2023年2月の泡沫日記
タイガー田中の泡沫日記
タイガーの日々の泡沫(うたかた)をぬるっと記録した文章。
まともに全部読もうとせずざっと流し読みして、興味を惹いた部分だけ適当に拾い読みして。。。ネ!
2/1(木)
楽天ブックスで予約していた稲田俊輔『個性を極めて使いこなす スパイス完全ガイド』(西東社)が届く。
著者は近年の南インド料理ブームを牽引した南インド料理店「エリックサウス」の総料理長。料理に関するレシピ本、エッセイやコラム、さらには小説まで多数執筆している。
さっそく読み始めたが、面白くて勢いですぐに読破してしまった。わかりやすくためになり、そして適度に深いところを押さえた好著。インド料理を中心に他国の料理やスイーツを紹介し、幅広くスパイス遣いを勉強できる。これからスパイスの本を読もうという方には真っ先にオススメである。
この本が良かったので、同時期に出た『ミニマル料理』(柴田書店)も気になってくる。(※後日購入しました)
2/4(土)
パキスタン風無水チキンカレーに挑戦する。
鶏もも肉を片面じっくり35分ずつ焼く(本当はレシピには1時間とあったが勝手に時短した)。このとき水は入れず、肉、タマネギ、トマトなどから出てくる水分だけで調理する。
時間がかかる点を除けば、思ったよりも簡単。そして何より圧倒的にウマい。繊維がくずれてほろほろになった鶏肉に旨味がたっぷり凝縮されていてたまらない。
パキスタン的な無水チキンカレー作りに挑戦した
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 4, 2023
サラダ油にホールスパイスをテンパリング。鶏もも肉を投入し片面約35分ずつ弱火で焼く(本当は1時間とレシピにあったけどめんどくさいので勝手に短縮) pic.twitter.com/RYevGm8OLi
2/5(日)
石濱匡雄(著)・ユザーン(監修)『ベンガル料理はおいしい』(NUMABOOKS)から魚のカレー(料理名は鯉のジョール)を作る。ベンガル料理をきわめてベンガルトラになるゾ。
ハラールショップで実際にバングラデシュで食されてる冷凍の鯉(ルイという種類の魚)の切り落としを買ってきてもよかったが、さすがに量も多いし不安だったので、業務スーパーで白身魚のフィレ(パンガシウス)を購入し代用。安かったし。
これがミスチョイスだった。魚の味が弱くて全くおいしくない。久々にただのマズイ汁を作ってしまったと凹む。
ベンガルトラには、なれそうもない。
この本を読んでベンガル料理を作っていきたい
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 5, 2023
ベンガル虎になるゾ‼️ pic.twitter.com/EC08hWJQxP
2/7(火)
仕事終わりでストリップ鑑賞へ。
会社のパイセンと横浜ロック座、最終回のみ入場。中条彩乃さんのステージを1年ぶりに観るが、さらなる完成度の高さを見せつけられ驚く。そしてめちゃめちゃ楽しい。
終演後、パイセンと路上飲み(やめよう路上飲酒)で感想戦をしていたら、今日のステージの満足感もあってかなり酒が回り、良い気分になりすぎてうっかり自分の終電を逃す。途中の鷺沼まで電車で向かい、そこから歩いて溝の口のネカフェへたどり着き宿泊。到着したときには午前2時過ぎになってた。以前住んでたところなので土地勘があって助かった。
2/8(水)
ネカフェで目を覚ましたら、「ここはどこなんだ」状態に一瞬なり、ビックリする。まあかなり酔ってたしね。一回の宿泊で身体が一気にバキバキになってつらい。仕事が休みで良かった。
帰りに西尾維新『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』(講談社ノベルス)を購入。西尾は近年全然追ってないけど、戯言シリーズ直撃世代としてはやはり見逃せなかった。玖渚盾のイラストいいね。
冒頭を読んだらいきなりメタ的な視線による語りが一挙に流れ出し、戯言シリーズの新作を読んでるという確かな実感と興奮に包まれる。半分ほどまで一気に読む。
夜、初めてエスビーカレーの赤缶でカレーを作ってみる。赤缶などのカレー粉をすっ飛ばしてスパイスカレー作りをするようになってしまったので、これまで使う機会が無かった。赤缶で作ると「あ!日本のカレールーの色味と匂い!」という感じに包まれて大変エモい。日本のカレーのイデアがそこにはある。(なお先の稲田俊輔氏によるとこの香りはフェヌグリークによるところが大きいそう)
ちなみにこの日の昼は麻婆豆腐定食を食べた。麻婆豆腐は唐辛子やニンニクを効かせたスパイス料理、つまりターメリックを抜いた実質カレーなので。
2/10(金)
雪・雨予報なのでキチュリ(インド、バングラデシュの豆粥)を作ってみる。天気の悪い日にバングラデシュではこれを食べる習慣があるそうな。
これに使うムング豆は消化に良い豆として知られる。このキチュリは病気の時の養生食としても良いらしい。
おかゆは滋味深さがあるね。
雪と言うか雨なのでキチュリ(豆粥)を作った。なんでもバングラデシュでは天気が悪い日にこれを食べるらしい。作り方は米に豆とターメリック、塩を入れてコトコト煮込む。滋味を感じる。 pic.twitter.com/o1vYuFXvfI
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 10, 2023
2/11(土)
渋谷で初のMCバトル観戦。
ラッパーにして星海社から小説家デビューも果たしているハハノシキュウのバトルを観るためだ。
MCバトルについて。フリースタイルダンジョンが流行ってた時、自分も周囲の影響でけっこう熱中していた。音源もDOTAMAやMC☆ニガリ、あっこゴリラ、LickーGなどちょっとだけ聞いた。MCバトル現場も一度は行ってみたいなと思っていたが、当時はバキバキの地下アイドルヲタクだったので他の現場に行ってる余裕は無かった。
そうしてるうちにフリースタイルダンジョン熱も冷めて、ヒップホップやMCバトルのことは頭の隅に追いやられた。
転機は昨年(2022年)12月。佐藤友哉や滝本竜彦らの作家バンド「エリーツ」とハハノシキュウが対バンすることになった。
ハハノシキュウもフリースタイルダンジョンで観てたし(輪入道にあっさり負けたので印象はよくなかった)星海社の小説もなんとなくは気になっていたのでライブに行ってみる。
いやー、これがめちゃめちゃ楽しかった。
物販で小説を購入し読んだら、これもまさに自分の感覚にジャストフィットというか。ああ、これは確かにあの時代ファウストで精神を涵養された人間の書く小説だみたいな。
そこからハハノシキュウ熱が一挙に高まり、小説やMV、MCバトル動画を観るようになった。これはまた氏の現場に行くしかないと思った。
イベント名は「破天MC BATTLE 1.5 」。会場は渋谷キャメロットB2。
司会はアンジャッシュ・渡部。初めて見る渡部になかなか感慨深いものがあった。最初は「渡部ってこんな顔だったっけ」と思ったけど、見てるうちにだんだん「ああ、確かに渡部だな」となってきた(なんのこっちゃ)。なお渡部の姿を見た会場の観客も皆バカ沸き。
とりあえず以降の話をザックリ書くと、ハハノシキュウは1回戦は圧勝だったが、2回戦で溝上たんぼに負ける。司会の渡部に絡めたアンジャッシュネタで攻めて、その奇手に会場もめちゃめちゃ沸いたのだが、相手が意外と手堅く韻を踏んで返してきて敗退。タイガーは「さすがハハノシキュウは凄い攻め方を思いつくなあ!」と感心したのだが、バトルって難しいね。
バトル後、フロアにいるハハシ氏に話しかける。集合前に渋谷の本屋でキドナプを買おうと思ったらどこも売り切れで、それがバトルに負けた原因だと語っていたw
初めてのMCバトルは熱気が感じられて良かった。反面「バトルの勝敗は音源の売り上げに連動しない」「ギャグ的なラッパーは割りを食う」みたいな点も体感でなんとなく実感した。
ともあれ充実の現場体験であった。
タイガー「あの戯言シリーズの新作というか続編が出るってだけでゼロ年代にはグッと来ますよね!」
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 11, 2023
ハハシ「ユヤタンは鏡家サーガの新作を書いてくれないのに……」 https://t.co/la1tOncvDI
この日のハハノシキュウと溝上たんぼのバトル
2/15(水)
有給を取って会社のパイセンとストリップ鑑賞。ライブシアター栗橋へ。
タイガーのアイコンのトラの絵を描いてくれた蟹江りんさんのステージを観る。良かった。
ストはまさに現場に行かないと分からないの極地みたいなもので、どうしても説明することが難しい。あと蟹江さんSNSもそんな発信してないし。ツイッターの垢名はなぜか雲丹だし。
とりあえずフォロワーのみんなはタイガーのアイコンであるかわいいトラの絵で、蟹江りんの才能を感じてほしい。そして、いつか観る機会があったら観てほしい。蟹江りんはいいぞ。
2/17(金)
法月綸太郞『新装版 雪密室』(講談社文庫)を購入。新装版の坂嶋竜さんの解説が非常に良い。雪密室から始まる法月綸太郞シリーズの航海の軌跡を巧みに整理し、鮮やかに論じてる。「決定版」といってもいい解説。この解説と共にこれから法月綸太郞シリーズを読み始めることができる読者は幸運だ。
だいぶ中断していた「キドナプ」をようやく読了。ミステリとしてはクビキリの方が上だとは思ったが、それはそれとして面白かった。玖渚盾の造形など、令和の世に相応しいというか、そのあたりのバランス感覚に非常に優れていて西尾維新はやっぱすごいわと感心した。続編を。。。期待!
「西尾維新って名前は知ってるけど読んだことないし作品数も多すぎて今更どこから入ったらいいか分からない」みたいな若い読者がキドナプから読み始めたらめっちゃステキだなって思ったしアリだと思います https://t.co/FyzCdmn7sU
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 17, 2023
2/18(土)
稲田俊輔『ミニマル料理 最小限の材料で最大のおいしさを手に入れる現代のレシピ85』(柴田書店)購入。そして読了。
装丁もいいが、なによりコンセプトがすばらしい。最小限の材料で作る、それはつまりその料理の本質を問う行為に通じる。そんな一種の哲学にも似た思考実験が結実したレシピ集。
たとえば、ここに掲載されてる「概念明太子スパ」の説明を紹介しよう。「日本で生まれた傑作“明太子スパ”、そこにおいて海苔の果たす役割は実は極めて重要です。ここでは、あえてその海苔を主役とするために明太子には一回休場してもらいましょう」(明太子なしで調理)←どういうこと
概念明太子スパはさすがに極端な例だが、単純にシンプルなレシピ集として重宝できる。自分は昔「トマト卵炒め」を作るのにハマっていたことがあるのだが、この本の作り方は手数が少なくもっと早くに知りたかった。いやトマトを炒めるとめっちゃ水分が出てきてフライパンも焦げ付いて汚れるしで困ってたんだけど、先にトマトに塩を振って水分を出して、その染み出した汁は卵に加えるというやり方を見て「あっ、そうすれば良かったんだ」と、スコーンと自分の中で詰まりのようなものが抜けたという感覚があった。
読むと料理について考えることが楽しくなる本だと思う。
稲田俊輔『ミニマル料理』(柴田書店)読了。最小限の材料、最小限の手順で作る料理。極限まで捨象されたレシピは、料理の本質を問う哲学書の雰囲気すら纏う。しかし、そんな小難しいこと関係なく、純粋に読み物として面白く実用性高い一冊。これ、一人暮らし始めた頃に読みたかったなぁ #2月タイガー本
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 17, 2023
2/21(火)
タイガー、パンチェッタを作り始める。
イタリア料理に興味が出てきて、図書館でイタリア料理の本を借りてくる。そこにパンチェッタ(豚肉の塩漬け)の作り方があった。豚バラブロック肉の表面をフォークで突き刺し、たっぷり塩をまぶし、2週間冷蔵庫で熟成させる。
最初は読んで「めんどいなあ」と思ったのだが、その数時間後唐突に「いっちょやってみるか!」と決断、豚バラブロック肉を肉のハナマサで買ってくる。100グラム128円のものを700グラムちょっとぐらい。
2週間後が楽しみだゾ。
しかし冷蔵庫にこんな巨大な肉を置くのはジャマだな。
パンチェッタ(豚肉の塩漬け)作りを始めた。
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 23, 2023
1〜2日目
豚バラブロック肉全体に塩をまぶしフォークで突き刺していく。
冷蔵庫でそのまま一日程度保存。ドリップが出てくるので捨てる。#タイガーパンチェッタ pic.twitter.com/lld1k5VA88
2/22(水)
カツカレーの日らしいので松のやでカツカレー。
2/23(木)
渋谷LUSHというハコでハハノシキュウのバンドセットのライブを観る。
かっちょいい。
物販でキドナプやハハシ氏の小説の感想を思わず勢いでめちゃめちゃ語ってしまうが、終わった後に「調子に乗りすぎた」とあまりの恥ずかしさで頭を抱える。
ヲタクあるある。
🐯「キドナプ読了しました?」
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 23, 2023
「はい、いや良かったですね」
🐯「ですよね! クビキリって肩から〇〇みたいな会話で、そしてキドナプは☓☓☓という言葉で真相に飛躍してその言葉遊びから真相に気付く段取りがクビキリを踏まえてるなって……」みたいな訳分からん話を勢いでしてしまった
恥ずかしい https://t.co/BQx8oQN2So
2/24(金)
いきなり天気が悪くなる。気圧の変化をダイレクトに受ける。起きたら酷い頭痛。やる気が全く出ない。暗鬱。昨日調子にのって愉快に喋ってた自分の姿を思い出すだけで愚かさのあまり死にたくなる。
頭痛に苦しみながら、次の現場の客先面談に向かう。終わった後もまだ頭が痛い。結局夕方すぎまで治まらなかった。たまにこういう日がある。
TLで唐木厚氏の「星海社FICTION 軍師」就任の発表を見る。「軍師」の部分にはあえて触れないが()、往年の文三・講談社ノベルス・メフィスト賞が好きだった自分としては気にならざるを得ないニュース。今後に期待してます。
2/25(土)
夜、仕事から帰宅し、坂嶋竜さんとツイッターのスペースにて法月綸太郞トーク。坂嶋さんがスペースの練習相手として長年の知り合いであり、法月作品を好きなタイガーを指名してくれたってワケ。
スペース中の話題、坂嶋さんによる雪密室解説執筆のエピソード、互いの法月作品との出会い、これまで読んだ本の中で好きな解説紹介など。
喋るのが苦手な自分だが、果たしてどこまで坂嶋さんの相手を務めることができたのか不安である。スペース視聴していたという方、もしお聞き苦しい点があったならばお詫び申し上げます………切腹ッ!
それはさておき、スペースも楽しいね。書くのと喋るのとでは発想の回路が違うから、思いがけない発見が生まれてくる。何かしら機会あればまたやりたいナ。
坂嶋竜さんとのスペース聴いていただいた皆様、ありがとうございます〜。上手く話せなくてホント申し訳ない。今夜のタイガーが伝えたいことはただ一つ……『新装版 雪密室』の解説か素晴らしいので皆読んで……ネ❗ https://t.co/M5FDDL0cc5
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 25, 2023
【法月綸太郎作品との出会い】高校1年生の頃、島田荘司にハマり、当然御大推薦の新本格(京大ミステリ研出身)作家を読み始める。だから法月綸太郎はかなり早い段階で読んだはず。最初の一冊はよく覚えてないがたぶん『法月綸太郎の冒険』。これは面白かった。が……
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 25, 2023
タイガーが好きな解説3選を発表……
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 26, 2023
※()内は作者名/解説者
『少年検閲官』(北山猛邦/法月綸太郎)
『魔法飛行』(加納朋子/有栖川有栖)
『象と耳鳴り』(恩田陸/西澤保彦)
『少年検閲官』は天城一と北山猛邦を比較し、北山ミステリを「メルヘン」と喝破する慧眼に。『魔法飛行』は名解説の代表、「論理(ロジック)じゃない、魔法(マジック)だ」の名フレーズに。『象と耳鳴り』は西澤保彦のパズラー観がよく現れ、タイガーのミステリ観にも非常な影響を及ぼしているという点でそれぞれ選んだ。
2/28(火)
池袋ミカドへストリップ鑑賞。蟹江りんに会いに。
10時半から22時までずっと劇場内にいるので、合間合間の時間で法月綸太郞『誰彼』(講談社文庫)を読む。先日の雪密室から法月作品再読の流れが自分の中で起こったので。
誰彼は論理展開が複雑で、昔再読したときも途中でついていけず混乱したぐらいなのだが、今回はバッチリついていけた(ような気がする)。去年デクスターの『ウッドストック行最終バス』『キドリントンから消えた娘』を集中的に再読した効果かも。
『雪密室』の鬱蒼としたしめやかな雰囲気とはうってかわってハジけた空気の作品である。この時期にしか書けなかったであろう意欲作。まさにフーダニット・サーカス。
法月綸太郎『新装版 誰彼』(講談社文庫)読了。新興宗教の教祖が密室から消え失せ遥か離れた現場で首無し死体として発見された! エラリー・クイーンとコリン・デクスターと法月綸太郎が出会ったらそれはもう論理の大迷宮。再読して法月シリーズの中では結構明るい作風だなぁとおもた #2月タイガー本
— タイガーたなか(田中大牙) (@taiga_tanaka) February 28, 2023
3月に続く・・・