外資系企業人事部長の部下へ宛てたHR Letter「グローバル企業での働きかた」第24話 適正な賃金水準へリードする
第24話 適正な賃金水準へリードする
「あなたは会社からいくらもらいたいですか?」という質問を受けたらどう答えますか?実際の回答は別としても「もらえればもらえるほどいい」というのが本音ではないでしょうか。
30年近く人事をやってきて、多くの人に会い、またそれぞれの給与を知る中で色々なケースを見てきました。「この人はもっともらっても良いな」という人もいれば「この人はもらい過ぎだな」と思うこともあるので、自分自身に置き換えても、単純に「もらえればもらえるほどいい」という気持ちにはなれません。
一番良いのは「適正な賃金をもらうこと」です。
賃金とは労働に対する対価です。従って、賃金はその人のやっている仕事にふさわしいものであるべきです。ある人の賃金が仕事に対して割安であったとします。同じ仕事をするならば、他の会社ではもっとよい賃金をもらえる可能性が大きくなります。従って、自分はもっと評価されるべきではないかという思いが生じるでしょう。チャンスがあれば転職を考えるでしょう。
一方、仕事よりも高い給料をもらっている場合、上司がそのことに気が付けば評価は必然的に悪くなります。通常、給与は原則プラス成長するので、常に悪い評価となり、平均よりも伸び率が低くなれば本人のモチベーションは落ちます。また、会社の業績が悪くなったりすれば、真っ先にリストラ検討の対象になってしまうでしょう。更に、その給料を維持したまま転職しようとすれば、給与がネックになってなかなか思い通りの仕事は見つからないはずです。
以上に述べたような問題を避けるためにも、社員の賃金を適正な状態に持っていくことが人事の役割の1つになるわけです。
採用時には市場にあった額を提示することを目指し、昇給昇格時には正しい評価が行われるようにします。また、何らかの原因で賃金水準に問題が生じているときは、これを是正するように働きかけが必要です。
人事はマーケットの基準を知ることができる上、個人の能力を相対的にみることや、コンピテンシーベースで分析することができる唯一の仕事です。
賃金を適正にすることによって仕事への評価が適正に行われることになり、モチベーションがアップすれば更にレベルアップしようという能力開発の環境が整うことになります。能力開発環境が整った状態ではエンゲージメントがあがり、成果が出やすい環境となります。適正な賃金であることは個人にとっても組織にとっても大変重要なことなのです。
適正賃金水準へのリードは社員が十分に力を発揮できる環境を整えるためには必要不可欠なことであり、ビジネスパートナーとしての人事の重要な仕事といえるでしょう。
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