露出狂
「先輩、私、露出狂なんです。」
突然、後輩からそう告げられ、時が止まる。
「は?」阿呆らしい声が出た。
「人前で恥部を晒すと快感が凄くて…」彼女は続ける。
「でも、もう有象無象では満足出来なくって..先輩に見て欲しいんです。」頬を淡いピンク色に染め、もぞもぞしながら彼女はそう言った。そんな彼女を見ていると俺の顔もアツくなる。
「お前、マジか?」
「マジですとも」ゴクリと唾を飲む。
俺は戸惑う、思春期真っ最中の男子高校の性欲を刺激され陰部がズキズキと痛む。
「見てくれますか?」ああ、俺はもう駄目なのか?動物としての本能に屈してしまうのか。いや、規範意識ある者としてそれは許されない行為。俺は断らなければならない。
「すまないがそれは不可能だ。」断った。断ってやったぞ。俺のプライドは守られたんだ。
「…そうですか」残念そうに彼女は言う。
「貴方が見てくれたら…」口ごもっていた為、最後に彼女が伝えようとしたことが分からなかった。罪悪感が俺を襲ってくるのを感じその場を立ち去ろうと彼女に背を向ける。
「先輩」孅い声で呼ばれた。思わず振り向く。そこには制服の袖を捲り彼女の手首が露わになっていた。
「…は?」先程同様阿呆らしい声が出たのだが少し力が抜けていて弱々しいものとなっていた。
「ふふふっ」そう華奢に笑う彼女に恐怖を覚えた。彼女の手首には無数の傷跡があり、なんとまあ無様なものだ。臙脂色のもあれば赤黒く腫れたものもあり、彼女の人生を語っている様な気がした。脳内処理を終え、現実が撲りかかってくると彼女の方へ駆けた。
「お前…!」彼女の手首を掴む。俺は取り乱していた。
彼女は俺の方をゆっくり見てニッコリと微笑んだ。
「先輩?言ったでしょう、露出狂だって。」
「は、はぁ?」困惑が隠せない。
「今、凄く興奮してるんです。先輩の視線が身体中を突き刺して、、ああ、恥ずかしい、下着がべっとり濡れちゃった、」
そう言い彼女は手首の傷跡を撫でる。そんな彼女がエロくてエロくて俺は目が離せなくて。
「先輩も触ります?」
「いいの?」
「特別ですよ、先輩」恐る恐る彼女の方へ手を伸ばす。緊張感が走る、俺の手は震えていて、あるがままに高揚感に身を任せた。
優しく彼女の手首を愛撫する。傷跡一つ一つの感覚を覚える様に撫でる。
「先輩…」情けない声が聞こえてきたので彼女の方へ視線をやると雌の顔をしていた。欲望には抗えないっつーわけか。人間の性なんだな。ビクビクと痙攣している彼女、如何わしい事をしている訳でないのに不純な関係になってしまったかのような、背徳感がエグい。
「ねえ、舐めてよ、傷跡。」
「仰せのままに」何を言っているんだろう。こんなの寒すぎる。でも、でも、でも、でもキモチイイんだ。はやくイキたい。ひとつになりたい。
彼女の赤紫色に腫れた自傷跡に舌を這わせる。一つも見逃さない様にひとすじずつ、ねっとりとした唾液を垂らす。嗚呼、癖になる。これは唆る、こんな御馳走は初めてだ、嗚呼神よ、今はお前に感謝する。この俺に五感を授けてくれてありがとう。
味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚。全てが満たされた今俺は神となり彼女とこのまま溶け合いたいと強く願った。
ずっと彼女の傷を舐めていたからだろうか、まだ真新しいリスカから血が零れる。女の鮮血は男の血とは比べものにならないくらい色鮮やかで、ビビッドなものだったので当然の如く俺はそれを頂く。美味い、美味い、じゅるじゅる音を立てて飲む。
じゅるじゅる、ずずず、ジュッ、ジュルル。
脳に刺激が与えられる。ドーパミンヤバ!
もっと、もっと、もっと欲しいと求めていると気付けば傷はクパァと開かれて脂肪が丸見えだった。皮下脂肪エロ!!嗚呼、俺の要求にこんなにも素直に君の身体は応えてくれるんだね、後輩ちゃん。愛しているよ。脂肪を舐めとって舌を躍らせる。彼女の顔が一瞬歪んだ。いたい、いたいよね、ありがとう。
俺は必死に彼女の全てを感じたくて、
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと!
あゝ!
身体の感覚がなくなった。