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Hello, Good bye

わたしの世代はビートルズには少し遅かった。わたし世代はDeep Purple, Led Zeppelin, ELPといった時代だった。プログレッシブロックが出てきて、イギリスからグラムロックというロンドンブーツでギラギラのラメのコスチュームそしてメイクアップ。もちろんDavid Bawie。ちょっと遅れてきたのがQueen. その頃に女性のも現れた。Suzy Quatro, そしてThe Runaways.  皮のコスチュームや下着姿で、ボンデージ感のあるファッションでSexy だけど、気が強くって、逞しく、奇抜で思いっきり格好良かった。ものすごく憧れた。でもまあそこまで自己主張もできず、それ以前に腕前が全くなくロックバンドをやりたかった私達は、ギター、ベース、ドラム、キーボードで最初にやった曲がビートルズのHello ,Good bye だった。不思議なことにこの曲は人生の岐路でその都度に私の口から溢れてくる歌。バンドそのものは数回の練習でさっさと挫折。でも、この時やろうって練習した曲を今でも覚えていることが50年も前のことなのにすごいと思う。

そして本日もこの歌を歌ってしまった。 You say good bye I say hello 。あなたがさようならって出かけてしまっても、わたしは新しく何かにこんにちわって言うわ、って言う解釈の仕方をして。そしてこれを、ずっと人生で繰り返してきていると感じていた。

2008年に一番最初のモーターホームを手に入れて以来、さまざまなところを旅した。モーターホームは初代バンタイプのもの、から高さも横幅も大きく長さが8メートル、そして少しの間だけはカタツムリと言う車の後ろにくっつけていくキャラバン型、今売ろうとしているものが2017年から使っているもので一番長くわたしたちと旅をした。私たちのモーターホーム生活はこれで卒業をする。少々残念なのはこのコロナの発生からの2年間外出するのにも足枷がかかり、国境越えもややこしくって充分に使えなかったことである。

突然の終了のようで、でもなんとなくこの日が来るのをどこかでわかっていた。昨年コロナ2年目がきてもなかなか自由に行き来することが難しかった。あ、そろそろ終了すべき時期に来ているかもと考え始めた。夫も高齢になってきた、私の体力も落ちてきた。かつては12時間ぐらい交代で平気で長距離が運転できた私たちも、安全を考えると慎重になってきた。そしてこのコロナ禍、スイスでも多くの人が海外に行けずに家族旅行が国内になったことで、ヴァカンスのキャンプ場はキャンプカー、モーターホームをそしてキャンプをする人が増大してきた。この2年間たまにいくそんなに知られて居ないキャンプ場までもが予約が要るぐらいになって来た。

我が家の夫は計画を先々立てるのが嫌い、お天気が良くって、気が向いたら、どこかに行こうか、って出かける方。もう夫の性格はわかっているので、さっさと用意をして、犬を積んで気ままに出かけるのは苦にならないくなっていた。モーターホーム生活もこれだけ長くなると慣れたもんである。1日に使用する水量も予測がつく。そんなベテラン老夫婦には、キャンプ場の予約が必要なんていうのは窮屈で、タイミングを外し続けてこの2年間は充分に使かえなかった。国境を越えるのは、万が一他国でのロックダウンが来たらとってもややこしいことになると、躊躇してしまった。そして当たり前なのだが使っていない方が、不都合があちこちに出てくる。使用頻度の高いときの方が、ものは壊れないし傷まない。何しろ冬の間にはマイナス20度近くなるスイスである。私達は真冬の間も必ず週に1回はエンジンをかけるし、雪のない時を見てそのあたりをぐるぐる走ってモーターを動かしてはいるのだが、でも機械物は使わないと本当にダメ。

今回は大きな修理をするかどうかが決め手となった、もしこのまま使うのであれば、メインテナンスすべきだけど、新車に替えたいか、どうすると夫から相談された。売るのであれば夏より前にした方が売れるよ。。。ということでかなり心は揺れたのであるが、そろそろ卒業しましょうかと夫に持ちかけた。夫も同じ方向を見ていた。そしてこの歌が私の心に浮かんできた。Hello Good bye  私たちの人生はこの二つの言葉の繰り返しなんだろう。

まだスペインに家があった時はモーターホームでゆっくりとフランスを通過して行ったり来たりした。地中海岸線をバルセロナからバレンシア、そしてアリカンテまで南に下る。時には高速道路を使わずに、幹線道路を使って旅行をした。グラナダ、コルドバ、セゴビア、にも旅をした、フランスも大西洋側を通ってみたり、内陸部を通ったり地図を見るのが好きだった。ドイツ、イタリアにも行った。本当はクロアチアやスロベニアにも行きたいなあと話していた。自転車で走るのが楽しそうなオランダで、イギリスから友人と落ち合うのもいいじゃないという計画もあった。でもこのコロナは全てを変化させた。夏を過ごすのはスイスと決めている我が家は暑くなったら、モーターホームで山の上に行き避暑をしていた。犬と一緒にどこにでも行きたい、という私の希望を叶えてくれた夫には感謝をしている。もちろん夫も車の移動が大好きで、あちこち二人で良いキャンプ場を探してウロウロした。自転車を乗せて行ったり、バイクを持って行っていたこともある、近辺を観光したり、美術館に行ったり。この旅行方法は私たちにとっても合っていた。

モーターホームの売却のために自分たちの物を片付けてお掃除をしなければいけないのであるが、たくさんの思い出が戻ってきてちょいとノスタルジックに浸る。歳をとるってこういうことだなあ、と感じている。できなくなってくることが少しずつ増えてくる、もちろん無理をすればまだできる。でも高齢になって車の免許証を返却するのと同様、自分の限界をきっちりと見ることも必要なんだと思ってる。夫の健康状態、これといって悪くはない。。しかし人間年齢とともにダメになってくる体のパーツがある。まず、白内障。これはまだ手術で治るのだけれど、体力というより、忍耐力と判断力だと思う。地図がものすごく見にくくなってきたのも事実。

もちろん二人で新しく何かにHelloしようとは思ってる。私がこの数年考えている、山小屋、もしくは山に小さなシンプルな泊まれるところが欲しい。モーターホームとさよならしたら、夫と一緒に探すことは新しい楽しみになるかもしれない。うちの夫婦は決断が早い、以前に家を売った時も決断は早かった。私の家も、彼のアパートも、そして私たちの家も。これが良いことなのかどうかはわからない、でも二人とも潔いなあって思う。

夫は10年前まで、軽飛行機に乗っていた、健康診断が年齢とともにどんどん面倒になって来て、ある日もう飛行機に乗るのはやめると決断した。次に手放したのはモーターバイクこれが5年ぐらい前。ホンダのシルバーウイングでスペインまで往復を一緒に何度かした。私は車で夫はバイクで。そんな旅行の形も私たちは卒業した。人間住む家の大きさも、行動範囲も、年齢とともに変化をしていくのだから。仕方ないなあとわかっているし、潔くいるそれでも切ない。

親が老いていくのを見た、そして親から聞いてきた、でも実際に老眼が出てきて、近くのものが見えにくいということを自分で経験することは、聴いたことより衝撃だった。そしてこのところ自分で驚いているのが、食事をした後や、夕方疲れたときに居眠りをするってこと。
昔は父がそして夫が良く新聞や、テレビを見ながら頭を垂れて、眠っているのを見てよく笑っていた。どうしてあんなふうにねれるんだろうって思っていたのがである、この1年ぐらい、フランス語の勉強をしながら、うたた寝をしてしまう自分に愕然とする。生来の不眠で、眠れない私がである。5分ぐらい完全に意識がなく起きた時にびっくりする。これは序奏であるかもしれない、年齢を重ねるうちに、もっとびっくりするような経験をしていくのだろうと覚悟をしておこう。

子供の頃から眠るのが苦手な子供だった。夫もそうであったらしい。その私たちがモーターホームではなぜかぐっすり眠れた。川の流れを、波のぽちゃぽちゃを、雨が降る音を聞きつつ、木の枝のしなる音を聞きながら、朝は鳥のさえずりで起こされる。外でギーギーと鳴いている白鳥の声で目を覚ましたこともある。本当に楽しい日々だった。モーターホームからの卒業だけれど、人生の卒業がいつ来るのかわからない限り、やっぱり新しいことを見つけて過ごしたい。とっても小さいことでも良い、人間好奇心を失ったら、それは最後じゃないかと。生きている限り、できれば毎日小さな発見をして生きていきたいな。夫と自分自身がボケないためにも。。。

You say Yes,
I say No
You say Stop
And I say Go go go

oh no

You say Good bye and I say Hello, hello hello
I don't know why you say good bye
I say hello, hello, hello
I don't know why you say goodbye and I say hello