆さんも、さまざまなコラボやクロスマーケティングを通じて、リアルやバーチャルの体験をもっと楽しいものにしていけるといいですよね。
今日も、Music business japanのポッドキャストを聴いてくださりありがとうございました。
今日も素敵な1日をお過ごしくださいね。
Have a nice day!
國井大河でした。